痛いのか、痛くないのか。
人間においてはこれを言葉にして伝えることができます。
また、どの程度の痛みなのかということを伝えるために疼痛の尺度としてペインスケール (pain scale) というものが存在しており、これを用いて自己申告することで情報共有が可能となります。
しかしながら、人間と共通する言語を持たない動物の疼痛の有無やその程度を評価するというのは人間より困難です。
イヌ、ネコおよびウマにおいては外観や体勢、行動、触診の結果など複数の所見を基に疼痛の程度を判断するペインスケールが複数種開発されています。
エキゾチックアニマルの分野でもウサギのペインスケールに関する報告が複数発表されています。
今回はなんと新たにモルモット版ペインスケールを開発しようとする試みが報告されましたため、該当論文を紹介させていただきます。
元論文: “Development and validation of a pain scale in guinea pig (Cavia porcellus)”
Benedetti F, Pignon C, Muffat-es-Jacques P, and Gilbert C. J Exot Pet Med. 2024; 50: 36-41.
記事作成者による大雑把なまとめ
ウサギのペインスケールに関する報告にある評価項目とモルモットの疼痛の基準として文献に記載のある内容から新規モルモット用ペインスケールを作成して以下の評価を行った報告。
- 新規ペインスケール内評価項目の妥当性 (内的整合性)
- 異なる時点間の同一測定者による測定値のばらつき (繰り返し性: repeatability)
- 異なる測定者間の測定値のばらつき (再現性: reproducibility)
- 0-10の11段階で表した疼痛の段階的スケール (NRS) における測定値との相関性
結果: 内的整合性向上のため当初内容より2項目の削除を行ったペインスケールは高い繰り返し性と再現性、およびNRS間との高い一致率も得られたが、感度: 52.0%, 特異度: 87.5%であった。
図. モルモット用ペインスケール (元論文, Benedetti F, et al., 2024. より引用, 記事作成者により和訳改変)
※ 内的整合性の検討の結果、掻痒に関する項目と身震いに関する項目を除いた最大スコアが23点のスケールを用いて以下の様に評価を行っている。
合計スコア | 評価 |
0~4 | 疼痛なし (no pain) |
5~9 | 軽度疼痛 (mild pain) |
10~14 | 中等度疼痛 (moderate pain) |
15~19 | 重度疼痛 (severe pain) |
20~23 | 耐え難い疼痛 (intolerable pain) |
論文の著者らは今回のペインスケールは実際に痛みを伴うモルモットの痛みを良好に検出できなかったとしており、臨床における実用に耐えうるものでないと評価しています。今後の研究と改良が期待されます。
参考文献 (内容精査のため元論文の確認を推奨させていただきます。)
Benedetti F, Pignon C, Muffat-es-Jacques P, and Gilbert C. Development and validation of a pain scale in guinea pig (Cavia porcellus). J Exot Pet Med. 2024; 50: 36-41. http://dx.doi.org/10.1053/j.jepm.2024.06.002