【病気】多発するモルモットの卵巣・子宮疾患

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メスの血尿

モルモットの卵巣・子宮の病気は比較的多い病気で、1歳齢からでも起こります。症状は血尿が見られますが、卵巣・子宮の病気以外にも尿結石でも起こりますので、X線検査や超音波検査などで鑑別する必要があります。

卵巣・子宮疾患の原因

モルモットに子宮疾患が多発する理由は以下のことがあげられています。

  • 不規則な生活
  • 肥満
  • 加齢
  • 遺伝

不規則な生活

寝起きの時間がバラバラ、1日中ずっと電気つけっぱなし等の不規則な生活環境はホルモンの分泌に影響が起こります。

肥満

栄養状態がよく肥満になると、生殖器にも栄養が行きとどき、発情しやすなります。

加齢

年をとるにつれ、子宮の病気や腫瘍の発生が高くなります。

遺伝

遺伝的な発生要因もあります。

病態

子宮内膜症、子宮の腫瘍、卵巣嚢腫の3つが多発し、孤立して発生すると言うよりも、併発することが大半です。これらの病態が発生するとホルモンのアンバランスにより、脇腹の脱毛や乳腺腫瘍が併発して見られることもあります。

子宮内膜症

子宮内膜が増殖して肥厚し、子宮内膜過形成、子宮内膜増生、子宮内膜増殖症とも呼ばれます。子宮内膜が過形成(増殖)して、子宮内腔への出血が見られ、細菌感染が起こると化膿性子宮内膜炎が併発します。

モルモット子宮内膜症

症状

初期は無症状であることが多く、病状が進行すると内膜から出血します。そのため外陰部からの鮮血の出血が認められますが、多くが排尿と同時に出血するので、オレンジ色やピンク色の血尿として発見されます。

子宮の腫瘍

主にモルモットの子宮の腫瘍は線維腫〔Beregi et al.2001〕や平滑筋腫〔Field et al.1989〕で、まれに血管腫〔Beregi et al.2001〕がみられ、ウサギで多く認められる悪性腫瘍の発生が少ないのが特徴です。

症状

子宮内膜症と同じで、初期は無症状であることが多く、病状が進行すると内膜から出血します。そのため外陰部からの鮮血の出血が認められますが、多くが排尿と同時に出血するので、オレンジ色やピンク色の血尿として発見されます。子宮の腫瘍は発育すると触診でも把握できるくらいの大きさになります。

卵巣嚢腫

卵巣嚢腫は卵巣に多房状の嚢胞が形成される病態です。

モルモット卵巣嚢腫

病理組織学的検査では3つのタイプの嚢胞に分類され、嚢腫の発生由来によって卵胞嚢腫、卵巣網嚢腫(漿液嚢腫)、卵巣傍嚢腫になります〔Rozanska et al.2016〕。

卵胞嚢腫
主に発情期に関連して認められ、卵胞の排卵障害に起因して発生し、卵胞が大きくなり嚢腫となります。
卵巣網嚢腫
卵巣網(※1)の拡張から構成される嚢腫で〔Quattropani 1981〕、発情周期とに無関係に発生します〔Rozanska et al.2016〕。
卵巣傍嚢腫
胎生期の中腎管の遺残組織(※2)由来で、卵管の膜周囲に発生する嚢腫です。
※1卵巣網
胎児卵巣に上皮性隆起として発達し,卵巣間膜の部分に突出しますが、成熟すると卵巣門付近の痕跡小管として残り、単一な低円柱上皮の不規則な網状小管を構成します〔相馬1977〕。
※2中腎管の残存組織
胎生期の生殖管は中腎管(ウォルフ管)と中腎傍管(ミュラー管)の2つが存在します。メスはミュラー管が分化して子宮や卵管を形成し、 ウォルフ管は退行していきますが 、この時の退行が不十分 で遺残して瘢痕器官として、卵巣と卵管の間に存する盲細管を卵傍体と呼ばれています。

こられは超音検査や外観からの鑑別は難しく、外科的に卵巣を摘出手術を行って病理検査を行って初めて診断されます。

発生

1~2歳以上〔Keller et al. 1987〕、もしくは、1歳3ヵ月以上〔Pilny 2014〕のモルモットに好発するという報告があります。

症状

嚢胞のサイズはばらつきがあり、年齢とともにサイズが大きくなり、直径が 7cmにも及ぶこともあります。多くの場合片側よりも両方の卵巣が罹患する。これらは嚢胞のタイプで発生年齢や嚢胞サイズに相違があるのかは分かっていません。実験動物ではエストロゲンを投与して卵巣嚢腫のモデルがつくられており〔Silva et al.2003〕、その結果、発情期に発生率が高くなり、発情休止期には低くなる〔石ら2002〕という報告がありますがが、これは卵胞嚢腫と思われます。

卵巣嚢腫は基本的に無症状であるので、偶発的に見つかることも多いです。両側の卵巣に発生して、嚢腫が大きくなると腹部膨満が目立ちます。3つの嚢胞のタイプの中で、卵胞嚢腫瘍は、排卵に失敗した排卵前の卵胞に由来し、正常な卵巣周期を変化させます。このために機能性の卵胞嚢腫とされ、不妊はもちろんのこと、性ホルモンの異常を起こし、内分泌性脱毛もみられ、沈鬱を示すこともあります。特に子宮疾患を併発する症例も多いです〔Keller et al.1987〕。卵巣網嚢腫や卵巣傍嚢腫は非機能性です。卵巣網嚢腫は卵巣周期とは無関係で発達し、モルモットの卵巣嚢腫の中で最も多発するとも言われていますが〔Shi et al.2002〕、卵胞嚢腫と併発することもあります〔石ら 2002〕。無症状で脱毛なども起こらない時は、卵巣網嚢腫や卵巣傍嚢腫なのかもしれません。大きく発育した卵巣嚢腫は腹腔内の触診において軟性の腫瘤性病変として触知されます。非ホルモン性である卵巣網嚢腫は脱毛がみられませんが、卵胞嚢腫と卵巣網嚢腫が併発している症例が多く、脱毛の有無のみで鑑別することは難しいです。

卵巣の腫瘍

稀ですが卵巣には顆粒膜細胞腫が発生することもあります。

モルモット卵巣腫瘍

診断・検査

超音波検査やCT検査で、子宮の拡大や腫瘤所見が認められます。内膜症と腫瘍との鑑別は、外科的に摘出した子宮の病理検査で診断します。

モルモット子宮内膜症のエコー写真
子宮内膜症の超音波写真像
卵巣嚢腫の超音波像
卵巣嚢腫のCT像

治療

根本的には卵巣・子宮摘出手術を行います。高齢でどうしても手術ができない場合は、ホルモン治療で進行をおさえますが、上手く維持するケースもあれば、進行してしまうこともあります。なお、非機能性の卵巣網嚢腫や卵巣傍嚢腫を疑う症例では、無処置のまま経過観察を行います。

予防

規則正しい生活をモルモットにさせて、ホルモン分泌のバランスが崩れないようにして下さい。モルモットは夜行性なので昼間はしっかりと寝かせましょう。容易に発情しないように太らせないことも大切です。発情が頻繁にくるのは仕方がないことですが、子宮が腫瘍にならないようにするために、エサの栄養のバランスを考えてあげましょう。サプリメントを与えるのも一方法でしょう。

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コレがポイント!

・若い年齢から発症する
・血尿が見られる
・子宮内膜症から腫瘍、卵巣嚢腫など、病態は様々
・病理検査で腫瘍かどう診断される
・基本的には卵巣・子宮摘出手術を行う

参考文献

  • Beregi A,Molnár V,Perge E,Felkai C.Radiography and ultrasonography in the diagnosis and treatment of abdominal enlargements in five guinea pigs.J Small Anim Pract42(9):459-463.2001
  • Field KJ,Griffith JW,Lang CM.Spontaneous reproductive tract leiomyomas in aged guinea-pigs.J Comp Pathol101(3):287-294.1989
  • Keller LS,Griffith JW,Lang CM.Reproductive failure associated with cystic rete ovarii in guinea pigs.Vet Pathol24(4):335-339.1987
  • Pilny A.Ovarian cystic disease in guinea pigs.Vet Clin North Am Exot Anim Pract17(1:69-75.2014
  • Quattropani SL.Serous cystadenoma formation in guinea pig ovaries.J Submicrosc Cytol13(3):337-345.1981
  • Rozanska D,Rozanski P,Orzelski M,Chlebicka N,Putowska K.Unilateral flank ovariohysterectomy in guinea pigs (Cavia porcellus).New Zealand Veterinary Journal64(6):360-363.2016
  • Shi F,Petroff BK,Herath CB,et al.Serous cysts are a benign component of the cyclic ovary in the guinea pig with an incidence dependent upon inhibin bioactivity.J Vet Med Sci64:129-135.2002
  • Silva EG,Tornos C,Deavers M,Kaisman K,Gray K,Gershenson D.Induction of epithelial neoplasms in the ovaries of guinea pigs by estrogenic stimulation. Mod Pathol16(3):219-222.2003
  • 石放雄、Petroff BK、Herath CB、小澤真名緒、渡辺元、田谷一善.モルモットの発情周期中におけるインヒビン産生と良性卵巣漿液嚢腫の出現.Journal of Veterinary Medical Science64(2):129-135.2002
  • 相馬広明.卵巣網(Rete Ovarii)のはたらき.臨床婦人科産科31(11):p980.1977

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。