【病気】ハムスターのマイボーム腺腫(目の周りの白いしこり)

それはこんなかんじです

目のふちが白く出来物のように膨らんでいますよね。それが1個だったり、数個あったりします。まるでニキビのようにも見えます。

ハムスターマイボーム腺腫

片目だけに出来ていたり、両目にできる場合もあります。

ハムスターマイボーム腺腫

マイボーム腺腫

この白い出来物はマイボーム腺種と呼ばれ、ジャンガリアンハムスターに多く見られます。マイボーム腺とは、まぶたの縁にある特殊な分泌腺で、この分泌腺からは涙の一成分である油性の物質(皮脂)が分泌され、目の乾燥を防いだりする働きを持っています。マイボーム腺は上眼瞼と下眼瞼には数十個が存在しています。この分泌腺の開口部が老化や結膜炎などで、上手く油性の物質が分泌されずに、蓄積して腫瘤を形成します。

ハムスターマイボーム腺腫

外貌から眼瞼が膨らんえでいたり、腫脹して見えます。

ハムスターマイボーム腺腫

マイボーム腺が自然に分泌物が出て治ることもありますが、多くは小さくなったり大きくなったりを繰り返したり、他のまぶたに出来たりもします。生死に関わることはありませんが、炎症がひどくなると角膜炎などが起きたり、再発を繰り替えして慢性化になります。ハムスターは床敷の中に潜る習性があるので、どうしても衛生的な管理が難しくなること、点眼薬が上手くできないことなどが発生や慢性化の原因になりがちです。なお、著者はジャンガリアンハムスターでのマイボーム腺の良性の肉芽腫に遭遇した経験があり、文献ではゴールデンハムスターでマイボーム腺腺腫の腫瘍形成の報告があります〔Demirutku et al.2013〕。

ハムスター

治療

マイボーム腺腫が小さくて無症状ならば様子をみて何も治療しないこともあります。結膜炎があれば点眼薬で炎症を抑えることで、マイボーム腺分泌物が排泄して小さくなり改善します。しかし、ハムスターに点眼薬はとても難しく、眼球に上手く滴下できないことも多いです。そのため、内服薬で対応することもあります。

ハムスターの点眼

腫瘤が大きくなっていく時では、一時的に針で切開してマイボーム腺腫の内容物を排泄しますが、麻酔下での処置になります。

参考文献

■Demirutku A et al.Meibomian adenoma in a syrian hamster (Mesocricetus auratus): A case report.Veterinární Medicína 58(12):641-644.2013

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。