【病気】ヤモリのフロッピーテール症候群

病態

クレステッドゲッコーやその他のヤモリにおいて尾が曲がる病態が知られ、フロッピーテールあるいはフロッピーテール症候群 (Floppy Tail SyndromeFTS) と呼ばれています。

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原因

FTSの原因はよく分かっていません。ヤモリは壁に張り付く習性がありますが、頭を下に張り付いた際に、尾が水槽の壁に対して 直角あるいは頭に向かって横向きに垂れ下がります。不適切な飼育環境、つまり水槽やケージ内のレイアウトにおいて、登る枝が少ないと壁をよじ登り、一日の大半を逆さにぶら下がることが、重力の影響で尾もぶら下がってFTS のリスクを高めます。原因が代謝性骨疾患を含めた骨盤の変形のこともあり、排泄や産卵困難も見られます。しかし、骨盤の変形は、骨盤のみに病状が発現しており、カルシウム欠乏症も発現しないためせずに、代謝性骨疾患が原因になり得ないとも考えられています。FTSの見られたヤモリには、特定された遺伝子異常は確認されていませんが、繁殖個体(CB個体)のクレステッドゲッコーで好発するため、遺伝的素因が存在する可能性も示唆されています。また、部分的な尾の自切も考えられています(ヤモリは自切能をもつトカゲです)。

症状

変位した尾を痛がったり、生活に大きな影響を与えることもまれなため、多くのFTSのヤモリはその尾を使用しながら生活を送ります。

治療

具体的な治療法はありませんが、断尾処置をして新しい再生尾を期待するのも一方法です。ただし、骨盤の変形があると、再生尾になっても排泄や産卵の障害は改善しません。FTSのあるヤモリを繁殖させることで、遺伝素因が引き継がれる可能性があるため、避けられています

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この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。