【検査】ウサギの炎症マーカーSAA

SAA

Serum amyloid A (SAA:血清アミロイドA)はアミロイドAタンパク質の循環型前駆体です。そしてSAAは急性期反応物でもあり、多くの炎症時に体内で上昇します。最もよく知られている炎症のインジケーターはCRP (C反応性タンパク質) ですが 、SAAはCRPよりも急速に劇的に上昇します〔Bausserman et al.1980〕。SAA は CRP とは対照的に、細菌感染時のほか、腎移植拒絶反応やウイルス感染時にも同様の傾向を示します〔Maury 1985〕。

ウサギのSAA

実験動物のウサギにおいてSAAの発現が確認され〔Marhaug et al.1997,Syversen et al.1993〕、 C反応性タンパク質(CRP)と共に、炎症刺激後に増加する急性期の血漿タンパク質とされています〔Rygg et al.1996〕。

ペットのウサギでの応用

実験においては、ウサギにおけるSAAの発現が研究されており、本邦でもペットのウサギで測定できる機関も出てきました。 臨床的に正常なウサギのSAA値の中央値 (最小-最大)は6.3(6.3-24.2)mg/Lに対し、異常群では7.0(6.3-1388.0) mg/Lという報告もあります。この測定値は、以前に記載された CRPの測定値とも比較され、相関があることも分かりました〔Lennox et al.2020〕。ウサギの病気の診断と予後において価値があることが示される可能性があります。しかし、Crayらはペットの48頭のウサギにおけるエンセファリトゾーン感染症の診断における、C反応性タンパク質(CRP)、ハプトグロビン(HP)、およびSAAの急性期タンパク質アッセイの適用を評価したところ、エンセファリトゾーン疑いの個体群はCRPレベルの平均の約10倍の増加が観察されましたが、SAA値には有意差はありませんでした〔Cray et al.2013〕。

参考文献

  • Bausserman LL,Herbert PN,McAdam KP.Heterogeneity of human serum amyloid A proteins.J Exp Med152(3):641‐656.1980
  • Cray C et al.Acute Phase Protein Levels in Rabbits with Suspected Encephalitozoon cuniculi Infection.Journal of Exotic Pet Medicine22(3):280-286.2013
  • Lennox A  et al.Preliminary evaluation of an immunoturbidimetric assay and lateral flow device for the measurement of serum amyloid A in rabbits.Journal of Exotic Pet Medicine33:54-56.2020
  • Maury CPJ.Serum amyloid A protein, apolipoprotein A-I,and apolipoprotein B during the course of acute myocardial infarction.Clin Sci68:233.1985
  • Marhaug G et al.Serum amyloid A gene expression in rabbit,mink and mouse.Clin Exp Immunol107(2):425-34.1997
  • Rygg M et al.Developmental regulation of expression of rabbit C-reactive protein and serum amyloid A genes.Biochim Biophys Acta1307(1):89-96.1996
  • Syversen PV et al.The primary structure of rabbit serum amyloid A protein isolated from acute phase serum.Scand J Immunol37(4):447-451.1993

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。