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頭じゃなくて耳
水ガメの鼓膜が発赤*…していると中耳炎が疑われ、腫大して盛り上がっていると中耳膿瘍です。下の写真のカメは頭の脇が腫れていますが、そこがカメの鼓膜の領域で、中耳炎により膿が貯まって鼓膜が腫れているのです。
発生
水ガメの幼体に多発し、次いで水生が強いハコガメにまれに発生します。
原因
口の中からに中耳に細菌が侵入して、化膿を起こして膿がたまります。水の中に常存している細菌が原因となり、単に水が汚ったという感染だけでなく、環境温度や餌の栄養不足などが発生に関与しています〔Kirchgessner et al.2009,Stahl 2013〕。ビタミンA欠乏症が、そのうちの主な発生要因ともされていましたが、実験においてその関連性は証明されませんでした〔Kroenlein et al.2008〕。
症状
炎症が起こっているだけの初期では鼓膜の発赤のみで、中耳に蓄膿して膨らんでくきますが、通常は食欲や活動性に影響は見られません。
診断・検査
特異的な症状から暫定的に診断します。穿刺による細胞診検査で感染が診断されたり、CT検査で偶発的に発見されることもあります。
治療
慢性的になると膿が大きくなり、中耳の周囲の骨を溶かすこともありますので、早期の治療が必要になります。鼓膜を切開して排膿し、洗浄を行いますが、完全な排膿をしない切開した鼓膜も閉じてくるので、再発生します。
再発する可能性があるため、切開傷は解放にしたままで洗浄を繰り返します。切開した鼓膜は次第に再生してきます。
予防
定期的に水を交換して水質管理に努めてください。水ガメは全身が乾かせるような陸地も作ってあげます。カメは甲羅干しで体を乾かすことで、体の清潔を保ちます。免疫低下は易感染を引き起こすので、栄養の偏りのないペレットを主食にしましょう。
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参考文献
- Kirchgessner M,Mitchell MA.Chelonians.In Manual of Exotic Pet Practice.MA Mitchell,TN Tully eds.Saunders Elsevier.St.Louis:p233-242.2009
- Kroenlein KR,Sleeman JM,Holladay SD et al.Inability to induce tympanic squamous metaplasia using organochlorine compounds in vitamin A-deficient red-eared sliders (Trachemys scripta elegans).J Wildl Dis44:664-669.2008
- Stahl S.Abscesses.In Clinical Veterinary Advisor:Birds and Exotic Pets.Mayer J,Donnelly TM eds.Elsevier Saunders:Publisher.St.Louis,MO:p71-74.2013