脂肪のかたまり
セキセイインコは最も一般的な飼育されているペットの鳥類であり、腫瘍形成の発生率は他の鳥類に比べて比較的高く、発生率は15.8%~24.2%と報告されています〔Ratcliffe 1933,Filip 2002〕。セキセイインコでは、脂肪腫、脂肪肉腫、リンパ腫、線維腫、線維肉腫、扁平上皮癌、骨肉腫、血管肉腫など様々な種類の腫瘍が見られます〔Filip 2002,Filippich 2004〕。その中で、脂肪腫はセキセイインコに最も多発する良性腫瘍で、腫瘍の発生率は 10~40%と言われるほど高率です〔Baker 1980,Petrak et al.1982,Turrel et al.2014〕。
発生と症状
脂肪腫は孤立または複数発生することがあり、胸骨、翼、脚、腹部の皮下組織に見られ、体腔に見られることは稀です〔Turrel et al.2014〕。しかし、腹部に発生した脂肪腫が腹腔内にまで波及していた症例報告もあります〔Pallab et al.2021〕。腫瘍は肥満や高齢の鳥によく見られますが、性別による傾向は無関係です〔Turrel et al.2014〕。脂肪腫は柔らかく、脂肪に包まれており、可動性があります〔Filippich 2004,Turrel et al.2014〕。肥満の鳥に好発し、通常の脂肪よりやや黄色味が強く見えることもあります。飼鳥ではブンチョウとセキセイインコに好発します。
検査・診断
下のインコを見ると、体のシルエットが少し膨らんでいます。鳥を捕まえて、羽毛をかき分けて触らないと発見は難しいです。針で腫瘍を採取したり、外科手術で切除された腫瘍を病理組織学的検査で診断をします。しかし、多くが脂肪の中にある硬結した腫瘍で、この特徴的な所見から暫定的に診断することも多いです。
原因
腫瘍は遺伝的素因がありますが、発生要因には過食によるカロリー過多と考えられていますが、セキセイインコやブンチョウでは甲状腺機能低下症で、代謝の低下により脂肪が沈着しやすくなり、肥満になることが大きな要因です。他にも脂肪肝も併発しているでしょう。
治療
鳥の脂肪腫の治療には、外科的切除が最も一般的なアプローチとなります〔Schmidt et al.1997,Filippich 2004,Coles 2007〕。ただし、肥満が発生要因になっていることから、減量すること、甲状腺機能低下症の治療も併用することで、脂肪腫が縮小することもできます。もちろん、部屋の中での放鳥して運動量を増やすような策も行って下さい。甲状腺機能低下症も予防するためにシードからペレットに変えて、さらにカロリーが少ないメーカーの商品を主食にしましょう。
これがポイント!
・脂肪腫は胸腹部に形成される良性腫瘍
・カロリー過多と運動不足が原因
・代謝低下を起こす甲状腺機能低下症が関与
もっと鳥を勉強したい時に読む本
カラーアトラス.エキゾチックアニマル鳥類編.緑書房
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参考文献
- Coles BH.Essentials of Avian Medicine and Surgery.Blackwell Publishing.Oxford.UK.3rd ed:p142-182.2007
- Filip T,Scope A.Prevalence of tumors in Budgerigars.Proc Assoc Avian Vet.Monterey.California:p189.2002
- Filippich LJ.Tumor control in birds.In Seminars in Avian and Exotic Pet Medicine13:p25-43.2004
- Pallab MS,Sarker D,Paul T.Surgical management of lipoma in budgerigar: A case study emphasizing anesthesia and hypothermia management. Tradit Mod Vet Med6(1):15-20.2021
- Schmidt RE,Quesenberry K.Neoplastic diseases.In Avian Medicine and Surgery,WB Saunders.Philadelphia.USA:p590-603.1997
- Turrel JM,McMillan MC,Paul-Murphy J.Diagnosis and treatment of tumors of companion birds.AAV Today1(3):p109.1987