【病気】鳥の重金属中毒

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放鳥時に注意

放鳥時に鳥が危険なものを口にしたり、接触したりしないよう、注意が必要です。人の食物(チョコレートやアボカド、ネギ類、リンゴの種)を摂取すると下痢や中毒を起こすものがある。また、観葉植物の中には鳥にとって有毒なものも多いです。そして、注意したいものが重金属中毒です。鳥は光る粒状の物、固い物質を飲み込む習性があり、筋胃で小石などを蓄積し消化を助ける働きがあるからです。

オウムに多発

鉛や亜鉛、銅などによる中毒が懸念されています。特にオウムは好奇心旺盛で、嘴も鋭いためにかじる力が強いです。野生下で鉱物をグリットとして定期的に摂取する性質もあることも理由です。カーテンの重りやワインの蓋の金属部分、釣りの重り、塗料やペンキには鉛が含まれています。

鉛中毒症状

鳥種によっても鉛の感受性は大きく異なり〔Sanderson et al.1986,Jordan 1968,Levander 1979〕、血液、神経、消化器、腎臓へ影響します。放鳥していた鳥が、急性の食欲不振と嗜眠が見られ、下痢などの消化器症状と血尿を示すことが多いです〔Del Bono et al.1973,Jordan et al.1951〕。しかし、摂取した鉛の質や量や期間などによって、数日後あるいは慢性的に発症することもあり得ます〔Clemens et al.1975〕。神経症状として、振戦や沈鬱、翼の下垂、脚弱などが見られ〔Cotran et al.1994,Kober et al.1976〕、肝障害を起こすこともあります。

水鳥での発生

狩猟地に飛来する水鳥が、餌や小石と間違えて鉛散弾を摂取する中毒が多く報告されています〔Del Bono et al.1973,Jordan et al.1951,Clemens et al.1975〕。散弾は排泄されることもありますが、筋胃内に滞留して機械的作用により、徐々に溶解されていきます。アヒルでは飲み込まれた鉛散弾は腺胃内に2〜4日間留まり、その後筋胃に到達し、溶解した鉛は腸から体内に吸収され、3日目には正常の約10〜60倍の血中鉛濃度が検出され、3〜10日目に最高値に達した報告がある〔Timbrell 1989〕。

亜鉛も銅も

亜鉛は金属の防錆加工であるメッキとして一般的に利用されている金属で、鳥が亜鉛を含む物や亜鉛メッキの破片を摂取することで、体内に亜鉛が蓄積されて中毒を起こす恐れがあります。亜鉛メッキには鉛が含有されているため、鉛中毒症を併発することもあります。亜鉛メッキは、鳥用ケージやおもちゃなどの防錆加工にも使用されていますので注意して下さい。銅は主に電気コードに含まれており、通常は塩化ビニルなどで被膜されていますが、ケーブルをかじった場合に露出する恐れがあります。

診断・検査

血液中の鉛濃度を測定することで確定診断を下しますが、血液サンプル量が大量に必要となるため、小型種では実際的ではありません。X線検査では金属片が確認されることもあるが、一部には明確に認められません。したがって、特異的な症状などで暫定診断を行うしかありません。

治療

鉛・亜鉛・銅、いずれの重金属中毒の場合も治療方法は同じで、キレート剤の解毒剤を投与します。キレート剤が金属と結びつくことで無毒化され、腎臓を経由して尿から排泄されます。

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参考文献

  • Cotran RS,Kumar V,Robbins SL.Pathologic Basis of Disease 5th ed.WB Saunders.Philadelphia:p390-392.1995
  • Clemens  ET.Krook L,Aronson AL,Stevens CE.Pathogenesis of lead shot poisoning in the mallard duck.Cornell Vet65:248-285.1975
  • Del Bono G,Braca G.Lead poisoning in domestic and wild ducks.Avian Pathol2:195-209.1973
  • Jordan JS.Bellrose FC.Lead poisoning in wild waterfowl.Ill Natl Hist Suro Biol Notes26:1-27.1951
  • Jordan JS.The influence of diet in lead poisoning in waterfowl.Trans North East Fish Wildl Conf 25:143-170.1986
  • Kober TE,Cooper GP.Lead competitively inhibits calcium-dependent synaptic transmission in the bullfrog sympathetic ganglion.Nature(Lond) 262:704-705.1976
  • Levander OA.Lead toxicity and nutritional deficiencies. Environ Health Perspect29:115-125.1979
  • Sanderson GC,Bellrose FC.A review of the problem of lead poisoning in waterfowl.Ill Natl Hist Surv Spec Publ 4.linois Natural History Survery.Illinois:p31-34.1986
  • Timbrell JA.1989. Introduction to Toxicology.Taylor & Francis.London.[藤田正一(監訳).1991.毒性学入門:p118-122.技報堂出版,東京

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。