【病気】鳥の痛風(セキセイインコの足の白いブツブツ)

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痛風

尿酸が蓄積して起こる病気を痛風と呼ばれ、人ではアルコールの飲みすぎで起こる有名な病気です。鳥でも痛風が見られるんです!最も多く見られるのはセキセイインコで、次いでオカメインコに発生します。鳥の排泄物を見ると緑茶色の糞と白いねばっとした成分があり、その白色の成分が尿酸になります。

原因

腎疾患は痛風を含む他の多くの症状を引き起こす可能性があります〔Siller 1981〕、痛風は高尿酸血症によって発生し、脱水や腎不全による尿酸排泄の減少または食餌のタンパク質の増加が要因になります〔Trampel et al.2000,Siller 1981〕。血漿中の尿酸の溶解度を超えると(高尿酸血症)、尿酸一ナトリウムの結晶沈殿が始まります〔Trampel et al.2000〕。なお、ビタミン A 欠乏症による尿細管の変性の結果、痛風が引き起こされます〔Roudybush 1999〕。

セキセイインコ

症状

尿酸結晶の沈着は内臓と関節に起こりやすいです。内臓痛風と関節痛風が同じ鳥に存在する可能性があります。

内臓痛風

内臓痛風は、尿酸の結晶が臓器に沈着するため、元気や食欲が無くなり突然死をすることが多いです。体内で起こる症状であるため、発見や診断が非常に難しいです。内臓痛風の場合、心膜、肝臓、脾臓、腎臓に尿酸塩の沈着がよく見られます〔Lierz 2003〕。影響を受けた組織の被膜表面に白い結晶班が現れることがあります。

関節痛風

関節痛風は、関節の滑膜被膜および腱鞘における尿酸塩の蓄積によって起こります〔Austic et al.1972〕。肉眼的病変は通常、足の中足指節関節および指節間関節における柔らかい腫れで構成されます〔Siller 1981〕。

最初はあまり目立ちませんが、止まり木をつかみたがらなくなります。

指に黄色や白い結節が明瞭になります。

症状が進行すると関節が腫れます。

セキセイインコ痛風

検査・診断

本来は血液検査で尿酸値が高いことで診断しますが、血液検査は鳥にストレスがかかるので、特異的な症状のみで診断することがほとんどです。指や足に脚に発生した白色の結節を針で刺して顕微鏡で調べると(穿刺細胞診検査)、尿酸の結晶が確認されます。しかし、この方法は鳥が痛がるので、したがって特徴的な症状のみで診断することも多いです。

血液検査における尿酸値測定

尿酸は鳥類の窒素代謝の最終生成物で、肝臓、腎臓、膵臓で生成および分泌されます〔Chin 1978,Herzberg et al.1991〕。血液検査での尿酸(UA)値は腎疾患に相関して上昇し〔Pegram et al.1981,Pegram et al.1982,Radin et al.1996〕、鳥類の腎パネルのひとつにあげられます。他にも尿酸値を上昇させる要因に、餌や脱水も影響します〔Harper et al.1998〕。一般的に肉食だと痛風になりやすくなり、具体的にはプリン体が増加すると尿酸合成が増加します〔Chin 1978〕。そのため、尿酸値の測定は空腹時で測定できると理想ですが、常に餌を食べている鳥では難しいです。しかし、飢餓状態になることで、鳥の尿酸値が低下した報告があります〔Radin et al.1996〕。また、脱水状態になることでも尿酸値が上昇します〔Radin et al.1996〕。そのため、飼鳥の尿酸値測定の解釈は腎機能の評価だけでなく、飢餓や脱水を考慮しないといけないので複雑です。栄養状態が悪く、悪疫質になると分解された身体タンパク質を含む前駆体が、尿酸値の上昇の原因にもなります〔Bennett et al.2000〕。推奨される正常な鳥の尿酸値は、おおよそ10.8mg/dL以内とされていますが、肉食の猛禽類では高値を示します〔Lumeij 1993, Lumeij et al.1991〕。そのため、猛禽類では採血前に24時間の絶食を考慮するべきと推奨されています。高尿酸血症を示した鳥の場合、皮下補液や経口水和を行ってから、再検査を行って検討します。なお、鳥類の尿素値は哺乳類と異なり少量しか生成されませんので、血液尿素窒素(BUN)は腎臓パネルとしては有用性に欠けます〔 Lumeij 1987,Lumeij 1993,187〕。もちろん、餌や脱水の影響を受けて変動します〔Pegram et al.1982〕。そして、鳥のクレアチニン(Cre)は、その前駆体であるクレアチンからクレアチニンをほとんど生成しません〔Murray et al.1999〕 。また、腎疾患がタンパク質および血漿電解質に及ぼす影響は鳥ではほとんど研究されていません。 高カリウム血症および高リン酸血症は腎不全と関連が予想されているものの、鳥を対象とした研究は限られています。

尿検査

鳥の尿は総排出腔内で糞と混じるために、尿検査は純粋な結果の解釈が難しいです〔Murray et al.1999,Styles et al.1998〕。腎疾患に伴って血尿が見られたり、赤血球や白血球の検出されますが、当然ながら腎疾患と消化管・生殖器からの出血や炎症との鑑別は難しいです〔Gevaert et al.1991〕。そのため、鳥類では信頼性の高い尿を採取すること事態が難しいため、積極的に行われません。尿円柱も、腎疾患時にアミロイド円柱〔Blagburn et al.1990〕、アルブミン〔Narcisi et al.1991〕、硝子円柱〔Narcisi et al.1991〕などが検出された報告がありますが、詳細は解明されていません。尿試験紙による検査は、糞と混じる尿成分を考慮すると、不適当かもしれません〔Murray et al.1999〕 。糞の影響で、亜硝酸塩、潜血、タンパク質について陽性となる可能性が高いです〔Gevaert et al.1991〕 。鳥類は尿濃縮能が乏しいため、一般的には等張性です。報告されているダチョウ の尿比重は1.02(1.01~1.05)です〔Mushi et al.2001〕。尿のpHは生理的に変動することが知らています。 産卵中のメスでは、 pHが酸性になる可能性があり(4.7まで)、産卵が終わるとpHは8.0 に上昇することがあります。なお、オスのpHはおよそ6.4です。潜水中のアヒルで見られる低酸素症は、尿の pH を 4.7 に下げる可能性があります。正常なダチョウのpHは 7.6(6.1~9.1) です〔Mushi et al.2001〕。

治療・対応

水和、食餌指導、投薬が必要になります。痛風は腎不全に起因することが多いため、他の動物と同様に、鳥おいても水和することが基本となります。脱水以外にも酸塩基障害と電解質障害が存在する可能性がありますが、単に現在は利尿と輸液療法に関する一般的な記述しかありません。無尿および乏尿である場合は利尿が絶対的に必要となり、マンニトールとフロセミドが推奨されています。鳥では効果はあるようですが、これらの薬剤は鳥類ではあまり研究されていません〔Wideman et al.1983〕。なお、ローリーはフロセミドの影響に敏感な可能性があるため、フロセミドの投与は慎重に行う必要があると言われています〔Ritchie et al.1994〕。あるいは単に経口で水分を与えることで鳥の利尿を期待できます。日頃からしっかり水を飲ませる必要があるので、水を切らさないようにして下さい。腎疾患の鳥における酸塩基障害および電解質障害が適切に評価されていませんが、必要に応じた水分補給以外に、バランスの取れた電解質溶液を使用する必要があります。鳥の水分必要量は、 40~60mL/kg/日になります(100gのオカメメインコであれが4~6mL、40gセキセイインコであれば1.5~2.5mL)〔Curro 1998〕、また鳥の体重の10% の水分を与えることが推奨されています。動物病院では強制的にシリンジを使用して、経口的に飲ませたり、補液をするようなこともあります。食餌指導としてタンパク質が多い餌は避けるようにしないといけません。人の食物はもちろんですが、普段の餌でタンパク質が多いものは、油種子と幼若鳥のペレットです。ビタミン・ミネラルが豊富で、水分の多い葉野菜を多く与えましょう。特にビタミンAが多い葉野菜は理想で、チンゲンサイやコマツナがよいです。投薬をすることもあり、尿酸の産生を抑える薬であるアロプリノール、尿酸の排出を促す薬でプロベネシドなどがあります。

予防

治療が難しい病気なので、日頃から栄養のバランスのとれたエサを与え、飼育環境をしっかりと整えて予防しましょう。エサも種子だけでなく青菜を補給するなどして、相対的にタンパク質が取りすぎにならないように工夫して下さい。野菜は水分の摂取にもなります。部屋に放鳥する際、人の食物を口にしないようにしましょう。

セキセイインコ

痛風を予防できるフードって? 

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セキセイインコ
オカメインコ
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アンセリンが尿酸値の上昇に・・・

これがポイント!

・痛風は尿酸が蓄積して起こる病気
・セキセイインコに多く、次いでオカメインコ
・尿酸が沈着する場所によって関節痛風と内臓痛風に分かれる
・関節痛風は指や足に黄白色の結節ができる
・タンパク質が多いもの避け、水分を多く採らせる

もっと鳥を勉強したい時に読む本

カラーアトラス エキゾチックアニマル鳥類編 緑書房

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参考文献

  • Austic RE,Cole RK.Impaired renal clearance of uric acid in chickens having hyperuricemia and articular gout.Amer J Physiol223:525-530.1972
  • Bennett DC et al.Effect of cadmium on Pekin duck total body water, water flux, renal filtration,and salt gland function.J Tox Environ Health Part A59:43-56.2000
  • Blagburn BL et al.Cryptosporidium sp. infection in the proventriculus of an Australian diamond firetail finch (Stagnopleura bella: Passeriformes, Estrilididae).Avian Dis34:1027-1030.1990
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  • Harper EJ,Skinner ND:Clinical nutrition of small psittacines and passerines.Sem Avian Exotic Pet Med7:116-127.1998
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  • Roudybush TE: Psittacine nutrition.Vet Clin N Amer Exot Anim Pract2(1):111‐125.1999

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。