【病気】カメレオンのフィラリア症

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犬のフィラリア

フィラリアと言うと犬において有名な寄生虫です。全長が20〜30cmになる線虫で細い素麺みたいな感じです。蚊を介して感染し犬の心臓病を起こします。蚊がフィラリアに感染している犬の血液を吸う時に血液中の子虫(ミクロフィラリア)を一緒に取り込み、ミクロフィラリアは蚊の体内に入り、また他の犬の血を吸うことで感染させます。親のフィラリアからミクロフィラリアが生まれて、蚊に吸われて蚊の体内で発育しないと、新たに犬に寄生できません。犬に寄生するフィラリアは犬糸状虫(Dirofilaria immitis)ですが、 その名の通り細長い糸状の姿をしています。この糸状虫にはいくつかの種類がおり、成虫の寄生場所は種類によってリンパ管、血管、目、皮下組織、または体腔内に見られ、ミクロフィラリアは血液中を循環しています。爬虫類に寄生するフィラリアは、Foleyella,Oswaldofilaria,Befilaria,Conofilaria,Conispiculum,Piratuba,Piratuboides, Solafilaria,Cardianema,Pseudothamugadia,Madathamugadia,Thamugadia,Saurositus, Macdonaldiusなどがあり〔Lane et al.1996〕、特にカメレオンでの寄生が多く見られます。

現地で感染

野生のカメレオンでもFoleyella seuratは一般的に寄生する種類と言われています〔Bartlett 1987〕。 中間宿主は蚊以外にもブユなどで〔Mancianti et al.2000〕、温暖な地域に生息しているWC(野生)個体のパンサーカメレオンでフィラリアが多く検出されています。日本ではなく原産地で感染を受けたと推測しています。

症状

F.seuratは血管の中で増殖し、皮下、筋肉、体腔に寄生します〔Széll et al.2001〕。

感染を受けても全く無症状のことが多く、皮下に寄生したフィラリアが不規則なミミズばれ、あるいは小さな結節として発見される程度です。下の写真を見て下さい。ミミズ腫れは分かりにくいですが、切開するとフィラリアが出てきました。

大量寄生していると血液検査でミクロフィラリアが検出されます。

治療

皮下に寄生しているフィラリアは、皮膚を切開して摘出します。病原性が低いので治療をする場合は、駆虫薬にも副作用が出ることもあるので、獣医師と相談して行って下さい。

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参考文献

  • Bartlett CM.The reptilian filarioid genus Foleyellu Seurat,1917(Onchocercidae: Dirofilariinae) and its relationship to other dirofilariine genera.System.Parasitol9:43-56.1987
  • Lane et al.Parasitology.In Reptile Medicine and Surgery.Mader DR ed.WB.Saunders.Philadelphia:p183-203.1996
  • Széll et al.Ivermectin toxicosis in a chameleon(Chamaeleo senegalensis)infected with Foleyella furcate.J.Zoo Wildl.Med32:115-117.2001
  • Mancianti et al.Filariosis in chameleons(Chamaeleo sp.).Parasitologia42.103-103.2000

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。