【病気】チンチラの熱中症(何度にすればよいのか)

チンチラの生息地

チンチラはアンデス山脈の標高4500mまでの寒冷な高地に住んでおり、暑さに弱いのが特徴です。生息地の年間平均気温は2℃と涼しく、降水量が極めて少ないため湿度もとても低い所です〔Patton 2015〕。

熱中症になる温度

チンチラの身体で被毛が生えていないのは、四肢の裏と耳介です。また、チンチラは犬のように舌を出しての熱放散ができず、皮膚にある汗腺も欠き、発汗もできないことから高温環境に弱いです。推奨されるペットのチンチラの飼育温度は10~20℃ あるいは10.0~15.6℃〔Dieterich 1979〕などと他の哺乳類と比べて低温が理想といわれています。日本でのチンチラの飼育は、エアコンで温度管理ができる部屋でないと難しいです。高体温で熱中症になり、死亡する例も少なくありません。理想は飼育環境温だけが低ければよい思われがちですが、実際は湿度も深く体感温度に関わっており、湿度50%未満あれば18.3~26.7°Cの温度で飼育ができます〔Donnelly 2004,Webb 1991〕。温度が21.1℃以上になると不快感〔Dieterich 1979〕、25℃以上ではストレス〔Jenkins 1992〕、32.2℃以上では死亡〔Dieterich 1979〕という報告もありますが、こられの温度と症状は明確な立証もなく、経験によるデータでが書かれているに過ぎません。

症状

熱中症の初期症状は落ち着きがなくなり、多飲になります。次第に動かなくなり、呼吸促拍がみられ、さらに高体温になると目や口の可視粘膜が紅くなって涎を流し、時に血便が見られます〔Jenkins 1992〕。

チンチラ

最終的に肺のうっ血なども起こり、昏睡に陥って死亡します。

チンチラ

治療

治療はチンチラを涼しい部屋に移動し、冷水でなく、ぬるい水に身体を入れて、ゆっくり体温を下げて下さい。初期での発見であれば回復しますが、進行した状態であると、そのまま衰弱して死亡します。

予防

予防は温度管理ですが、日本の夏に湿度50%以下の環境をつくるのは難しいです。多少は湿度を抑えれば温度は高くても問題ないのですが、他にも換気によっても体感温度は異なってきます。したがってケージを直射日光が当たる所、エアコンれ冷風機も無い締め切った部屋などは避けた方がよいでしょう。厳格に定まった温度設定を守るというより、チンチラの動きや食欲をよく観察して、湿度や換気、ケージの置く場所や部屋を調節してあげましょう。

コレがポイント!

・チンチラは寒い山に生息し、雨が少ないので湿度も低い
・厚い毛皮のため飼育温度は18~27℃
・湿度を低くすると多少温度が高くても快適
・熱中症になるとうずくまって呼吸が早くなり、昏睡状態になってに死亡する
・熱中症になったら涼しい部屋に移動し、ゆっくり体温を下げること

参考文献

  • Dieterich WH.Temperature controls for chinchillas.Chinchilla World Trade Journal13:p24-26.1979
  • Donnelly TM.Disease problems of chinchillas.In Ferrets,Rabbits,and Rodents:Clinical Medicine and Surgery.2nd ed.Quesenberry KE,Carpenter JW eds.Saunders.St Louis.Missouri:p255‐265.2004
  • Patton JL et al.Rodents.Mammals of South America2.University of Chicago Press:p765-768.2015
  • Jenkins JR.Husbandry and common diseases of the chinchilla(chinchilla laniger).J Small Exotic Anim Med2:15-17.1992
  • Webb R.Chinchillas.In Manual of Exotic Pets.Beynon PH,Cooper JE eds.Iowa State University Press,Ames:p15–22.1991

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。