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発生
WC(野生)個体であれば野生の環境で感染し、CB(繁殖)個体であれば、同居個体あるいは床敷から感染したことが考えられます。WC個体のダニの多くは吸血性のダニで、生体の皮膚や鱗の間にガッチリと食らいついて血を吸い、大きく膨らんで発見されます。CB個体は床敷から発生するダニが寄生することもあります。夏の高温多湿の時期に多く、ダニが繁殖した床敷から寄生します。
ダニの種類
爬虫類の至適環境温度ならびに高湿度はダニの繁殖を助長します。簡単に言うと温かく、ジメジメした環境はダニが増えやすくなるので、爬虫類においてのダニの寄生は根深い関係があります。なお、ケージや床敷で増殖したダニは吸血性がないので、爬虫類に大きな被害は与えません。爬虫類に食いついて吸血するダニはマダニが多く、マダニは肉眼でも確認できるくらい大型で、大きさは3~10mmと種類により様々です。
ヘビのダニ
ヘビのダニは鱗の間に吸い付いて吸血しています。多くの書物ではヘビダニ(Snake mite) (Ophionyssus natricis)が多いとされていますが、他の種類のダニの寄生も報告はあります。O.natricisは人への感染の報告もあるので注意して下さい〔Schultz et al.1975〕。
トカゲのダニ
トカゲのダニもヘビと同様に鱗の間に吸い付いて吸血します。多くの書物ではトカゲならびにイグアナ、ヤモリに寄生するダニはヤモリダニ科(Pterygosomatidae)のダニが多く〔Fajfer 2019,Stanislav et al.2012〕、俗称で トカゲダニ(Lizard mite)と呼ばれています。ヤモリダニ科の中で、ヤモリはGeckobia属やGeckobia属、アガマ科のトカゲ(フトアゴヒゲトカゲ)はPterygosoma属、イグアナはHirstiella属が多く見つかります。
イグアナに寄生することが多いHirstiella 属のダニは、吸血すると切れな赤色になるので、アカダニ(Red mite)と呼ばれています。
カメのマダニ
カメに寄生するダニは大型のマダニが多いです。甲羅から出ている首や手足の根元に寄生し、吸血すると何倍にも大きくなります。なお、マダニはカメだけでなく色々な種類の爬虫類に寄生します。吸血性ダニのキララマダニ属(Amblyoma sparsum)、Aponoma 属、Hyalomma属のマダニが検出された報告があります〔五香ら2009-2010、高野ら 2012〕。
症状
ダニの寄生数が少ないと、無症状のことが多いです。吸血時の違和感などはあるかもしれませんが、ほとんど分かりません。寄生数が多いと行動の異常や皮膚病が見られ、場合によっては体調が崩れることもあります。
行動の異常
ヘビとトカゲに行動の異常が現れやすく、吸血による刺激と不快感が原因になります。具体的には行動の変化に現れ、入浴時間の増加や物への体の摩擦をします。吸血部位の皮膚炎を示すこともあります。貧血や敗血症は時々合併症として起こりますが稀なことです〔Schilliger et al.2013〕。
皮膚病
ダニが口を使って吸い付くので、その周囲の皮膚ならびに鱗に異常が見られることがあります。
フトアゴヒゲトカゲではダニの寄生により、脱皮不全が見られ、軽い皮膚炎が起こる程度です。
グリーンイグアナではダニの寄生により、鱗が壊死しやすく、壊死した鱗が黒色に変色するので黒皮病と呼ばれることもあります。
全身状態の悪化
大量のダニが寄生して吸血することで貧血状態になる可能性はあります。マダニは吸血時に熱リケッチア、ライム病などの病原体を媒介する恐れがあります。爬虫類には無症状でも人に媒介するのか、詳細は不明です〔高野ら 2012〕。
ツツガムシ
ズーノーシスで有名なツツガムシ病はケダニ類のツツガムシというダニが保有する、ツツガムシリッケッチア(Orientia tsutsugamushi) への感染によって引き起こされます。ツツガムシはの幼虫のステージに一度だけ、爬虫類や鳥類、哺乳類に寄生し、ツツガムシ病を媒介することで有名です。
検査
WC個体を入手した後は、必ずダニがいないか確認して下さい。ダニも小さく、吸血前だと目立ちません。トカゲでは全身の鱗間に寄生していますが、特に眼周囲、総排泄孔周囲に好発します。カメは甲羅と皮膚の境界や四肢の付け根に好発します。
自宅でできるダニの駆虫
ダニを発見した場合は、動物病院で治療することが一番です。自宅で行うとしたら、直接ダニをつまんで取るのとダニを落とす薬浴をするの2つの方法になります。
直接ダニをつまんで取る
直接つまんで、一匹一匹をピンセットなどで取るしかありませんが、ダニの体を引っぱって取った際に、くいついた口の部分が皮膚の中に残らないようにしなければなりません。大きなマダニであれば下記のようなダニとりピンセットで取れますが、トカゲの鱗間にいる小さなダニや目周囲のダニはつまみにくいです。その時は薬浴をお勧めします。
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薬浴
ダニを落とすための酢や薬を使った温浴をさせる方法です。普段の温浴のお湯の代わりに薄めた酢や薬が入ったお湯を使います。
酢
ダニは酢に弱いです。酢は人が口にする食酢を使うと安心でしょう。水200mLに食酢5mLを溶かしてお風呂にし、そこにダニに寄生された爬虫類を10~20分漬けます。最後にぬるま湯で全身を洗って下さい。
薬
人のシラミ用のスミスリンシャンプーを爬虫類に使います。成分はピレスロイド系駆虫薬のフェノトリンという成分で、これは除虫菊の花に含まれる天然成分です。人用のシャンプーですが、これを同じ濃度で爬虫類に使います。あるいはシャンプーの液体をお湯に入れて、10~20分爬虫類を漬けます。
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ケージ内にダニが大量に発生した場合
ケージ内にダニが大量に発生した場合は、飼育個体のダニ駆除以外にもケージ内のダニ駆除も行います。ケージの掃除だけでなく、ケース内のシェルターや水容器などのアクセサリーもよく洗って下さい。床敷も毎日取り替えないといけません。利便性を考えると一時的に新聞紙やペットシーツなどがよいかもしれません。ダニの増殖を防ぐ天然植物エキス成分のスプレーなどを使うとよいでしょう。
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参考文献
- Schultz H.Human infestation by Ophionyssus natricis snake mite.British Journal of Dermatology93(6):695‐697.1975
- Schilliger LH,Morel D,Bonwitt JH,Marquis O Cheyletus eruditus (taurrus):an effective candidate for the biological control of the snake mite (Ophionyssus natricis).J Zoo Wildl Med44(3):654-659.2013
- Fajfer M.Systematics of reptile-associated scale mites of the genus Pterygosoma (Acariformes:Pterygosomatidae) derived from external morphology Zootaxa4603(1):401.2019
- Stanislav Kalúz,Ivan LiterákA description of the male of Geckobiella donnae Paredes-León,Klompen et Pérez,2012 (Acari: Pterygosomatidae) from captive iguanas in Honduras Folia Parasitologica66.003.2019
- 五箇公一,宇根有美.侵入種生態リスクの評価手法と対策に関する研究(2)随伴侵入生物の生態影響に関する研究.F-3-103-127.環境問題対応型研究領域.生態系保全と再生(第4分科会).環境研究総合推進費.環境省.2009-2010
- 高野愛、川端寛樹.輸入爬虫類に寄生するマダニの病原体媒介リスク.獣医畜産新報 65(10).807-810.2012