トカゲのイエローファンガス病(YFD)

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フトアゴヒゲトカゲのカビ

フトアゴヒゲトカゲでは、イエローファンガス病(YFD:Yellow Fungus Disease:黄色い真菌病)と呼ばれる全身性の真菌の感染症が有名で、大きな被害を受けています〔Johnson et al.2011〕。

どんな症状?

感染した皮膚は黄褐色になり、鱗がふやけて皮膚の下の脂肪や筋肉、重篤になると骨まで真菌が入り込み、次第にしこり(肉芽)ができて、膨らんできます。患部の鱗やしこりは脱皮不全も起こします。最終的には全身に広がり、肺炎や肝炎などを起こして死亡します。

原因は?フトアゴヒゲトカゲだけなの?

Chrysosporium anamorph Nannizziopsis vriesiiは、ペットでも野生の爬虫類からも分離されています。しかし、近年、Nannizziopsis guarroiが原因で引き起こされることが分かってきました〔Bowman et al.2007〕。しかし、他のNannizziopsis属の真菌も多く検出され、カメレオン〔Pare et al.2006〕やヤモリ〔Toplon et al.2013〕、ワニ、アガマ(フトアゴヒゲトカゲ)とイグアナ〔Michell et al.2013, Schmidt-Ukaj et al.2016〕からも報告されています。特にフトアゴヒゲトカゲでは多発しているの、今後のYFDの研究や報告に注目されています。

検査は?

患部を顕微鏡検査で菌体を確認したり、真菌培養検査あるいは病理組織学的検査で診断します。

治療は?

初期であれば抗真菌剤で治療できますが、進行したり、骨や内臓まで進行した場合は手遅れになります。

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参考文献
■Bowman MR et al.Deep fungal dermatitis in three inland bearded dragons (Pogona vitticeps) caused by the Chrysosporium anamorph of Nannizziopsis vriesii. Med Mycol45(4).371-376.2007
■Johnson RS et al. Deep fungal dermatitis caused by the Chrysosporium anamorph of Nannizziopsis vriesii in captive coastal bearded dragons (Pogona barbata). Aust Vet J.89(12).515–519.2011
■Michell MA.et al.Chrysosporium anamorph Nannizziopsis vriesii:an emerging fungal pathogen of captive and wild reptiles. Vet Clin North Am Exot Anim Pract.16(3).659-68.2013
■ Pare A et al.Pathogenicity of the Chrysosporium anamorph of Nannizziopsis vriesii for veiled chameleons(Chamaeleo calyptratus).Med Mycol44(1).25-31.2006
■Schmidt-Ukaji S et al.Dermatomycosis in three central bearded dragons(Pogona vitticeps) associated with Nannizziopsis chlamydospora.Journal of Veterinary Diagnostic Investigation
7.p319–322.2016
■Toplon DE et al.Dermatitis and cellulitis in leopard geckos(Eublepharis macularius)caused by the Chrysosporium anamorph of Nannizziopsis vriesii.Vet Pathol50(4).585-589.2013

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。