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外部寄生虫症とは
ペットのウサギには、ダニやノミの寄生が知られています。これらの中にはウサギから血液や体液を吸い、脱毛、フケ、皮膚炎といった皮膚病を引き起こすものがいます。ウサギだけに寄生するものや人にもうつる寄生虫もいます。
ウサギズツキダニ
ウサギの毛にウサギズツキダニ(Listrophorus gibbus)が寄生します。
被毛ダニとも呼ばれるダ二で、ペットのウサギでは、かなりの確率で寄生しています。細長い形をしたダニで、メスは頭にヘタを被ったような形状、オスはお尻に尾葉と呼ばれる2つの尾のような構造があります。大きさは、メスは0.56×0.25mm、オスは0.61×0.33mmです〔沖野ら2001〕。
被毛に寄生していながら、皮膚に降り立って体液を吸います。
一般的には無症状で、体の背部に寄生することが多く、ブラッシングの際などに毛をかき分けた時、大量の卵や生体が被毛に付着しているのが肉眼で確認できます。このようにダニが被毛に寄生した外観を、「塩とコショウをふりかけた毛」などと比喩されます。通常は毛繕いをすることで、被毛についたダニが除去されるので増えることもありません。
ウサギが加齢で不活発になると毛繕いが減少します。肥満や背骨が曲がらなくなる(脊椎疾患)と毛繕いの範囲が小さくなります。前歯が伸びたりするとあ)上手く毛繕いができなくなります。グルーミングの頻度が落ちると、ダニは減らずに増えていきます。その時点で初めて気づくことも珍しくはありません。
ウサギツメダニ
ウサギツメダニ(Cheyletiella parasitovorax)の寄生によって皮膚炎が起こります。Cheyletiella属の成虫は卵形をし、体長は0.27~0.54mmです。ダニは口部には、一対の湾曲した爪があり、ツメダニの名前の由来になっています。卵から成熟した成体になるのに約21日を要します〔沖野ら2001〕。エサはフケや食べたり、体液を吸います。
皮膚の表面(角質層)で生活をし、体液を吸い、疥癬のように皮膚にトンネルは堀りません。
首から背中や腰に寄生しますが、通常は無症状です。しかし、ウサギズツキダニと同じに毛繕いが減ったり、ウサギの免疫が低下すると、ダニが増えます。皮膚の発赤や痒みを起こし、フケと脱毛が見られ、痒がります。特に肩甲骨に挟まれた首~背中に症状が見られます。
ウサギ同士の接触によって感染して広がります。成虫は涼しい温度では、餌を食べなくても約30日生き延びることができます〔Wall et al.2001,Scarampella et al.2005〕。ツメダニ類は本来寄生する動物種以外にも寄生することがあります。したがって、ウサギから検出されるツメダニも、犬や猫、そして人にも寄生しますので注意して下さい(人獣共通感染症)。人では腕や足に赤い発疹が見られます。
ウサギの皮膚から落ちた卵や成虫は再感染の原因になります。感染したウサギのフケなどはブラッシングをしたり、しっかりと部屋の掃除をしましょう。
ウサギ耳ダニ(ウサギキュウセンヒゼンダニ)
ウサギ耳疥癬、ウサギ耳ダニとも呼ばれるウサギキュウセンヒゼンダニ (Psoroptes cuniculi)の寄生によって、耳道の炎症を引き起こします。
成虫は円形ないし卵円形で、体長はメス0.37~0.55mm、オス0.4~0.75mmです〔DISEAS OF RESERACHANIMALS-DORA.Psoroptes cuniculi〕。
通常は外耳道に寄生し、表面のカスや体液を吸ってエサにして生活しています。ウサギ同士の接触によって感染して広がります。
症状は耳の激しい痒みです。頭部や耳介を激しく振り、後ろ肢で耳介を引っかく行動が見られます。耳道や耳介の内側は充血して炎症が起こり、病状が進行すると茶褐色のフレーク状の耳垢やカサブタが大量に見られます。
毛繕いによって、耳以外の外陰部、顔や首、手足などに広がることもあります。外耳炎が鼓膜の奥まで波及すると、内耳円・中耳炎や斜頸なども起こります。
疥癬
疥癬(かいせん)と呼ばれるダニの寄生によって、皮膚炎を引き起こします。ウサギに寄生する疥癬は、Sarcoptes scabies var cuniculi (ウサギショウセンコウヒゼンダニ)およびChorioptes cuniculi(ウサギショクヒヒゼンダニ)が報告されています 〔福井 1965〕。Notoedres cati(ネコショウセンコウヒゼンダニ)の感染は非常にまれです〔Panigrahi et al.1997〕。Sarcoptes scabiesのメスは丸い形をしており、大きさは0.3~0.4mm x0.25~0.35mmです〔Saji et al.2017〕。
交尾を終えたメスの成虫は、皮膚(角層)にトンネルを掘って潜り込み(疥癬トンネル)、卵を産みます。ウサギ同士の接触によって感染して広がります。特に目の周り、鼻や口唇、前足や後足のつま先などに寄生します。皮膚にトンネルを掘るために、水泡ができて漿液が染み出て、それが固まり角質が堆積します(ガビガビになります)。同時に激しい痒みを引き起こすのが特徴で、ひっかき傷も多くなります。
マダニ
マダニは寄生する動物を選ばないので、さまざまな種類のマダニ(Haemaphysalis leporispalustrisなど)がウサギに寄生します。マダニは草むらなどに隠れており、そばを通過した動物に飛び移ります。そのため散歩や屋外飼育のウサギに好発し、初夏から夏にかけてマダニが活発になる季節に多発します。
通常は4mmくらいの大きさのマダニが多いのですが、血を吸うと大きく膨らみ、体長は3倍くらいにもなります。
体全体に寄生しますが、特に目の周囲、耳、胸など、被毛の少ない部位に寄生します。血を吸う時のダニの唾液中に含まれるアレルギー物質が皮膚炎を起こし(刺咬症)、大量寄生では貧血が見られることもあります。マダニは十分に血を吸うと、ウサギから離れます。
刺咬症以外にも、マダニは血を吸う時にウサギに多種の病原体を媒介することが懸念されています。ウサギの皮膚を刺しているマダニは、物理的に口器を残さないように取り除かなければいけません。
ノミ
ウサギから検出されるノミの多くはネコノミです。ネコノミは猫以外にも、犬、ウサギ、フェレットなどにも感染します。日本では犬のノミ感染の約70%がネコノミです。
犬や猫と同一環境で飼育することにより、ウサギへもうつります。ノミは人にも感染する可能性がありますので注意してください。ジャンプが得意で約1mも跳ねることができるので、ある程度離れていてもうつります。
ノミの大きさは0.3~0.4mmです。通常10~20日間生存し、メスは1日10~20個の卵を産みます。3~4週間で成虫になります。さなぎは1年位生存できる場合もありますので、部屋の掃除もしっかりとするなどの衛生管理も重要です。ノミは暖かい時期だけでなく、風通しが悪く、湿気も高いと、増殖しやすくなります。
ノミ成虫は血を吸います。しかし、幼虫は、ノミの成虫の糞や人や動物の食べこぼし、フケなどを食べます。成虫と違い、血を吸うことはありません。症状は背中から腰部にかけて軽い湿疹やフケを伴った痒みが見られます。ノミの糞を発見することで、ノミの寄生気づくことも多いです。
痒みに対して自咬し、脱毛や皮膚炎が起こります。
検査
ノミやダニの寄生している場所が異なるため、毛を抜いたり(抜毛検査)、フケを採取して顕微鏡で観察します。ノミやマダニは、目が良い人ならば肉眼で確認できます。
疥癬と呼ばれるヒゼンダニは疥癬トンネルを掘り、皮膚の角質の中に潜んでいます。少し皮膚を引っ掻いて、そのサンプルを顕微鏡で観察します(皮膚そう爬検査)。
治療
駆虫薬を投与して治療します。ウサギ用に認可された駆虫剤は日本にはありません。犬猫用のダニ・ノミの駆虫剤を使用するしかないのですが、ウサギに使用すると死亡する薬剤もあります。自己判断せずに動物病院で治療をするべきです。現在の駆虫薬の主体は、スポットと呼ばれる首の後ろに滴下するタイプになります。
駆虫薬は成虫を駆除しますが、一般的に卵には効果がないので、寄生虫のライフサイクルに合わせて繰り返し投与することが必要になります。ウサギを複数飼いをしている場合は、症状が現れていなくても同居ウサギも一緒に駆虫するようにします。
予防
ノミやダニを予防するには、日頃からの観察や管理が重要です。こまめにブラッシングをしたり、耳の中が汚れていないかチェックするなど確認をしてください。ブラッシングはノミやダニを見つけたり、皮膚の状態をチェックできる他、皮膚の血行を促して代謝をよくすることができます。
ウサギの外部寄生虫は、ウサギからしかうつらないものが多く、感染ルートは必然的に他のウサギからです。新しく購入した個体?他のウサギと遊ばせたこと?が最も考えられるルートです。他のウサギとの接触は、きちんと健康診断を受けたウサギにしてください。不衛生な環境はノミやダニが発生しやすくなります。下記のようなダニ除去マットなんかも使ってみる価値があります。飼育環境を清潔に保つことを心がけましょう。ノミやマダニは屋外から持ち込まれることが多く、ウサギを散歩に連れていくならば、定期的に駆虫薬を予防薬として投与したほうがよいです。
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ダニを引き寄せて!ダニがいそうな場所に置くだけです。誘引シートでダニを集めて退治します。ダニの死骸が散らばらないので、ハウスダストの原因物質が飛散せずに安心です。1枚で2~3畳のスペースに1枚置いておけば約 3ヵ月間有効です。
これがポイント!
・ズツキダニは無害であるが気持ち悪いの駆虫する
・ウサギツメダニは首~背中の毛が抜け、人にも寄生する
・ウサギ耳ダニは耳アカがたまり、ものすごく痒い
・皮膚にトンネル疥癬は皮膚がカサカサになり、ものすごく痒い
・マダニは血を吸うと巨大になる
・ノミは多くが猫からかかる
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参考文献
■DISEAS OF RESERACHANIMALS-DORA. University of Missouri – Comparative Medicine Program and IDEXXBioResearc.rabbit.Psoroptes cuniculihttp://dora.missouri.edu/rabbits/Psoroptes-cuniculi/
■Panigrahi PN.Concurrent infestation of Notoedres, Sarcoptic and Psoroptic acariosis in rabbit and its management.JParasite Dis40(3).1091―1093.2017
■Saji MS.Sarcoptes scabiei (Acari: Sarcoptidae) infestation in rabbits (Oryctolagus cuniculus):A case study Infección con Sarcoptes scabiei (Acari: Sarcoptidae) en conejos (Oryctolagus cuniculus):estudio de caso.Revista Colombiana de Entomología 43(1).51-54 (Enero-Junio 2017).2017
■Wall R,Shearer D.Veterinary Ectoparasites Biology, pathology & control. Blackwell Science Ltd, Oxford.Mites (Acari).p23‐54.2001
■Scarampella F,Pollmeier M,Visser M,Boeckh A,Jeannin P.Efficacy of fipronil in the treatment of feline cheyletiellosis.Vet Parasitol129.333–339.2005
■沖野哲也、後川潤、初鹿了.カイウサギより得たウサギズツキダニの形態について 15-22 日本野生動物医学会6(1). 2001
■福井正信.家畜病害虫と してのダニ類.佐々学編.東大出版会.東京.p359-367.1965