【病気】ブンチョウのコクシジウム感染症

フィンチに寄生するのはイソスポラ属(lsospora spp.)のコクシジウムで、目に見えない大きさの原虫です。感染している鳥の便から経口感染します。ブンチョウやカナリアでは、I.lacazei,I.canaria,I.lunarisが多く分離されています〔Al-Quraishy et al.2009,Freitas et al.2003,Turk 2012,Rakhshandehroo et al.2021〕。特にブンチョウだけから分離されているのは I.paddaeで〔Amoudi 1988〕、近年にIsospora lunaris nという新種も発見されています〔Tokikawa et al.2017〕。

ブンチョウ コクシジウム

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症状

健康な鳥では感染しても多くの場合発症しませんが、免疫の低い、ヒナや幼鳥に症状が出やすいです。

ブンチョウ

黄褐色の下痢や血便、採食した餌がそのまま出てくる未消化便をすることがあります。便の異常が続くと、体重が減少していきます。

ブンチョウ軟便

腸の細胞に寄生して増殖することで、腸炎が起こります。しかし、免疫力があれば寄生しても何も起こりませんが、老化や免疫力、体力が低下していると発病しやすいです〔Berto et al.2011〕。

検査

顕微鏡を使った糞便検査でコクシジウムのオーシストを検出します。

治療

コクシジウムの治療には駆虫薬を経口投与します。病気を治療している間は、自分の糞の中のコクシジウムが口に入って再感染しないように、ゲージはよく洗って清潔にしましょう。特に乾燥した糞に含まれるコクシジウムは新鮮な糞にいるものよりも再感染しやすい状態になっています。

予防

複数で飼育している時は、感染した鳥はすぐに隔離し、感染のある鳥のケージは、オーシストは熱に弱いことから、熱湯消毒をして下さい。日頃から、鳥の便の色や状態を観察し、新しく鳥を迎えた時は、便や健康状態におかしいところがないかをよく観察してみましょう。

参考文献

  • Al-Quraishy S,Al-Nasr I.Validity of Isospora lacazei (Labbé,1893) infecting the house sparrow,Passer domesticus (L.),in Saudi Arabia.Parasitol Res105(4):1105-1108.2009
  • Amoudi MA.Two new species of Isospora from Indonesian birds.J Parasitol.1988
  • Berto BP et al.Coccidia of New World passerine birds (Aves: Passeriformes): a review of Eimeria Schneider,1875 and Isospora Schneider,1881 (Apicomplexa: Eimeriidae).Syst. Parasitol.2011
  • Freitas MFL,De Oliveira JB,De Brito MC,Djalma AF.Occurrence of coccidiosis in canaries (Serinus canarius) being kept in private captivity in the state of Pernambuco,Brazil.Parasitol.Latinoam58:86-88.2003
  • Rakhshandehroo C et al.Detection and characterization of the Isospora lunaris infection from different finch hosts in southern Iran.Parasitology Research120:257–265.2021
  • Tokikawa T et al.Isospora lunaris n.sp.(Apicomplexa: Eimeriidae) from the domestic Java sparrow in Japan.Parasitology International66(2):100‐105.2017
  • Turk.J.Isospora species (I.canaria,Isospora sp.) in canaries (Serinus canarius,Linnaeus).Vet.Cem Ecmel ŞAKİ,Edip ÖZER 2012

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。