◎【病気】ハムスターの歯の解剖と不正咬合

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解剖・生理

野生のハムスターは種子や植物を餌としてかじるために、切歯が発達しています。かじっても歯が磨り減らないように、生涯にわたって伸び続ける常生歯です。切歯の表面のエナメル質にはミネラルが沈着しているために黄色を帯びていますが、これは異常ではありません。下顎切歯は上顎切歯より長く、上の3~4倍ほどです。

餌を食べる際に上下の切歯が当たることで削れていくため、ペレットなどの適度の硬さの餌を与えていれば、切歯が伸びすぎることはありません。歯根の歯根には歯を伸ばす特集な細胞が密集しており、それらの細胞が失活すると歯が伸びなくなります。

ハムスターのレントゲン写真
歯のX線像

【生理】ウサギ・げっ歯類の常生歯の解説はコチラ

原因

原因は主に以下の2つです。

  • 柔らかいエサ
  • ケージの金網をかじる

飼育下では柔らかい餌を食べることが多くなると、咬耗できずに過長します(過長歯)。ハムスターを初めとするげっ歯類の切歯は歯槽に緩く結合しているため、ケージの金網をかむことで萌出異常が見られ、その結果上下の歯のかみ合わせが悪くなることで、不正咬合を生じます。

ハムスターケージ噛み

歯科疾患

過長歯、不正咬合、歯牙腫、根尖周囲膿瘍、う蝕など様々な歯科疾患があります。

過長歯/不正咬合

不正咬合になると切歯の萌出異常が見られ、過長歯になります。過長歯になることで口が閉じることができなくります。特に上顎の切歯は強湾なため、円を描きながら過長し、口腔内を傷つけたり、刺さることもあります。

過長歯は破折しやすく、またケージの金網をかじった時に引っかけて折れたり、上顎骨の骨折を伴うような事故も起こります。

ハムスター不正咬合

歯牙腫

切歯の根尖には歯を伸長する幹細胞が存在し、これらの細胞はケージをかじるなどの負荷を受けると細胞変性が起こり、石灰化を伴いながら丸く増殖していきます(歯牙腫)

ハムスター歯牙腫

【病気】げっ歯類の歯牙腫の解説はコチラ

根尖周囲膿瘍

歯根が感染により蓄膿する根周囲尖膿瘍が見られます。根尖の周囲の骨も溶けることも珍しくなく、下顎の切歯に発生すると蓄膿で膨らんで、黄白色の膿が排膿します。

上顎切歯に発生すると、眼球が突出して目から排膿します。

ハムスター根尖膿瘍

う蝕(虫歯)

ハムスターはう蝕(虫歯)ができやすい動物で、甘いおやつや果物の多給が原因です。切前よりも臼歯に好発し、歯が溶けたり、抜けて臼歯がなくなることが多いです。下のX線写真では、下顎の臼歯が一部が抜けて隙間になっているのが分かります。

ハムスター虫歯のレントゲン写真

う蝕の詳しい解説はコチラ!

症状

過長歯や不正咬合になると採食が上手くできずに、削痩します。重篤な過長歯は歯が口腔から飛び出して確認されます。活動性があり元気であるが、あまり餌が減らないという状態が初期症状と言えます。

ハムスター保定

診断・検査

過長歯や不正咬合は目視して診断しますが、歯牙腫や根尖周囲膿瘍はX線でも診断が難しく、CT検査まで行って診断されまます、

治療

多くの過長歯や不正咬合は完治できませんす。切歯が過長したら定期的に切削しますが、処置の頻度やタイミングは状態により、短いと2週間、長いと2ヵ月位が目安になります。歯のカットは麻酔をかけないで行う方法と麻酔下で行う方法の2つがあり、それぞれ一長一短です。麻酔をかけないでカットすると、ハムスターは暴れて舌を怪我をしたり、歯が縦割れすることもあります。麻酔下の処置では、麻酔のリスクが問題となりますが、短く適切に切削できます。

切歯が使えないため、餌をかじることができませんので、ペレットであれば割って小さな小片にするか、ふやかして与えて下さい。種子であれば、ヒマワリは殻をむいて中身を小さく切るか、小鳥用の餌の種子である、アワやキビなどの小さい粒のものが適しています。小さくすることで、臼歯だけを使って採食できます。野菜も細かく切ってから与えて下さい。ハムスターによって好みもあり、食べられる餌の大きさも異なりますので、色々と試して一番に食べるものを探してあげましょう。

予防

普通に飼育してれば、ハムスターの切歯が伸びすぎることはなく、定期的に切削することも不要です。歯が過長しないよういにする対策は以下の通りです

  • ケージから金網をなくす
  • かじり癖対策をする
  • ケージ内のレイアウトを変える
  • 硬い餌を多くする

ケージから金網をなくす

ケージの金網部分をかじっている時は要注意です。周囲が金網である金網ケージならば、アクリルやガラス製の水槽タイプのケージに変えて下さい。ケージの天井だけが金網になっている時は、ハムスターが天井に届かないようなレイアウトを考えます。

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かじり癖対策をする

ハムスターはかじる習性がありますので、全くかじらせないのではなく、かじってもよいかじり木を与えます。ハムスターの好みで、好みのかじり木が異なるので、いろいろな製品を与えて下さい。かじり木以外にも、木製の小屋やトンネルなども隠れる以外にかじることができます。ケージ内でかじる物をめ増やしておくことが理想です。ハムスターによっては、特にかじることに執着する性格の個体おり、その原因としては、ストレスが考えられます。運動量をふやしたり、玩具を与えるなどの策もとりましょう。

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ケージ内のレイアウトを変える

レイアウトを変えて、天井の金網をかまないようにしたり、大きなケージに変える、または回し車などで運動量を増やしたりなどして下さい。どうしてもケージの金網に執着する時は水槽に変更します。

固い餌を多くする

ハードタイプのペレット、ヒマワリの種子、クルミなどの硬い餌は切歯をよく使って食べるので、過長を予防します。しかし、ペレット以外はカロリーが高いので与えすぎには注意して下さい。

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この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。