【病気】モルモットの骨性分離腫(目の中の白いモヤモヤ)

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発生

モルモットの虹彩角(隅角付近)の領域で組織の骨化が起こり、大半が偶発的に発見されます〔Griffith et al.1988,Schaffer et al.1995〕。

骨化は前房内の虹彩と角膜の間に不規則な白色の沈着物として確認され、これは毛様体の骨化であるため骨性分離腫と呼ばれています。モルモットの骨性分離腫は若い個体から老体まで幅広い年齢で発生し、性差もありません〔Williams et al. 2010,Donnelly et al. 2002,Schaffer et al.1995〕。

病態

毛様体の骨化が起こっても、炎症などの異常は認められません。しかしながら時間の経過とともに、ゆっくりと多発あるいは円弧状に増殖し、角膜周囲を取り囲むような形状に発達します〔Griffith et al.1988〕。片側の眼球にだけ発生することもありますが、多くは時間の経過とともに両側に発生します。骨性分離腫は、骨異形成や異所性骨形成とも呼ばれ、分離腫の骨化には骨細胞が存在しますが、単純な組織の石灰化(異所性石灰化)は無細胞であるのが違いです〔Williams et al. 2010,Donnelly et al.2002,Schaffer et al.1995〕。

症状

臨床症状は、微細な沈着では目の不快感や二次的な疾患を引き起こすことはありませんが、進行すると骨化した沈着物に血管新生がみられ、ぶどう膜炎緑内障が併発することがあります〔Schaffer et al.1995〕。 しかし、ぶどう膜炎や緑内障は必ずしも発生するものではなく、Williamsらの研究によると、骨性分離腫を伴う195頭のモルモットでは、眼圧の上昇は確認されなかったと報告されています。ぶどう膜炎または前房水に炎症産物がフレアーとして発生すると角膜炎が起こりやすくなります〔Williams et al.2007〕。X線検査では、偶角に円弧状の骨性分離腫が明確に確認されます〔Williams et al.2007〕。

検査・診断

目視あるいは眼科検査で発見されますが、X線検査で患部の鉱質化が認められ、重篤になるとリング状になっています。

CT検査時に偶発的に骨性分離腫が発見されることもあります。

原因

骨性分離腫の原因は解明されていません。モルモットは特に異所性石灰化を受けやすい動物で、餌のカルシウム含有量が高いことに関係して、骨性分離腫も同様かもしれません。さらに、アスコルビン酸の関与も指摘されています。毛様体は房水の生産に関わり、血漿アスコルビン酸を濃縮して房水中の濃度を高くする役割をし、房水中のアスコルビン酸は水晶体や角膜へ栄養を供給します。モルモットに投与が必要とされるアスコルビン酸のはカルシウムの吸収を施す作用があるため、毛様体のような豊富な血液供給の存在下で骨形成を促進する可能性があります〔Aghajanian et al.2015.Williams et al. 2012〕。また、Schafferら(1995)の調査では、20頭の眼窩下膿瘍のモルモットの11頭で、骨性分離腫を発見した報告をしており〔Schaffer et al.1995〕、因果関係も論議されています。

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モル以外の骨性分離種

骨性分離腫はモルモットでの報告が最も多いですが、同様の眼病変はイヌやヒトを含む他の種でも報告されています〔Lynch GL et al.2007,Brooks et al.1990,Williams et al. 2010,Donnelly et al. 2002,Schaffer et al.1995〕。なお、ヒトでは、主に脈絡膜構造が影響を受けるという点で発生場所が異なっています〔Shields et al.2008〕。

治療

骨性分離腫の治療は支持療法のみで、完治する方法はありません。

参考文献

  • Aghajanian P,Hall S, Wongworawat MD,Mohan S. The roles and mechanisms of actions of vitamin C in bone: new developments.J Bone Miner Res30:1945-1955.2015
  • Brooks DE,McCracken MD,Collins BR.Heterotopic bone formation in the ciliary body in guinea pigs. Vet Pathol40:88‐90.1990
  • Donnelly TM,Brown C,Donnely TM.Heterotopic bone in the eyes of a guinea pig: Osseous choristoma of the ciliary body.Lab Anim31:23‐25.2002
  • Griffith JW.Sassani JW,Bowman TA,Lung CM:Osseous choristoma of the ciliary body in guinea pigs.Vet Pathol25:100-102.1988
  • Lynch GL,Scagliotti RH.Osseous metaplasia in the eye of a dog.Vet Pathol44(2):222-224.2007
  • Schaffer EH,Pfleghaar S.Secondary open angle glaucoma from osseous choristoma of the ciliary body in guinea pigs.Tierarztl Prax23:410‐414.1995
  • Shields JA,Shields CL.Intraocular Tumors:An Atlas and Textbook.2nd Lippincott Williams &Wilkins.Philadelphia.PA:264.2008
  • Williams DL.Laboratory animal ophthalmology.In: Gelatt KN, editor. Veterinary Ophthalmology.4th ed.Blackwell Publ.Oxford:p1356–1359.2007
  • Williams DL,Sullivan A.Ocular disease in the guinea pig (Cavia porcellus): A survey of 1000 animals. Vet Ophthalmol13(Suppl):54–62.2010
  • Williams DL.The guinea pig eye.In Williams DL ed.Ophthalmology of Exotic Pets.1st ed.Wiley-Blackwell.Oxford.UK:67-69.2012

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。