【病気】モルモットの尿結石(再発60%)

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カルシウム系結石

腎臓や膀胱にできる結石は尿結石と呼ばれ、モルモットでは比較的多く見られる病気です。モルモットの尿は白濁していますが、これは尿中にカルシウムが多く含まれ、尿結石の核になりやすいです。

尿結石は炭酸カルシウム結石が最も多く、リン酸カルシウム結石、シュウ酸カルシウム結石などのカルシウムを主成分とするものがほとんどです〔Wallach et al.198,Hawkins et al.2009〕。尿結石は異なる2つ以上の成分が複合しており、リン酸アンモニアマグネシウム(ストロバイト)が含まれていることもあります〔Hoefer 2006〕。

発生

尿結石は2~3歳以上のメスに好発し〔Peng et al.1987〕、特に膀胱結石は膀胱炎と同様に老体のメスに発生しやすいです(平均発症年齢は30ヵ月〔Peng et al.1990〕)。しかし、現在は性差はないと言う意見も多くなっています。

原因

主な発生要因はコマツナなどの野菜やアルファルファ牧草などの高カルシウムのエサ〔Hawkins et al.2012〕や飲水不足ならびに尿量の減少です。つまり尿中のカルシウムの排泄量や濃度の増加が問題で、運動不足も尿中のカルシウムが沈殿して結石の核を作りやすくします。なお、リン酸アンモニアマグネシウムの尿結石は膀胱炎が潜在的に発生要因となります。

診断・検査

X線検査で結石の有無が確認できます。結石成分は摘出した結石からの分析検査を行います。モルモットでは精嚢腺にも結石が発生するため、誤診することが多いです(精嚢腺結石)。より決定的な画像診断が必要である場合は、CT検査を行います。

 

症状

症状は膀胱炎と同じに頻尿や血尿、そして尿路閉塞による排尿痛などです。

結石は腎臓、尿管、膀胱、および尿道などに形成されます。腎臓結石は腎臓内に形成され、尿管や膀胱に移動することもあります。膀胱結石は膀胱内で形成されて、尿道に移動することもあります。

腎臓結石(腎結石)

腎臓結石は小さな結石の場合は無症状ですが、大きな結石になると、排尿痛が見られて血尿を伴います。

尿管結石

尿管結石の多くは、腎臓結石が移動したものです。結石が尿管につまると尿が流れなくなり、腎臓が拡大する水腎症になります。水腎症になるとモルモットは腹痛や沈鬱になります。

膀胱結石

膀胱結石は膀胱炎が発生要因になります。膀胱結石は尿道に移動して尿道結石として発見されることもあります。

尿道結石

多くの尿道結石は膀胱結石が尿道に移動したものです。尿道内に結石が移動すると、排尿困難になり、尿毒症に移行します。

治療

カルシウム系の結石は薬剤で溶解できませんので、基本的に外科的摘出手術を行います。しかし、モルモットでは再発率は高く、60%と報告されています。再発の理由は不明ですが、遺伝的素因もあるのかもしれません。

モルモット膀胱結石
モルモット膀胱結石
モルモット膀胱結石

予防

尿結石の発生要因に対しての予防策は以下の通りです。

  • 餌のカルシウムを減らす
  • 水を飲ませる
  • カルシウムの少ない水にする
  • 運動させる

餌のカルシウムを減らす

尿のカルシウムを減少させるには、カルシウムの少ない餌を多く与えます。牧草にはマメ科(アルファルファなど)とイネ科(チモシーなど)がありますが、カルシウムが少ないイネ科の牧草を与えて下さい。

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ペレットもチモシーが主原料となっているペレットを与えましょう。しかし、カルシウムを制限したエサのみでも、完全に結石を予防することは難しいです。与える野菜もカルシウムが少ない種類に変更し、可能であれば水分も摂らせるために葉野菜にした方が良いでしょう。

種類カルシウム
パセリ290
モロヘイヤ260
大根の葉260
ケール220
水菜210
ヨモギ180
小松菜170
春菊120
クレソン110
チンゲンサイ100
人参の葉92
タイサイ79
明日葉65
リーフレタス58
サラダ菜56
カイワレ大根54
ホウレンソウ49
白菜43
セロリ39
ブロッコリー38
サヤエンドウ35
スナップエンドウ32
人参28
キュウリ28
レタス19
表:野菜のカルシムの量(mg/可食部100g)

一概に尿結石を予防する野菜のカルシウムの量の基準は決まっていません。100mg以上の野菜は避けるべきです。Dr.ツルはレタス、キュウリ、ニンジンなどはカルシウムが少なく、水分が多いことから勧めています。

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尿結石のことを考えて、カルシウムが少ないペレットを選んであげましょう。

最も最小値カルシウム0.5%

ハイペット 恵 モルモット 300g

水を飲ませる

毎日しっかりと十分な水を飲めば、尿量が増えて、カルシウムも体から排泄されます。しかし、無理に沢山の水を飲ませて下痢をしないように注意して下さい。

ウサギ給水ボトル

小動物専用の電解質飲料も販売されいます。粉製剤なので水に溶かしてシリンジを使って飲ませたり、給水ボトルに入れて下さい。電解質飲料になるので体の隅々まで水分がいきわたり、尿量が増加します。

電解質飲料粉!

ハイペット アクアコール 10g

カルシウムの少ない水にする

ミネラルウオーターなどはカルシウムが多く含まれている可能性が高いので、できれば避けて下さい。飲み水のカルシウムをはじめとするミネラルを除去する給水器で、カルシウムを除去してくれるカートリッジが付いています。

ジェックス ピュアクリスタル ドリンクボウル ラビット

カードリッジ2個

ついに出た!カルシウム除去給水器!尿結石になりやすいウサギに吉報です!ハイブリッドタイプで、飲み水の余分なカルシウムを除去できるの給水器が販売されました。カートリッジが付いており、カルシウムを除去してくれますが、どれくらい効果があるのかはまだ分かりません。給水器のフィルターを毎日すすがないといけませんが、それほどの手間ではありません。

飲み水のミネラルを除去してくれるスティックもあります。健康に良い水素水を作るものですが、水道水のカルキを除去し、過分なミネラル分を除去してくれます。水にスティックを入れてカルシウムが少ないお水を与えましょう。

ペット用水素発生スティック

B-blast 魔法のスティク 小動物用

運動をさせる

カルシウムの結晶は膀胱の底に沈殿しやすく、運動をすると膀胱内の結晶が舞って排泄されます。かえって白濁した尿が出ている方が安心かもしれません。肥満のモルモットは積極的に動かないので、尿結石ができやすいと言えます。

おまけ

人では結石を溶かしたり、結石を出す作用があるといわれているウラジロガシと金銭草をドライリーフのおやつにした商品です。与えているペレットや牧草に混ぜて与えて下さい。

メディマル Dr.Pureナーシングハーブ

尿結石の予防ポイント!

・主食の牧草をチモシーにする
・野菜はレタス、キュウリ、ニンジン
・低カルシウムペレットを選ぶ
・肥満を解消するために運動をさせる
・サプリメントもあり

参考文献

  • Hawkins MG,Ruby AL,Drazenovich TL,Westropp JL.Composition and characteristics of urinary calculi from guinea pigs.J Am Vet Med Assoc15.234(2):214-220.2009
  • Hawkins MG,Bishop CR.Disease problems of guinea pigs.In Ferrets, Rabbits and Rodents:Clinical Medicine and Surgery3rd ed.Quesenberry KE,Carpenter JW,eds.WB Saunders.Philadelphia.PA:295‐310.2012
  • Hoefer HL.Urolithiasis in rabbits and guinea pigs.In proceedings of the North American Veterinary Conference. Orlando:p1735-1736.2006
  • Peng X,Griffith JW,Lang CM:Cystitis and cystic calculi in aged guinea pigs.Lab Anim Sci34.527.1987
  • Peng X,Griffith JW,Lang CM:Cystitis 、urolithiasis and cystic calculi in ageing guinea pigs.Lab Anim Sci:159-163.1990
  • Wallach JD,Boever WJ:Disease of Exotic Animals.Medical and Surgical Management.WB Saunders.Philadelphia.1983
  • Becker W,Schottstedt T.Medical prophylaxis of calcium urolithiasis in two guinea pigs.Kleintierpraxis54(7):389-392.2009

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。