【病気】モルモットの糖尿病

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2つのタイプの糖尿病

ペットのモルモットにおける自然発症糖尿病の診断と治療に関しての情報は断片的なものが多く、詳細は不明でした。モルモットにおいての糖尿病は、実験動物においての若年性糖尿病の動物モデル(1 型糖尿病)〔Lang et al.1976〕と食餌によって誘発される肥満が関与する2型糖尿病のモデルが作成されています〔Podell et al.2017,Podell et al.2017〕。なお、ペットのモルモットでの自然発生の糖尿病は、肥満かつ食餌に反応よる2型糖尿病が多いと推測されています。一部の研究者は、C型レトロウイルスによる感染が発症要因として考えられています〔Lee et al.1978〕。また、糖尿病はグルココルチコイドの投与によっても引き起こされますが〔Herberg 1982,Belis et al.1996〕、一時的な症状で、休薬により自然に寛解します〔Vannevel 1998,Lang et al.1976〕。ホルモン活性の卵巣嚢胞が原因となる黄体ホルモン誘発性糖尿病も最近報告されました〔Kreilmeier-Berger et al.2019〕。なお、モルモットの膵臓は年齢とともに外分泌組織の割合が減少し,脂肪組織が明らかに増加し、膵島の組織は目立たない程度に増加することがあり、これは臨床的には重要でない退行性変化(老化)とみなされています〔Wagner 1976〕。糖尿病の遺伝的素因も、モルモットの選択された系統またはコロニーで広く観察されたため、疑われています〔Glage et al.2007,Andrews et al.1974〕。

症状

高血糖の症状は典型的な臨床症状が生じます。初期は無症状ですが、多飲/多尿、肥満、および白内障が見られます〔Ewringmann et al.1998,Keeble et al.2009,Schoemaker et al.2002,Keeble 2001,Worrel 1999,Glage et al.2007,Lang et al.1976,Arbeeny et al.1989,Besselmann et al.2004〕。二次的な発生での細菌性膀胱炎および特発性糸球体症は、おそらく腎不全につながる可能性があります〔Keeble 2001,Vannevel 1998,Andrews et al.1974,Lang et al.1977,Belis et al.1996,Johnson-Delaney 1999,Lee et al.1978〕。さらに、メスのモルモットでは生殖機能障害も報告されています〔Keeble et al.2009,Keeble 2001,Glage et al.2007,Bullock et al.1982,Lang et al.1976,Lang et al.1977〕。一部ではケトン体が蓄積してケトーシスに陥ります〔Lang et al.1976〕。

白内障は糖尿病のモルモットで一般的です〔Glage et al.2007,Andrews et al.1974〕。1000頭のモルモットの眼疾患を調査した調査では、17.4%が白内障を患っており、これらのうち多数が糖尿病で、両側性の成熟白内障を患っていました〔Williams et al.2010〕。モルモットでは、水晶体嚢内での高いグルコース濃度や水晶体内のソルビトール蓄積が白内障の発症の引き金となります。さらに、ヘキソキナーゼの飽和度やアルドースレダクターゼの量と活性には、モルモット間での個体差もあり可能性があります〔Wager 1967〕。

自然発症の糖尿病モルモットの病理組織学的所見では、ヒトのインスリン依存性糖尿病(1型糖尿病)と同様の単核細胞による浸潤のない膵臓のランゲルハンス島細胞の重度の変性が明らかになった〔Glage et al.2007,Klöppel et al.1985〕。またβ細胞の枯渇の可能性のある兆候として、腺房の脂肪変性と組み合わされたβ細胞の重度の細胞質脱顆粒および過形成の報告もあります〔Lang et al.1977,Balk et al.1975〕。さらに、膵臓線維症、脂肪肝、腎不全、白内障についても記載されています〔Andrews et al.1974〕。

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診断・検査

糖尿病の診断は、血液検査での高血糖値によって行われます。尿検査による尿糖の測定は、糖尿病における非侵襲的な初期指標にはなりまが〔Ewringmann et al.1998,Keeble et al.2009,Schoemaker et al.2002〕、確定診断には血液検査が必要です。なお、血液中のタンパク質(アルブミン)にブドウ糖が結合した糖化タンパク質であるフルクトサミン値の測定は、糖化の個体差の可能性も示唆され〔Bonagura et al.2013〕、さらなる研究が奨励されています。なおトリグリセリド値も上昇しますが〔Keeble 2001,Arbeeny et al.1989〕、高脂血症は糖尿病では一般的であり、脂質代謝、特にホルモン感受性リパーゼに対するインスリンの影響があります〔Diabetes Care Classification and diagnosis of diabetes 2017〕。治療が成功した場合には、トリグリセリド値は基準範囲に戻りました〔Kreilmeier-Berger et al.2021〕。

治療・対応

糖尿病のモルモットは高澱粉の餌や糖類が含まれているおやつや果物類を制限し、牧草や野菜を中心に給餌するような食餌療法を薦めます〔Vannevel 1998〕。文献にでは、食餌反応性糖尿(2型糖尿病)であれば、食餌の調整と体重の減少後に自然寛解につながると記載されています〔Keeble et al.2009,Keeble 2001〕。 さらに、人に使用されている経口糖硬化剤が、実験動物のモルモットに使用されていますが、全てが臨床的な研究ではなく、知見的なものになります〔Keeble et al.2009,Worrel 1999,Vannevel 1998,Johnson-Delaney 1999,Diabetes Care Classification and diagnosis of diabetes 2017,Podell et al.2017〕。また、インスリン療法によく反応するという報告がありますが〔O’Rourke 2004〕、まだ一部の文献のみの報告になります。

インスリン治療

モルモットにインスリンの注射投与を行ったいくつかの報告があります〔Schoemaker et al.2002,Vannevel 1999,Worrel 1999,Vannevel 1998,Glage et al.2007〕。様々なインスリン製剤を使用したにも関わらず、ある程度の反応があり、多飲や高血糖などの臨床症状は改善傾向にありました〔Ewringmann et al.1998,Worrel 1999,Vannevel 1998〕。しかし、長期的なモニタリングと予後に関する情報は不足しています。過去のインスリン療法では、現在は入手できなくなったウシ/ブタ混合レンテインスリン(1 IU/kg SC SID)で治療したところ、血糖値は減少したものの、上限基準値を超えたままでした〔Ewringmann et al.1998〕。他にも1日2回1~3 IU/GPの用量での、ブタおよびヒトNPHインスリンや、ブタレンテインスリンなどの報告もあります〔Vannevel 1999,Worrel 1999,Vannevel 1998〕。しかし、レンテインスリンは作用持続時間が短く、また、ウシインスリン製剤ではモルモットには反応は観察されませんでした〔Glage et al.2007〕。

高血糖および白内障を示し、食餌療法で反応しないような2頭のモルモットに対してインスリン依存性糖尿病(1型糖尿病)が疑われ、インスリン療法が試された報告があります。2頭ともヒトのインスリングラルギン(0.5 IU/頭 SC SID)が投与され、血糖値は急速に低下し、 数回の用量調整を含めて、 1.5 年以上コントロールされ続けました。白内障と水晶体誘発性ブドウ膜炎は医学的に管理され、わずかな進行のみでした〔Kreilmeier-Berger et al.2021〕。一般的な副作用は低血糖症は〔Bonagura et al.2013〕、観察されませんでした。なお、インスリン療法を行っても自然寛解の兆候は見られなかったことから、インスリン依存性糖尿病(1型糖尿病)の妥当性が強調されています〔Keeble et al.2009,Keeble 2001,Besselmann et al.2004〕。

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参考文献

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この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。