【医療】フェレットのワクチンやフィラリア予防

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動物病院での病気予防

フェレットは犬や猫と同じように動物病院で色々な病気や寄生虫を予防できます。ワクチンなどは実際にうつらないようなものでも、1頭が感染すると周りにいる全ての動物にかかります。屋外へ散歩をする場合やペットホテルなどでお預かりをさせる場合は絶対に必要になります。

フェレット

一般的には以下のような予防することができますが、日本ではフェレット専用の薬はありません。犬や猫の薬を使用するしかないので、副作用を含めてしっかりと獣医師とよく相談して下さい。

予防する病気

・ジステンパーウイルス
・フィラリア
・ノミとダニ

ジステンパーウイルス

ジステンパーウイルスによる感染症で、皮膚病から始まり、最終的に神経症状がみられ死亡します。感染すると約2週間で亡くなってしまうこともあります。

ワクチン注射で予防

ジステンパーは空気感染するので、ワクチンの予防接種でしか防げません。フェレットのほとんどはファームでワクチンを1回だけ接種してから流通させていますが、母親の抗体がCDVワクチン抗原に対する適切な免疫反応を妨げる可能性があるため、繰り返し接種する必要があります。幼体の初年度のワクチンプログラムは、8週齢で3週間ごとに合計3回のワクチン接種を行う必要があり〔Rosenthal et al.1997,Quesenberry et al.2004〕、毎年の追加接種が推奨されています〔Rosenthal et al.1997〕。ワクチンはフェレットに有効なものと無効なものがあります。せっかく予防接種をしても、無効なワクチンを使うと無駄になります。しっかりと勉強して、適切なワクチンを用意してある動物病院を選んで下さい(正直、病院を見分ける方法は飼い主からはできません)。フェレット用のワクチンは日本では認可されたものはありませんので、犬用の混合ワクチンを使うしかありません。なおかつ、犬用でもジステンパー単独のワクチンもありませんので、混合ワクチンを使います。ジステンパー以外にも他のウイルスの抗原が含まれているため、2~5種の抗原が含まれているぶんだけ、副作用も出やすいのです。アメリカではFERVAC-D、PUREVAXというフェレット専用のジステンパー単独のワクチンがあります。しかし残念ながら、日本に輸入することはできません。

フェレットワクチン

ワクチン接種後の副作用の発現を確認するために、25分間フェレットを観察することをお勧めします。ワクチンの副作用が発生した場合は、抗ヒスタミン剤やエピネフリンの投与が必要になる場合があります。重大な副作用としてアナフィラキシーショックというものがあり、死亡することもあります。ワクチン接種はできれば午前中か午後の早い時間に受けてください。もし副作用が発現したら、動物病院が営業時間であれば対応ができるからです。

【病気】フェレットのジステンパーウイルス感染症の解説はコチラ!

ワクチンのメリット

  • ジステンパーの予防ができる(外出できる)?
  • ペットショップに預けることができる(ワクチンしてないと預かってくれません)
  • 動物病院での院内感染を防げる(待ち合い室で感染します)?

ワクチンのデメリット

  • ワクチンの副作用
  • 犬用ワクチンなので100%の効果の保証はない

ジステンパーワクチン新提案

最近は、犬では一度ワクチン接種すると体の中でできる抗体が数年間にわたり残っているとされ、毎年血液検査で抗体を測定し、抗体が十分にあればワクチンを接種しないという考えがあります。Dr.ツルの提案です。フェレットも2年目以降は、毎年抗体を測定する血液検査を行い、十分な抗体があればワクチン接種はしないですみます。採血する手間は一回ですみますので、同時に検診で血液検査をすることをお勧めします。

フィラリア

フィラリアとは、蚊に刺されて心臓に寄生する寄生虫で、犬糸状虫症というのが正式名称で、通称はフィラリアと呼ばれています。主に犬にかかり、他にもアライグマや猫などにもかかります。寄生すると、腹水や胸水がたまり、咳や呼吸困難などの心不全の症状が見られます。フェレットに寄生する確率は犬よりもかなり低いですが、感染した場合には重症になります。内服の予防薬を4~12月くらいまで毎月飲ませます。体重に応じて薬の量が異なります。犬では予防薬を飲ませる前に血液検査でフィラリアに感染していないか確認しますが、フェレットではその検査が有効でないので、毎年しっかりと薬を飲んでおいた方が無難です。特に蚊が多い地方にお住まの場合は予防は必須かもしれません。

【病気】フェレットのフィラリア症(犬猫以外の感染)

ノミ・ダニ

春~夏を中心に、月1回、内服薬や首の後に滴下する薬で予防できます。ノミやマダニは吸血するだけでなく、伝染病や寄生虫を媒介し、中には人にうつる病気もあります。ノミは犬や猫から感染しますことが多いです。ノミにかかるとノミの糞が毛にみられます。お外に散歩するフェレットならば予防をしておきましょう。

フェレットノミ

参考文献

  • Quesenberry KE,Orcutt C.Basic approach to veterinary care. In Ferrets,rabbits,and rodents clinical medicine and surgery 2nd ed.Quesenberry KE,Carpenter JW eds. WB Saunders.Philadelphia:13‐24.2004
  • Rosenthal KL.Respiratory diseases.In Ferrets,rabbits and rodents clinical medicine and surgery.Hillyer EV,Quesenberry KE eds.WB Saunders.Philadelphia:77‐79.1997

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。