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副腎腫瘍はとても多い!
フェレットの副腎腫瘍はよくみられる病気で、ホルモンの分泌異常を起こします。副腎関連内分泌障害(AAE:Adrenal Associated Endocrinopathy)とも呼ばれています。平均年齢年齢は3~5歳です〔Shoemaker 2000〕。実際は副腎腫瘍ではなく、副腎の細胞が過剰に形成される過形成という状態から始まり、やがて腫瘍化が起こり、その腫瘍も良性と悪性があるのです。
副腎とは?
副腎は腎臓の頭側に位置しており、形は楕円形で、左副腎の大きさは6〜8mm、右副腎は8〜11mmで〔Evans et al.2014,Holmes 1961〕、様々なホルモンが分泌されています。
フェレットの副腎の異常で分泌されるホルモンは男性ホルモンや女性ホルモンである性ホルモンが主体です。犬にも副腎の病気がありますが、分泌するホルモンの種類が違います。
なぜ起こるの?
過去20年でアメリカのフェレットにおける副腎の異常の発生率は、30%から70%に増加しました〔Simone-Freilicher 2018〕。その理由は以下のような要因が考えられています〔Rosenthal et al.1993,Shoemaker et al.2000,Swiderski et al.2008,Weiss et al.1997〕。
- 遺伝
- 餌
- 光周期
- 早い年齢での避妊・去勢手術
遺伝・餌
副腎の異常は環境要因と遺伝が組み合わさって発症するともいわれています。炭水化物が多い餌がその発生に関与され、腫瘍を引き起こす遺伝的要因がフェレットでは潜在しているとも考えられています(多発性内分泌腫瘍症:MEN Multiple Endocrine Neoplasia type)〔Chen 2008,Miller et al.2014〕。人でも多発性内分泌腫瘍症では、ホルモンを分泌する副甲状腺、膵臓、脳下垂体、副腎などに腫瘍ができます。一つだけの臓器でなく複数の異常があらわれてくることが多いです。フェレットでも副腎腫瘍とインスリノーマなどが併発していることも多く、多発性内分泌腫瘍症が関与しているからかもしれませんね。
光周期/早い年齢での避妊・去勢手術
春から夏にかけて脳から発情させるホルモンが分泌されます。そのホルモンは本来の対象である精巣や卵巣を刺激しますが、多くのフェレットは避妊・去勢手術により除去されているために、副腎に刺激を与えます。その結果、副腎が過形成を起こして、次第に腫瘍になっていきます〔Rosenthal et al.1993〕。
どんな症状?
性ホルモンの作用によって様々な症状が発生します。ただし、症状がひどいから、副腎腫瘍になっているとは限りません。反対に無症状でも悪性の副腎腫瘍になっていることもあります。
- 外陰部の腫大
- 脱毛
- 痒がる
- 性的行動の増加
- 乳腺が張る
- 体重減少
- 排尿障害
- 腹部膨満
複数の症状が発現することもあれば、一つの症状だけのこともあります。外陰部が腫大し、分泌物が排膿していることもあります。
脱毛はよくみられる症状で、副腎の異常のフェレットの80%以上にみ 見られます〔Weiss et al1999〕。尾や腰から始まり、脇腹や背中へと広がっていき、最終的には手足、顔以外全てが脱毛します。春から夏にかけて脱毛が起こり、秋以降の日が短い環境になる頃に毛が生えてくることもあります。この周期的な変化を毎年繰りかえすようなフェレットも多いです。
全身に脱毛がみられ、皮膚が乾燥しています。同時に一部のフェレットではものすごく痒がることもあります。
性的行動として、他のフェレットに対して交尾を迫って、首筋をかんだりします。オスでも性ホルモンの異常により乳腺が張ったりします。
オスは前立腺肥大や嚢胞がみられ、頻尿や排尿困難もみられます〔Coleman et al.1998,Li et al.1996〕。悪性の副腎腫瘍は巨大な大きさになり、腹部膨満になることもあります。副腎からエストロゲン(女性ホルモン)が過剰に分泌することでエストロゲン中毒が起こります。骨髄抑制により、貧血、白血球減少、血小板減少の非再生貧血がみられます〔Rosenthal 1997〕。
どうやって診断するの?
特徴的な症状で診断されます。ホルモン測定、X線検査、超音波検査、CT検査などで副腎の大きさや転移しているのか確認します。
治療は?
病状に応じて内科治療と外科手術が選択できます。フェレットの副腎腫瘍の増大速度は極めて緩慢なので、早期の摘出を行わずに内科治療でつきあっていくという考えもあります。
内科治療
副腎から分泌される性ホルモンをコントロールすることが目的となります。生涯にわたり投与しなければなりませんが、症状により投薬を中止して、定期検査で再開したりします。一般的に以下のような薬剤を使用します。
酢酸リュープロレリン(商品名:リュープリン)
一般的に使われる薬剤で、注射です。1ヵ月毎に4回の1クールが基本的な治療プランになります。副腎からの性ホルモン分泌が抑制され、かなりの効果がありますが、腫瘍の進行は抑えられません。
ミトタン
副腎の組織を壊死を起こして縮小させる内服薬で、性ホルモンも抑える作用があります。たまにフェレットでは、軟便や下痢になることがあるので、投与して様子をみて下さい。
メラトニン
メラトニンは睡眠リズムを調節するサプリメントとして有名ですが、性ホルモンを抑制する効果もあります。
外科手術
左右のどちらの副腎を摘出するのかで、手術の大変さが異なります。また、悪性腫瘍で転移している場合は手術をしても無駄になることが多いです。詳細はCT検査でないと分かりません。右副腎は大きな血管に癒着しているので、摘出が難しいとされています。
左副腎は大きな血管から離れて位置しているので、右と比べて簡単に摘出できます。
両側の副腎を摘出すると、ホルモンが全くでなくなるため、術後のケアが難しくなりますので、基本的にお薦めしません。
フェレットの病気の分かりやすくて詳しいを本はコレ!
フェレットは病気が多いのでぜひ一冊もっておくべきです!
参考文献
■Coleman GD,Chavez MA,Williams BH.Cystic prostatic disease associated with adrenocortical lesions in the ferret (Mustela putorius furo) .Vet Pathol35:547–549.1998
■Chen S.Pancreatic endocrinopathies in ferrets,Vet Clin North Am Exot Anim Pract11:107-123.2008
■Evans H,An NQ.Anatomy of the ferret.In Biology and Diseases of the Ferret.3rd. Fox JG,Marini RP eds.John Wiley.New York:p23–67.2014
■Holmes RL.The adrenal glands of the ferret, Mustela putorius.J Anat95:325–336.1961
■Li X,Fox JG,Erdman SE,Lipman NS,Murphy JC.Cystic urogenital anomalies in ferrets (Mustela putorius furo).Vet Pathol33(2):150–158.1996
■Miller CL,Marini RP,Fox JG.Diseases of the endocrine system.In Biology and Diseases of the Ferret.3rd.Fox JG,Marini RP eds.John Wiley.NY:p377–399.2014
■Rosenthal KL,Peterson ME,Quesenberry KE et al.Hyperadrenocorticism associated with adrenocortical tumor or nodular hyperplasia of the adrenal gland in ferrets: 50 cases (1987-1991).J Am Vet Med Assoc203:271–275.1993
■Rosenthal KL. Adrenal gland disease in ferrets.Vet Clin North Am Small Anim Pract27(2):401–418.1997
■ Simone-Freilicher E.Adrenal gland disease in ferrets.Vet Clin North Am Exot Anim Pract11:125–137.2008
■Shoemaker NJ,Schuurmans M,Moorman H,Lumeij JT. Correlation between age at neutering and age at onset of hyperadrenocorticism in ferrets.J Am Vet Med Assoc216(2):195–197.2000
■Shoemaker NJ,Schuurmans M,Moorman,et al.Correlation between age at neutering and age at onset of hyperadrenocorticism in ferret.J Am Vet Med Assoc216:195-197.2000
■Swiderski JK,Seim HB,III,MacPhail CM,Campbell TW, Johnston MS,Monnet E.Long-term outcome of domestic ferrets treated surgically for hyperadrenocorticism 130 cases (1995-2004).J Am Vet Med Assoc232:1338–1343.2008
■Weiss CA,Scott MV.Clinical aspects and surgical treatment of hyperadrenocorticism in the domestic ferret:94 cases (1994-1996).J Am Anim Hosp Assoc33(6):487–493.1997
■Weiss CA,Williams BH,Scott JB,Scott MV.Surgical treatment and long-term outcome of ferrets with bilateral adrenal tumors or adrenal hyperplasia:56 cases (1994-1997).J Am Vet Med Assoc15.215(6):820-823.1999