ハリネズミの皮膚糸状菌症と疥癬(フケが多い/針が抜ける)

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針が抜けることを脱針(だっしん)!

ハリネズミには約5000本の針があるといわれています。針は毛が変形したもので、定期的に抜け変えることもあります。生理的な抜け替え以外の原因は以下のようです。

  • ダニ
  • カビ
  • クイリング
  • 免疫低下を起こす他の病気
  • ストレス

ダニ

ハリネズミに感染するダニは疥癬(かいせん)と呼ばれるヒゼンダニで、家にいるイエダニやコナダニではありません。疥癬に感染すると脱針だけでなく、フケも多く見られ、ハリネズミはとても痒がります。幼体のハリネズミでは一番の原因にあげられます。疥癬はハリネズミの体の皮膚に寄生し、ハリネズミ同士の接触やフケを介して感染します。寄生しているハリネズミが使った床敷やタオルなどでうつることもありますので注意して下さい。視力が良い人ならば細かい砂が動いているように見えるダニを目視できます。

ハリネズミダニ

顔の周りにいるダニは動いてるのが分かりやすいです。

ハリネズミダニ

自然治癒はしませんので、早急に動物病院で診察を受けて治療をしましょう。

ハリネズミダニ
ハリネズミダニ

  

治療は体にダニを殺す薬を垂らすだけです。数週間毎に2~3回の治療を病院で受けて下さい。

ハリネズミ

カビ(皮膚糸状菌症)

ハリネズミのカビは皮膚糸状菌と呼ばれます。カビは人にもうつるので、特に免疫力が低い子供や老人などはハリネズミとの接触を避けた方がよいです。ダニと同じような症状ですが、あまり痒がりません。初期はダニと同様に針が抜けてフケが多いのが特徴です。

ハリネズミフケ

カビは接触することで感染しますが、床敷やタオルを介しての感染もありえます。カビにかかったハリネズミを触った後は、手を必ず洗って消毒して下さい。進行すると、手足や顔にフケが固まって、醜い顔になります。

ハリネズミカビ
ハリネズミカビ

治療は坑真菌剤の内服薬を投与します。カビはしつこいので1ヵ月位は長く飲ませないといけません。もちろん、ケージの掃除や床敷の頻回な交換もして下さい。なおハリネズミの皮膚糸状菌は人にも感染する人獣共通感染症なので、罹患したハリネズミの扱いには注意して下さい。

ハリネズミの人獣共通感染症の詳細な解説はコチラ!

クイリング

ハリネズミにはクイリング(Quilling)という特殊な生理現象があり、成長に針が一時期にたくさん抜けることがあります。1日に10本程度抜けますが、40~50本抜けることもあるので、病気のように見えてしまいます。典型的なクイリングは6~8週齢に起こり、また生後5ヵ月齢までに何回か見られます。ダニなどか原因であると脱針とともにフケが見られますが、クイリングは自然現象なので、フケ見られずに、毛根がそのまま綺麗な状態を保っているのが特徴です。クイリングは自然におさまりますので経過観察しましょう。

免疫低下を起こす他の病気

ハリネズミの免疫力が低いとダニが増殖したり、カビの感染が起こります。ダニの治療やカビの治療を施しても改善しない場合は、肝不全や腎不全などの内臓の病気、または皮膚の細菌感染などもの可能性はあるため、血液検査やレントゲン検査などの検査を受ける必要があります。

ハリネズミフケ

ストレス

環境の変化つまりケージの置く場所を変えたり、温度変化、騒音、匂いなどの影響で、ストレスがたまって、脱針することもあります。ハリネズミの性格などを考えて、落ち着くような環境を考えて下さい。

これがポイント!

・ダニは幼体に多く、痒がる
・カビは人にもうつるので注意
・ダニもカビも免疫力低下で起こる
・1年未満に起こるクイリングは正常
・ストレスもなくはない

まとめ

病気であるのか病気でないのか、なかなか素人判断ができないのが現状です。ひどくならないうちに動物病院で診察を受けましょう。

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。