【病気】フェレットの消化管内異物(たべちゃダメ)

発生

消化管異物はフェレットにでは多発する消化器疾患です〔Mullen et al.1992,Wagner et al.2008〕。異物の内容は特徴的な偏りがあり、2歳未満の無邪気な性格のフェレットではゴムやスポンジ製品を好み、自らなめた形成されう毛球は一日の大半を寝て過ごす高齢のフェレットに見られます。線状異物はフェレットではまれです。

症状

症状は悪心や嘔吐以外に、食欲不振、活動性の低下、腹痛、下痢などです。胃や腸閉塞を起こしたフェレットは急性腹症が見られ、突発的にぐったりします。幽門に閉塞を起こすことで急性胃拡張を起こすこともあります。胃内毛球は、検査や手術中に偶然発見されることもありますが、閉塞を起こす原因になります。異物が小さいと便に異物が混じって排泄することがあります。

フェレット異物混入便 

診断・検査

腹部を注意深く触診します。小腸に異物が移動すると通常触診できますが、胃内異物は触診が困難です。胃内異物や毛球の視覚化を容易にするために、フェレットを4~6時間絶食させてからX線検査をします。異常所見には、部分的イレウス、胃のガス膨張、そして時には目視できる金属や小石などの異物などがあります。フェレットは金属や石を口にすることは稀で、ゴムやスポンジ、毛球の異物はX線不透過性なため、消化管造影検査で評価をします。硫酸バリウムまたはイオヘキソール(8~10 mL/kg PO)を使用して造影検査が行われます。

フェレット異物レントゲン
消化管造影X線像(胃内に毛球を疑う異物が確認されます)

また、CT検査で詳細に異物を評価することもあります。

CT像(胃内に小さい異物が確認されます)

治療

フェレットが消化管異物を排出することはまれです。まれに、部分的に閉塞している小さな異物が、腸潤滑剤(毛玉性下剤、例:ラキサトーン) 1mLを8~12時間ごとに投与と補液による治療後に排出される場合があります。小さな胃異物は内視鏡で除去できる場合もあります。ただし、ほとんどは外科的に除去する必要があります。衰弱したフェレットの状態を安定させ、できるだけ早く開腹手術を行う必要があります。

(毛球)

(スポンジ)

(ゴム紐)

(果物の種子)

予防

異物による閉塞を防ぐには、換毛期に毛玉緩下剤を定期的(ラキサトーン)に使用し、飼育している部屋内のフェレット対策する必要があります。フェレットをケージから出したり、監視なしに放置したりしないでください。小さなゴムやスポンジ製の玩具、机や椅子の脚のゴム製の保護キャップ、イヤホンなどを環境から取り除きます。

参考文献

  • Mullen HS,Scavelli TD,Quesenberry KE,Hillyer E.Gastrointestinal foreign body in ferrets:25 cases (1986–1990).J Am Anim Hosp Assoc28:13‐19.1992
  • Wagner R,Finkler MR.Diagnosing gastric hairballs in ferrets.Exot Dvm10(2):9‐23.2008

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。