発生
X線検査で食道が拡大(拡張)し、正常な運動性が欠如している状態を指しますが。
症状
嘔吐、無気力、食欲不振または食欲不振、嚥下障害、および体重減少を伴います〔Blanco et al.1994,Harms et al.1993〕。中には、咳や窒息、または呼吸困難を示す個体もいます。
診断・検査
鑑別診断には食道または胃腸の異物、胃炎、および呼吸器疾患が含まれます。X線検査では食道が拡張あるいはガスが貯留しており、確定診断のために硫酸バリウムまたはイオヘキソール(経口投与 [PO] で 8~10 mL/kg)を投与します。フェレットは注射器で強制的にバリウムを摂取しますが、食道破裂の可能性がある場合には、バリウムの代わりにイオヘキソールを使用します。造影剤が食道の輪郭を描出し、巨大化していることで診断されます。
造影剤が食道全体に浸潤しているような像が得られると食道炎を併発している可能性が高いです。
治療
巨大食道症は完治できず、緩和療法は犬の場合と同様ですが、上手くいきません。メトクロプラミドやシサプリドなどの運動機能促進薬は平滑筋にのみ作用し、フェレットの食道筋は全長にわたって横紋筋があります。これらの薬は下部食道括約筋の圧力を上昇させる働きがあり、食道内容排出を遅らせる可能性があります。そのため巨大食道症には有効ではありません。嘔吐や食道炎にはラニチジン、ファモチジン、またはオメプラゾールを使用します。巨大食道症のフェレットは栄養失調、肝リピドーシス、誤嚥性肺炎を起こすことがあります。強制給餌をする際には、フェレットを吊るして、立位の状態で食べさせないと嘔吐をします。ほとんどの個体は巨大食道症と診断されてから長期管理は難しいと考えられています。
原因
フェレットの巨大食道症の原因は、先天性や食道炎など上げられていますが、詳細は不明です。自己免疫性重症筋無力症は2頭のフェレットで報告されていますが、いずれのフェレットにも巨大食道症の兆候は見られませんでした〔Antinoff 2015,Couturier et al.2009〕。食道内異物であれば外科手術または内視鏡的摘出術でうまく治療されています〔Caliguiri et al. 1989,Webb et al.2017〕。
食道狭窄が報告されており、内視鏡的バルーン拡張術と食道ステント留置術で修正されている報告があります〔Ramsell et al.2010〕。
参考文献
- Antinoff N.Diagnosis and successful treatment of myasthenia gravis in a ferret. Proc Ann Conf Assoc Exot Mamm Vet.San Antonio, Texas.2015
- Blanco MC,Fox JG,Rosenthal K et al.Megaesophagus in nine ferrets.J Am Vet Med Assoc205(3):444‐447.1994
- Couturier J,Huynh M,Boussarie D et al.Autoimmune myasthenia gravis in a ferret.J Am Vet Med Assoc235(12):1462‐1466.2009
- Caliguiri R,Bellah JR,Collins BR et al.Medical and surgical management of esophageal foreign body in a ferret.J Am Med Vet Assoc195(7):969–971.1989
- Harms CA,Andrews GA.Megaesophagus in a domestic ferret.Lab Anim Sci43(5):506–508.1993
- Ramsell KD,Garner MM.Disseminated idiopathic myofasciitis in ferrets.Vet Clin North Am Exot Anim Pract13(3):561‐575. 2010
- Webb J,Graham JE,Fordham M et al.Diagnosis and treatment of esophageal foreign body or stricture in three ferrets (Mustela putorius furo) J Am Vet Med Assoc. 2017;251(4):451‐457.2017