【病気】フェレットのマイコバクテリウム感染症

発生・原因

Mycobacterium bovisおよびMycobacterium aviumによる感染は、イギリス、ヨーロッパ、ニュージーランドの研究用、農場用、野生のフェレットで確認され、生肉や低温殺菌されていない乳製品の摂取、または野生のフェレットの場合は M. bovis に感染した死肉の摂取と関連しています〔Lugton et al.1997〕。その他、M. avium,M.genavense,M.abscessusおよびM. celatumによる感染も報告されています〔Lucas et al.2000,Lunn et al.2005,Mentre et al.2015〕。本邦でのペットでの感染も著者は経験しています。

症状

下痢以外に体重減少、リンパ節腫大(特に腸管膜リンパ節)、脾腫、肺炎を起こすことがあります〔Mentre et al.2015〕。

診断

診断は、組織サンプルの組織病理学的検査、抗酸菌染色、PCR検査、培養によって確定されます。マイコバクテリア肉芽腫は、全身性コロナウイルス疾患と症状が類似しており 、組織病理学的に区別する必要があります〔Mentre et al.2015〕。

リンパ節の病理組織像 チ−ルネルゼン染色×40
リンパ節の病理組織像 チ−ルネルゼン染色×100

【病気】フェレットの腸コロナと全身性コロナウイルス感染症の解説はコチラ

治療

これまでの報告では、リファンピシン単独療法、またはエンロフロキサシンとアジスロマイシンとの併用療法を含むマイコバクテリア症の治療レジメンが、さまざまな成功率をもたらしています。

予防

フェレットのマイコバクテリア症の人獣共通感染症の可能性もあり得るため、消毒など注意して扱うべきです。

【病気】フェレットの下痢(下痢が治りません)の解説はコチラ

参考文献

  • Lucas J,Lucas A,Furber H et al.Mycobacterium genavense infection in two aged ferrets with conjunctival lesions.Aust Vet J78(10):685–689.2000
  • Lugton IW,Wobeser G,Morris RS,Caley P.Epidemiology of Mycobacterium bovis infection in feral ferrets (Mustela furo) in New Zealand: II.Routes of infection and excretion.N Z Vet J45(4):151‐157.1997
  • Lunn JA,Martin P,Zaki S et al.Pneumonia due to Mycobacerium abscessus in two domestic ferrets (Mustelo putorius furo) Aust Vet J83(9):542–546.2005
  • Mentre V,Bulliot C.A retrospective study of 17 cases of mycobacteriosis in domestic ferrets (Mustela putorius furo) between 2005 and 2013.J Exot Anim Med24(3):340–349.2015

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。