【病気】フェレットのカンピロバクター感染症

原因

カンピロバクター属の細菌は、胃腸炎症状を主たる食中毒のヒトのカンピロバクター感染症が知られ、その原因菌の95〜99% はCampylobacter jejuni subsp. jejuni(以下C.jejuni )で、一部はC.coliです。また、敗血症や髄膜炎、膿瘍などの検査材料から分離されるカンピロバクターはC.fetus subsp.fetus であることが多いです。C.jejuni食中毒は欧米諸国と同様、近年我が国においても増加傾向にあります。フェレットでの感染はC.jejuni であるため、人獣共通感染症でもあり、実験動物においてもフェレットが感染実験に多く使用されています〔Fox et al.1987〕。なお、学名は、ギリシア語で「曲がった」を意味する形容詞καμπύλοςと、ラテン語で「細菌」を意味するbacterを合成したもので、曲がった細菌という意味を持っています。

症状

症状は軽度から中等度まで様々で、軟便・下痢が起こる〔Bell et al.1990,Dolg et al.1996〕。感染実験では、接種3日後に感染し、5~7日で過剰な粘液と血液を伴う胆汁液状の下痢がみられ、その後は徐々に回復し、接種10~14日後で糞便は正常に戻りました〔Fox et al.1987〕。

診断

C. jejuni 感染症は糞便検査から菌培養検査で分離、あるいは遺伝子(PCR)検査で診断します。C. jejuni は長さ0.5〜5μm、幅0.2〜0.4μmのグラム陰性らせん状桿菌で、両極にそれぞれ1本の鞭毛を持ち、所謂コルクスクリュー様の独特な運動を活発にするため、糞便の鏡検で特徴的な菌の形状からも判断できます。

治療

人の患者の多くは自然治癒し、予後 も良好である場合が多く、特別治療を必要としないが、重篤な症状や敗血症などを呈した患者では、抗生物質や下痢止などの投薬による対症療法を行う。

予防

本菌感染症の予防は、食品衛生の面からみると、他の細菌性食中毒起因菌と同様に、動物肉調理時の十分な加熱処理、調理器具や手指などを介した生食野菜の二次汚染を防止することになります。本菌は乾燥条件では生残性が極めて低いことから、調理器具の清潔および乾燥に心掛けることも重要です。もちろん、イヌやネコ等のペットから人の感染例も報告されており、フェレットにおいても同様に衛生的管理が必要です。

参考文献

  • Bell JA,Manning D.A domestic ferret model of immunity to Campylobacter jejuni-induced enteric disease.Infect Immun58(6):1848-52.1990
  • Dolg P,Yao R,Burr DH,uerry P,Trust TJ. An environmentally regulated pilus-like appendage involved in Campylobacter pathogenesis.Mol Microbiol20:885-894.1996
  • Fox JG et al.Campylobacter jejuni infection in the ferret: an animal model of human campylobacteriosis.Am J Vet Res48(1):85-90.1987

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。