【解剖】鳥のリンパ組織

 リンパ節はない

鳥類の免疫は他の動物と同様に、 B細胞、T細胞、および体液性免疫を持っています〔Jenkins et al.2007〕。一次リンパ組織には、Bリンパ球を司る鳥類特有器官のファブリキウス嚢(Bursa of Fabricius)と頸部にあるTリンパ球を司る胸腺があります。ファブリキウス嚢は排泄腔の内壁背位にある小嚢で、洋梨状の盲嚢を作り、雛の時よく発達し、加齢とともに次第に退縮します〔加藤1976, Glick et al.1956〕。二次リンパ組織には脾臓、骨髄、粘膜関連リンパ組織(食道および幽門扁桃、パイエル板、盲腸扁桃、メッケル憩室)、頭部関連リンパ組織(ハーダー腺、涙腺、喉頭または鼻咽頭)などです。

丸い脾臓

鳥類の脾臓の形状は種によって異なり、基本は球形ですが、ハトでは楕円形、水鳥ではピラミッド形です。 脾臓の質量は、季節、ストレス、寄生虫の寄生などに応じて、過形成を起こしもます。なお、脾臓は血液の濾過、赤血球と抗原の破壊も行いますが、 鳥類では赤血球の貯蔵や赤血球生成において重要な役割を果たしていません。

分葉した胸腺

鳥の胸腺は首の両側、迷走神経および内頸静脈と平行に位置します。胸腺は7~8つの小葉に分かれており、脂肪に埋め込まれています。若い年齢で最大の大きさになり、加齢とともに退縮しますが、その程度は種類によって大きく異なります〔Chen et al.1990〕。これらの一次および二次リンパ器官に加えて、血液供給と連絡し、鳥の体全体にリンパ液を輸送するリンパ管系もあります。鳥類の免疫機能には、免疫反応の成熟と多様性の点で哺乳類のものとは異なります〔Cooper et al.1966,Mobini 2012〕。

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参考文献

  • Chen CL,Bucy RP,Cooper MD.T cell differentiation in birds.Semin Immunol2(1):79-86.1990
  • Cooper MD,Raymond DA,Peterson RD,South MA,Good RA.The functions of the thymus system and the bursa system in the chicken.The Journal of Experimental Medicine123(1):75–102.1996
  • Chen CL,Bucy RP,Cooper MD.T cell differentiation in birds.Semin Immunol2(1):79-86.1990
  • Glick B,Chang TS,Jaap RG.The bursa of Fabricius and antibody production on the domestic fowl.Poult Sci35:224-225.1956
  • Mobini B.Histological and histochemical studies on the Harderian gland in native chickens.Veterinarni Medicina57(8):404-409.2012
  • Jenkins KA,Bean AG,Lowenthal JW.Avian genomics and the innate immune response to viruses.Cytogenet.Genome Res117(1-4):207-12.2007
  • 加藤嘉太郎.増補改版 家畜比較解剖図説上巻.養賢堂.東京:p230,248,250.1976

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。