原因
鼻に炎症を伴なった痂皮が形成される性病であるウサギ梅毒(トレポネーマ:Treponema paraluis-cuniculi)の可能性が高いです。人の性病である梅毒と同じ菌ではありません。しかし、性病なので生殖器に感染していますが、そこからの分泌物にも細菌が潜んでおり、ウサギが生殖器を舐めることで、鼻をはじめ唇にも炎症が蔓延します。
症状
鼻梁や口唇の皮膚に炎症を伴なった痂皮が形成されます。メスの陰部では、同様に炎症と痂皮が見られます。
オスであればペニスの炎症あるいは包皮に皮疹があります。
時に生殖器には炎症が見られずに、鼻や唇にだけ炎症が起こることもあります。
基本的に食欲や活動性などの一般状態には影響せず、掻痒も強くありません〔Paul-Murphy 1997〕。感染したメスは流産や不妊を引き起こし、子宮内膜炎などの原因となる可能性があります。
発生
2~3ヵ月齢未満の幼体で好発しますが、感染後3~6週間までは発症せず、また不顕性感染に移行することも多いのが特徴です〔Cunlif-Beamer et al. 1981〕。不適切な環境や免疫低下は発症させる要因となり、梅毒はなぜか寒い時期に発症することが多いです。
伝播
主に交尾感染でうつりますが、幼体は母ウサギとの接触や産道の中で感染します。感染しているウサギ同士での病変部への接触でもうつりますが、ウサギ梅毒は人には感染しません。
診断・検査
本菌は細菌培養が難かしく、確定診断は皮膚生検によって採取したサンプルの塗銀染色などで菌の存在を明確にします。この方法はウサギに負担をかけます。
人の梅毒と血清学的に類似するため、人用の梅毒の検査で使うRPR(Rapid Plasma Reagin Test:カルジオライピンーレシチン抗原を吸着させた炭素粒子と、患者血清とを混和してできる凝集塊の有無を肉眼で観察する)法による検査キットで診断します〔Paul-Murphy 1997〕。しかし、この検査では発症して5~6週間経過しないと陽性反応が得られないこともあるので、あくまでも簡易検査です。
治療
特効薬はペニシリンですが、ウサギでは抗生物質による腸炎の危険性を伴うため、クロラムフェニコールという抗生物質が使用されている〔Paul-Murphy 1997〕。治療後に炎症はおさまりますが、薬は必ず1~2ヵ月は続けることが大切です。しっかりと続けないと再発しやすく、炎症が改善してすぐに休薬すると、再発するウサギが多いので注意してください。1~2ヵ月後に再検査を行い、陰性になってから投薬を終了します。
これがポイント!
・ウサギ梅雨は性病
・人の梅毒とは親戚の細菌だが、違う細菌
・人にはうつらないが、ウサギにはうつる
・生殖器には異常がなく、顔だけに皮膚病が起こることもある
・血液検査で診断し、効果のある薬を1~2ヵ月飲ませる
・改善してもRPR検査で陰性になったことを確認してから休薬する
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参考文献
- Cunliffe-Beamer TL,Fox RR.Veneral spirochetosis of rabbits.Description and diagnosis.Lab Anim Sci 311:366-371.1981
- Paul-Murphy J.Reproductive and Urogenital Disorder.Rabbit.In Ferrets,Rabbits,and Rodents Clinical Medicine and Surgery.Hillyer EV, Quesenberry KE.eds.WB Saunders Company.Philadelphia:202-211.1987