オウム病=クラミジア感染症
クラミジア(Chlamydia)は細胞内で増殖する微生物で細菌やウイルスとは違います。クラミジアにはクラミジア・トラコーマ(C.trachomatis)、クラミジア・シッタシ(C.psittaci) 、クラミジア・ニューモニアエ(C.pneumoniae)などいくつかの種類があります。
種類 | 感染動物の疾病 |
C.trachomatis | 人の性病 |
C.psittaci | オウム病 |
C.pneumoniae | 人の肺炎 |
C. pecorum | 牛や羊の全身感染症 |
鳥で有名なオウム病は、オウム病クラミジア(Chlamydophila psittaci)によるもので、潜在的な宿主には人、鳥類や牛、豚、羊、豚などがあげられ、肺炎(クラミジア肺炎)などを起こすことが知られています(人獣共通感染症)。
人のクラミジア肺炎は全てが鳥が原因でない
人のクラミジア肺炎は、クラミジア トラコーマ(赤ちゃんが感染した母親からうつったり、成人では性感染症としうつる)とクラミジア ニューモニア(慢性の肺炎)によるもので、オウム病クラミジアとは病態や対応が異なるため、区別して扱われています。この2つは人の法律の感染症法の四類感染症でクラミジア肺炎とされ、オウム病クラミジアによるものがオウム病として三類感染症に指定され、どちらも診断した医師は保健所に届け出が必要となっています。つまり人がクラミジアによって肺炎が起きても、鳥からうつったものとは限りません。クラミジアの何の種類によるものか確認しないといけません。
オウム病
オウム病クラミジア(Chlamydophila psittaci)には8つ血清型が属し、すべてが人間に容易に伝染すると考えられています。
感受性鳥種
鳥類全般に感染ならびに保菌し、460種以上の鳥類から分離されています〔Kaleta et al.2003〕。一般的にはオウムから検出されることがが多く、100種以上から報告されています。ペットの鳥ではオカメインコ、セキセイインコ、ラブバードなどのインコ・オウム類が目立って多く、特に幼鳥に多く発見され、他にはハトや九官鳥でも好発しています〔Harkinezhad et al.2009,Kaleta et al.2003,Teske et al.2013〕。一方、カナリアやフィンチでは少ないです〔Olsen et al.1998, Cong et al.2014,Circella et al.2011〕。
鳥の症状
鳥類の体内でのC.psittaciは全身性であることが多く、感染は不顕性、重度、急性、または慢性的になります。感染した鳥は輸送などのストレス、栄養不良、他菌による感染などがあると発症し、クラミジアの断続的な排泄が見られます。
個体あるいは鳥の種類によって症状は様々で、鼻汁や結膜炎、活動性や食欲の低下、削痩が見られ、肺炎や気嚢炎などの呼吸器症状が主ですが、呼吸器には異常が見られず、軟便や下痢だけのこともあります。脳炎などの神経症状も稀にあります。成鳥は感染しても無症状であるものが多いですが、幼鳥は感受性が高く、発症して急死するものや、回復後保菌状態が長く続くこともあります。
人の症状
人の症状も様々で、軽度のインフルエンザ様の症状から,多臓器障害を伴う重症まで様々です。悪心や嘔吐を伴う場合もあります。集団発生例に関しては、国内において動物園と鳥類飼育施設で発生した事例がいくつか報告されています〔感染症の話 2001,多田ら 2002,飯島ら 2009,Matsui et al.2002〕。
鳥の保菌率
鳥がオウム病クラミジアをどれ位の割合で保菌しているのか?色々と調べられています。陽性率は以下の通りです。発生率が10~30%と報告されているものが多く、 発生率はオカメインコで特に高いという話もあります〔Grimes et al.1991,Vanrompay et al.1995,Schacter1989,Centers for Disease Control1987,Schacter et al.1978,Tully et al.1996〕。国内では以下のような保菌率が報告されています。
- 健康鳥の30~50%〔福士1997〕
- 輸入されたオウム・インコの約70%〔国井ら1993〕
- 国内のペットショップ・一般家庭・動物園など で飼育されているオウム・インコ類の10.0~31.7%〔宮下ら1997〕
感染
感染経路としては飛沫、接触、捕食によって鳥類から他の鳥類又は哺乳類へ感染します。感染した鳥の糞にはクラミジアの粒子が多数含まれ、乾燥に強く,環境中で数ヵ月間にも渡って感染力を保っています。糞以外にも飛沫した体液、鼻水を吸入や摂取したことでも感染します。同居鳥や母鳥がヒナに餌を与える際に感染する危険性がとても高いでです。雛や幼鳥で感染した場合、体内でクラミジアは肝臓や脾臓に存在して断続的に糞に排泄され、いわゆるキャリアとなります。キャリアとなった鳥は、ストレスによって体内でクラミジアが増殖して感染源となります〔Vanrompay et al.1995,Wyrick et al.1989〕。
一般的に鳥の糞から人へ感染しますが、羽毛や卵によっても伝染する可能性もあります。通常は主に吸入で、まれに経口摂取で感染します。人への感染は鳥との接触が最も高い危険因子となり、リスクの高い人には、鳥の飼育者、鳥関連職業者(ペットショップの従業員、動物園の従業員、養鶏家、獣医、野生生物関係者)、猟師などがあげられます。また、ペットのインコやオウムから口移しの給餌により感染する発例も多いです〔感染症の話 2001〕。
検査・診断
意外と検査は難しいです。保菌鳥は発症の有無に関わらず、断続的にクラミジアを排出される可能性があるため、サンプルを数日間毎日収集してから検査センターに提出するたことが必要かもしれません。一度の検査で陰性であっても確定できるものではなく、複数回の検査をお薦めします。現在は遺伝子(PCR)検査が確実です。検査材料としては、糞や血液などをサンプルにします。糞のサンプルはクラミジアが増殖しているかの判断になり、血液のサンプルのみでは、保菌の有無の確認になります。特に糞の場合は、2~3日分以上の糞を集めてサンプルとすると良いでしょう。また抗クラミジア薬(テトラサイクリン、フルオロキノロン、マクロライド)による治療は、偽陰性の検査結果を引き起こしますので、検査時の数日前から休薬捨て下さい。
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治療
クラミジアは細胞内に取り込まれている、いわゆる休止状態の時には薬が効きません。代謝的に活性な場合にのみに抗生物質に感受性があり、治療薬としてドキシサイクリン、オキシテトラサイクリン、およびエンロフロキサシンの限定された薬剤が含まれます。治療には抗生剤が効く状態の時に投与しないといけないので、完治させるには長期間の治療が必要になり、約45日間の連続して投薬を続けることが薦められています〔Smith et al.2005〕。また再感染を引き起こす可能性のある環境からのクラミジアも除去することも重要で、鳥のケージを完全に消毒する必要があります。
予防
クラミジアは消毒や熱に弱く、一般の細菌と同様の対応と考えられています。乾燥した糞にクラミジアが存在している可能性があるので、まずはケージをきちんと熱湯で消毒し、最後に消毒薬できれいにしてあげましょう。
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まとめ
新しく鳥を飼ってきて、一緒にする場合は注意したいのがオウム病ですね。鳥に負担の少ない遺伝子検査なので、同じケージに入れる前に、ぜひ受けて下さい。また、家族に赤ちゃんや老人など免疫力が弱い方がいる場合、オウム病を心配している飼い主ならば、検査を受けるべきでしょう。
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参考文献
- Cong W,Huang SY,Zhang XX,et al.Chlamydia psittaci exposure in pet birds.J Med Microbiol63(4):578–581.2014
- Circella E,Pugliese N,Todisco G et al.Chlamydia psittaci infection in canaries heavily infested by Dermanyssus gallinae.Exp Appl Acarol55(4):329–338.2011
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