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アイキャップってコンタクトレンズみたい?
解剖学的にもヘビは特徴的で、眼瞼や涙腺を欠いています(涙腺はありませんが、ハーダー腺は発達しています〔Lawton 2006〕)。眼瞼が欠くために常に開瞼したままで、瞬きをせずに、透明な皮がコンタクトレンズの様に角膜の上を覆って保護されています。この透明な皮をEye cap〔アイキャップ〕(Brille〔ブリル/ドイツ語やノルウェー語で眼鏡を意味します〕 、Ocular scale〔オキュラースケール/眼鱗〕、Spectacle〔スペクタクル/眼鏡〕)と呼ばれています〔Mari-Ann et al.2017〕。アイキャップの厚さは種類によって異なり、ナミヘビは9~95μm、ボアとニシキヘビは81~132 μmです〔Mari-Ann O Da Silva et al.2016〕。3層で構成され、外側上皮はケラチン層が重なった平らな基底細胞で構成され、間質は神経線維と血管が絡み合ったコラーゲン原線維の層、内側上皮は微絨毛を含む扁平上皮細胞の層です〔Mari-Ann O Da Silva et al.2016〕。アイキャップの縁には移行領域があり、眼周囲の鱗と融合しています〔Mari-Ann O Da Silva et al.2014〕。
角膜とアイキャップの空隙にはハーダー腺の涙液で満たされ、アイキャップは脱皮と同じサイクルで定期的に剥がれ落ちます〔Hellebuyck et al.2023〕。脱皮前の体鱗が白っぽくなりますが、アイキャップも脱皮前になるとくすんで直前には白濁します。この時点で、ヘビは視覚を失うため、より攻撃的になる可能性があります〔Funk 1996〕。
どんな疾病?
乾燥などの環境不備や栄養不良などが原因で、アイキャップが脱皮と同時に剥がれない状態をアイキャップ遺残(スペクトル遺残)と呼ばれます。体の脱皮は上手くできても、アイキャップだけが残ってしまうこともあり、目が輝いておらず、曇った感じに見えます〔Cooper et al.1981,M O Da Silva et al.2015〕。
遺残に気がつかずに、脱皮の度に何層も積み重なって硬結することもあります。
また、アイキャップにも血管が走行しているため、アイキャプの細胞に細菌や真菌感染が起こり、炎症も見られます〔M O Da Silva et al.2015〕。アイキャップと角膜の空隙にまで炎症が波及し、角膜炎やアイキャップも癒着することもあります。原因が異なるために、栄養などの全身性の問題が関与した場合は両側性に、飼育要因が関与する場合は、片側性または両側性の可能性があります。
なったらどうする?
水で湿らせたティッシュやコットンなどで優しく拭くようにして取れることもありますが、簡単に剥がれない場合は、毎日少しづつ濡らせてふやかして拭いて取り除いて下さい。どうしても取れない場合は、ピンセットなどで角膜を傷つけないように慎重に取り除きますが、このような状態になった場合は、動物病院で処置をしてもらいましょう。
予防は?
脱皮不全の予防をし、脱皮した皮を確認してアイキャップも一緒に剥がれているか確認します。
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参考文献
■Cooper JE,Jackson OF.Miscellaneous diseases.In Diseases of the Reptilia2.Cooper JE,Jackson OF eds.Academic Press. London.UK:p487–504.1981
■Funk RS.Biology.Snakes.Reptile Medicine and Surgery.Mader DR ed.WB Saunders.Philadelphia:p39-46.1996
■Hellebuyck T,Vilanova FS.Anatomy,Physiology,and Disorders of the Spectacle,Subspectacular Space,and Its Lacrimal Drainage System in Squamates.Animals (Basel)21;13(6):1108.2023
■Lawton MPC.Reptilian ophthalmology.In Reptile medicine and surgery.2nd ed.Mader DR ed.Elsevier,St Louis.MO:p323-342.2006
■Mari-Ann Otkjaer Da Silva et al.Morphology of the snake spectacle reflects its evolutionary adaptation and development.BMC Vet Res18;13(1):258.2017
■Mari-Ann O Da Silva et al.Comparative morphology of the snake spectacle using light and transmission electron microscopy.Vet Ophthalmol19(4):285-90.2016
■Mari-Ann O Da Silva et al.The spectacle of the ball python (Python regius): a morphological description.J Morphol275(5):489-96.2014
■M O Da Silva et al.Ophidian Spectaculitis and Spectacular Dysecdysis: A Histologic Description.Vet Pathol52(6):1220-1226.2015