ヘビの真菌症(SFD)~新興感染症

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ヘビカビ病はSFD

ヘビではSporothrix schenckiiPestalotia pezizoidesGeotrichum candidumGalactomyces geotrichum)、およびPaecilomyces sp.〔Cheatwood  et al.2003〕などの真菌の感染症が報告され、近年注目されているのが、ヘビ真菌症(SFD:Snake Fungal Diseas)で、SFDの蔓延により野生のヘビの個体数が減少し、アメリカ東部で発見されたOphidiomyces ophiodiicolaという真菌がSFDの主な原因とされています。名前が示すように、この感染はヘビにのみ発症し、多くは死亡するために新興感染症として注目されています。

新興感染症?風土病

最初に確認されたのは1990年代後半で、アメリカに生息する野生のシンリンガラガラヘビでは、SFDによって激減しました〔Allender et al.2015b〕。なお当時は原因が解明されていませんでした。ガラガラヘビの仲間以外にも、ラットスネークやミルクヘビナミヘビなどいくつかの野生のヘビで報告されていましたが、イギリスなどヨーロッパの野生のヘビでも最近確認され始めました〔Walker et al.2019〕。ヘビの間での感染方法は不明ですが、コーンスネークにおいて直接接触することが研究されましたので〔Lorch et al.2015〕、今後はペットのヘビでの発生状況が懸念されています。野生のヘビでは2,384頭中441頭が診断または疑われ、致死率は9.8%でしたが、ペットのヘビでは121頭中36頭で診断または疑われ、66.7%と半数以上の症例で致命的でした。この結果は、飼育下のペットでは、ストレスが病状を進行される要因である可能性が示唆されました。また野生の657頭のヘビのうち76頭からO.ophidiicolaが検出されながら、ペットよりも死亡率は低いことから、新興感染症ではなく、以前は認識されていなかった風土病であるという説もあります〔Davy et al.2021〕。

症状

SFDの症状は感染するヘビの種類でも異なりますが、共通しているのは皮膚の肥厚、脱皮不全、皮膚炎や潰瘍、壊死などの皮膚病です〔Lorch et al.2016〕。また筋肉や骨の炎症、肺炎、肝炎なども起こり、真菌は角膜にも侵入するため、アイキャップ遺残とは異なり、脱皮に無関係に角膜が混濁します〔Allender et al.2015a〕。

治療

基本的に抗真菌剤を投与します。しかし、真菌感染は細菌以上に免疫の低下が感染に深く関与しますので、飼育環境の整備や栄養バランスのとれたエサを与えるように心がけて下さい。もちろん飼育環境の消毒もしっかりと行う必要もあります。

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参考文献
■Allender MC,Bunick D,Dzhaman E,Burrus L,Maddox C.Development and use of a real-time polymerase chain reaction assay for the detection of Ophidiomyces ophiodiicola in snakes.Journal of Veterinary Diagnostic Investigation27(2):217–220.2015a
■Allender MC,Raudabaugh DB,Gleason FH,Miller AN.The natural history, ecology, and epidemiology of Ophidiomyces ophiodiicola and its potential impact on free-ranging snake populations.Fungal Ecology17: 187.2015b
■Davy CM et al.Revisiting Ophidiomycosis (Snake Fungal Disease) After a Decade of Targeted Research.Front Vet Sci31;8:665805.2021
■Lorch, Jeffrey M.; Knowles, Susan; Lankton, Julia S.; Michell, Kathy; Edwards, Jaime L.; Kapfer, Joshua M.; Staffen, Richard A.; Wild, Erik R.; Schmidt, Katie Z.; Ballmann, Anne E.; Blodgett, Doug; Farrell, Terence M.; Glorioso, Brad M.; Last, Lisa A.; Price, Steven J.; Schuler, Krysten L.; Smith, Christopher E.; Wellehan, James F. X.; Blehert, David S.Snake fungal disease: an emerging threat to wild snakes.Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences371(1709).2016
■Lorch JM,Lankton J et al.Experimental Infection of Snakes with Ophidiomyces ophiodiicola Causes Pathological Changes That Typify Snake Fungal Disease. mBio17;6(6):e01534-15.2015
■Walker DM,Leys JE,et al.Variability in snake skin microbial assemblages across spatial scales and disease states.ISME J13(9):2209-2222.2019

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。