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カメもトカゲも膀胱結石ができる!
膀胱結石ができるのは膀胱があるカメとトカゲです〔Junghanns et al.2011〕。カメでは膀胱での水分吸収を強く行う陸生種であるリクガメに発生し、ケヅメリクガメ、ギリシャリクガメ、ヘルマンリクガメ、ヨツユビリクガメ、ホシガメなどに多発しますが〔Meredith et al.2002〕、特異的に好発する種類はケヅメリクガメです〔Amat et al.2012,Mader 2006〕。トカゲでは理由は不明ですがグリーンイグアナとチャクワラに発生します。なお、膀胱を欠くヘビでは、遠位結腸に移動した尿酸が結石化して(尿酸プラグ)、便秘を起こすことがあります〔Reavill 2010〕。
発生理論
膀胱に結石が形成されても、爬虫類では犬や猫のように排尿障害が起こるとは限りません。腎臓で生成された尿は尿管を介して直接腎臓に運ばれずに、総排泄腔に流出し、そこから膀胱へ移動します。したがって小さな膀胱結石は無症状ですが〔Carpenter 2008,Frye 1991〕、結石が大きくなって初めて症状が発現し、診断されることも珍しくはありません。
また、検診や膀胱結石とは関係のない問題のエックス線検査で偶発的に膀胱結石が発見されることも多いです。特にリクガメの膀胱結石は、他の多くの動物種の膀胱結石と比べて巨大な大きさになる特徴があります。巨大なサイズの膀胱結石は、数ヵ月または数年を要して形成された可能性があります〔Rijberk et al.2009,Carpenter 2008〕。
症状
膀胱内で大きく成長した結石は、膀胱の脇に走行している直腸を圧迫するようになり、便秘が発生します。膀胱結石が移動して膀胱から総排泄腔に移動すると骨盤腔に詰まり、排便だけでなく排尿障害も見られ、強い力みが起こります。便秘や排尿障害が起こることで、食欲不振や活動性の低下なども見られます〔Frye 1991,Junghanns et al.2011〕。総排泄孔に移動した結石が目視できることもあり、力みにより結石が自然に排泄することもあります〔Mader et al.2002,Lightfoot 1999〕。
原因は?
尿酸結石は高蛋白の餌(カメ用ペレットなど)、ビタミンAやD欠乏、膀胱炎(尿路感染)、カルシウムやシュウ酸塩の過剰摂取などが発生要因になりで、飲水不足や乾燥環境による脱水によって膀胱や結腸からの水分吸収が増加し、運動不足によって膀胱内で尿酸などの老廃物が沈殿することで結石が形成されやすくなります〔Kwantes 1992,Mader et al.2002,Meredith et al.2002,Keller et al.2015〕。結石形成の原因に関しては様々な仮説があるままで、完全には解明されていません〔Keller et al.2015,Mader 2005〕。
結石成分は?
爬虫類の種類によって尿中の窒素代謝物が異なりますので、発生する膀胱結石の成分も当然異なります。陸生種の尿は主に尿酸が排泄されることから、結石は尿酸塩が多いです〔Moyle 1949〕。カメの膀胱結石は水棲種よりも陸生種において圧倒的に多発し、主に尿酸塩の結石になります〔Amat et al.2012,Keller et al.2015〕。なお、リクガメの尿酸塩の膀胱結石は、主に酸性尿酸アンモニウムであると報告があります〔Keller et al.2015〕。なお、人の酸性尿酸アンモニウム結石の原因は、脱水、慢性尿路感染、高尿酸血症などがあげられていますが、その中でも感染が最も主要な発生要因という考えになっています〔竹内ら1981〕。爬虫類の膀胱結石の成分や病態は解明されていませんが、感染が発生に深く関与しているかもしれません。また、カルシウムが尿酸と結合した結石の報告もあります〔McKown 1998,Lightfoot 1999〕。高尿酸血症の人では、尿pHの低下や尿中への過剰な尿酸排泄により、尿中の尿酸が一定の濃度を超えた結果、シュウ酸カルシウムの溶解度を下げ、結晶化した尿酸を核に、周囲にカルシウムとシュウ酸が凝集するというメカニズムが考えられています〔日本ケミファ株式会社,山口 2017〕。水棲種の爬虫類の尿の窒素代謝物は尿酸よりも尿素とアンモニアの割合が高く〔Moyle 1949〕、膀胱結石の成分はストルバイト、リン酸カルシウム、シュウ酸塩、および炭酸カルシウムなどが報告されています〔Innis et al.1999,Jacobson et al.2009〕 。しかし、水棲種は飲水する機会も多く、排尿も必然的に多くなることから、膀胱結石の発生は稀です。
診断は?
膀胱結石はX線検査で診断されます〔Rijberk et al.2009,McArthur et al.2004,Meredith et al.2002〕。 ただし、尿酸の成分が多い結石はX線にうつりにくく、カルシウムが多いとレントゲンに明瞭に写しだされます。うつしにくい膀胱結石はCT検査で診断されます。爬虫類の結石は、哺乳類の結石と比べると脆く、特に尿酸による結石は層状に形成されており、指で破砕できるような固さのこともあります。爬虫類の結石は、X線やCT検査において同心円状の層を持つ放射線不透過性の構造物として確認されることが特徴になりますです。また、トカゲでは下腹部を、カメでは後肢の頭側から甲羅内に指を入れて触診すると、大きな結石であれば容易に分かります〔Plunkett 2007,Rijberk et al.2009,McArthur et al.2004〕。
治療
大きな胱内結石の場合は、外科的対応しかありません〔Meredith et al.2002,Mader 2006,Frye 1991〕。一般的には腹甲を切開して膀胱から結石を摘出する開甲手術が行われます〔Carpenter 2008〕。しかし、カメの開甲手術は侵襲が大きく、体力がない、腎不全や痛風などの合併症を持っていると、麻酔から覚醒しなかったり、術後に死亡します〔Bouts et al.2002〕。近年は大腿前窩を切開してアプローチする、カメへの負担を減らした術式も報告されています。
なお、総排泄腔に移動した結石は、総排泄孔から結石が確認できますので、孔から結石を破砕して取り出すことができます。この方法は麻酔なし、あるいは鎮静のみでも処置ができるため、体力がなく合併症を持っている個体には適しています。
予防
リクガメやグリーンイグアナは草食性なので、野草を中心とした植物食を心がけて下さい。リクガメ用やイグアナ用ペレットは尿酸の成分が多い可能性があるため避けましょう。いずれにせよ水を飲む環境をつくり、水分摂取を目的としてキュウリやレタスなどの水分が多い野菜を多く与えるのも一方法です。温浴の回数や時間も増やし、尿酸が膀胱内で沈殿しないように、毎日しっかり歩かせて運動もさせて下さい。
参考文献
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