【病気】水ガメのシェルロット

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シェルロットとは

シェルロット(Shell rot)とは甲羅の潰瘍という意味で、角質の麟板と骨の骨板という二重構造をしているカメの甲羅の、浅い麟板まで腐る場合から、深い骨板までの腐る場合もあります。腐った甲羅は窪みやクレーターのような穴が開いたりします。

原因と発生機序

カメの甲羅の損傷と感染の2つが主な原因です。

損傷とは単純な外傷、ひび割れ、穿刺などで、水槽にぶつけた、高い所から落ちた、犬にかまれたなどの理由です。水槽内の角のある石などにぶつけることが最も多い原因と言われています。健康なカメならば多少の甲羅の傷であれば、窪みは残りますが、そのまま感染など起こらずに治ります。

カメのシェルロット

感染は細菌、真菌(水カビ病)などです。シトロバクター菌(Citrobacter spp.)やエロモナス菌(Aeromonas spp.) 、いわゆる水の中の常在菌が有名ですが〔Mader 2006〕、他にも色々な種類の細菌が報告されています。単に感染したり、あるいは損傷した部分の甲羅から感染が始まることもあります。甲羅内の組織に細菌や真菌が感染して広がり、甲羅が腐食します。

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代謝性骨疾患で甲羅が軟らかいカメでは腐食しやすい状態になっています。感染を受けることを考えると、水温が低い、栄養のアンバランス(ビタミンA欠乏症)などカメの免疫が低下していることも問題要因となります。

カメのシェルロット

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症状

軽いシェルロットは麟板のみがスポット的に変色しているだけです。甲羅が一部だけ白色に変色しているだけの病変もあり、これは浸軟と呼ばれ、麟板のケラチンが損傷して水分を大量に吸収して白色にふやけた状態になっているので、感染がなければ深刻な状態ではありません。その下の新しい甲羅が成長して、古い壊死した部分が剥がれたら、元に戻ります。

カメのシェルロット

窪みには緑色や茶褐色のカスのようなものがたまり、カスの下に出血しているようであれば、それは炎症が現在も進行しているからです。

腐食が進行すると深い骨板にまで広がって、窪みがクレーターのように大きくなって穴が開いたり、悪臭もします。甲羅の腐食が深いほど、例え治療しても回復するのに何年もかかり、窪みや穴はそのままの形で残ります。

重度の場合には菌が血液を介して内臓にまで及ぶこともあり、SCUD(Septicemic cutaneous ulcerative disease:敗血症性皮膚潰瘍性疾患)と呼ばれる敗血症の状態になります。特にエロモナス菌による感染を受けると、肝臓、肺、腎臓、心臓にまで波及し、食欲や活動性も低下し、敗血症を起こして死に至ります〔Wimalasena et al.1994, Pasquale et al.1994, Chen et al.2013, Kaplan 1957,Martinez-Jimenez 2007〕。

カメのシェルロット

治療

腐食した甲羅組織を綺麗に除去して下さい。甲羅の窪みのカスを水洗して奇麗にし、細かい毛の歯ブラシを使用して、甲羅を軽くこすっても構いません。患部をの消毒は、過酸化水素やポビドーネ液などを使用します。麟板が剥がれかけている場合は取り除いて下さい。消毒後は甲羅を十分に乾燥させます。甲羅の腐食が停止し、再生具合を観察して下さい。患部の窪みが浅い場合は半年くらいで目立たなくなり、深い場合は数年を要します。シェロットが疑わしい場合はケージの消毒は下記のマイクロシンソリューションを使用して下さい。

予防

水槽内を清潔で安全に保つことが最善の予防になります。水槽内の大きさとレイアウトを確認し、カメの甲羅を傷つけるような石などを避け、しっかりと水換えをして下さい。健康な水ガメは細菌や真菌(水カビ病)感染を受けることはありません。多くは栄養のバランスが悪い(ビタミンA欠乏症)、陸場で甲羅を殺菌することができない、紫外線不足による甲羅の変形(代謝性骨疾患)などが起こっていることで感染を受けやすくなります。水槽の大きさやレイアウトをよく考え、栄養のバランスの取れた餌を与え、紫外線ライトの設置あるいは甲羅干しをしましょう。

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ポイントはコレ!

・カメの甲羅が腐食することをシェル・ロットと言う
・水ガメに好発
・原因は甲羅の損傷と感染
・腐食の深さは様々で早期に対応するべき
・細菌が甲羅から体内に入ると敗血症が起きてSCUDになる
・自宅でも対応できる

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参考文献

  • Chen J,Zhu N,Kong L.Zhongyang H.First case of soft shell disease in Chinese soft-shelled turtle (Trionyx sinens) associated with Aeromonas sobria–A.veronii complex.Aquaculture:406‐407.62‐67.2013
  • Kaplan HM.Septicemic, cutaneous ulcerative disease of turtles.Proc.Animal Care Panel7.273‐277.1957
  • Mader D.Reptile Medicine and Surgery 2nd ed.Elsevier Saunders.2006
  • Martinez-Jimenez D and Hernandez-Divers SJ.Emergency care of reptiles.Veterinary Clinics:Exotic Animal Practice; 10(2):557‐585.2007
  • Pasquale V,Baloda SB,Dumontet S.Krovacek K.An outbreak of Aeromonas hydrophila infection in turtles (Pseudemis scrtipta).Appl.Environ.Microbiol60:1678‐1680.1994
  • Wimalasena SHMP,Shin GW,Hossain S,Heo GJ.Potential enterotoxicity and antimicrobial resistance pattern of Aeromonas species isolated from pet turtles and their environment.Appl Environ Microbiol60(5):1678‐1680.1994

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。