カメの代謝性骨疾患(MBD)・・・甲羅が変形していない?

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甲羅の変形は代謝性骨疾患!

甲羅も骨からできてるので、その骨が変形するとカメの甲羅が変形します。爬虫類の骨やカメの甲羅の変形は一般的に多く見られ、爬虫類においても、哺乳類で使用さてている病態である栄養性二次性上皮小体機能亢進症、腎性二次性上皮小体機能亢進症、骨軟化症やクル病、骨粗鬆症などの病名が使われています。しかし爬虫類においての定義が不明確であったり、発生が複雑であるため、これらを全てまとめて 代謝性骨疾患(Metabolic Bone Disease:MBD) と呼ばれています。また、おおまかな定義として、成長期に起こる骨疾患をクル病、成体では骨軟化症、老体では骨粗鬆症と呼ぶこともありますが、総称でMBDという言葉を使います。

MBDの原因は?

MBD は骨や甲羅の形成に必要なカルシウムの不足が大きな原因ですが、リンやビタミンDなどの他の栄養素、紫外線の照射などのカルシウム吸収に関わる要因の欠如、そして腎不全などが発生に深く関与します〔Klaphake 2010〕。

  • 栄養のアンバランス
  • 紫外線不足
  • 腎不全

栄養のアンバランス

カルシウムも単に沢山与えればよいというものでなく、理想的なカルシウムとリンの比率(Ca:P)であって初めてカルシウムが体内に吸収されます。水ガメではCa:Pは 1.5~2:1 〔Scott1996〕、リクガメでは4:1が理想とされ、丈夫な甲羅を持つリクガメの方がカルシウムの要求比率が高いです〔Highfield1994〕。

主食となる餌の栄養のバランスが悪いと、その比率が逆転している場合も多いです。水ガメではCa:P のバランスが悪いエビ、リクガメではレタスなどの淡色野菜などを主食としていることが問題となります。したがって、リクガメの餌にはカルシウム剤を添加することが定説のように行われています。

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紫外線不足

昼行性のカメでは紫外線ライトや甲羅干しをしていない飼育環境も大きな原因になります。ビタミン D は、カルシウムの吸収を促すビタミンで、エサからも吸収されますが、紫外線を浴びて体内で活性化されます。なお夜行性のカメではビタミン D合成に紫外線の照射が不要になります。水深深い所に生息するドロガメやヌマガメでは紫外線ライトは強いものは不要なのでしょう。

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腎不全

腎臓の機能が低下する(腎不全)とビタミン D の働きが悪くなり、カルシウム吸収されずにいると、血液中のカルシウムが低下します。また、尿へのリンの排泄が低下するため、血液中のリンが上昇して Ca:P のバランスが悪くなります。慢性の腎不全では、血液中のカルシウムとリの異常を調節しようとして、パラソルモン(Parathyroid hormone:PTH)というホルモンが増加します。腎不全に起因するこの病態を腎性二次性上皮小体機能亢進症、上述した Ca:P のバランスが悪いエサを与えられて PTH が増加することを栄養性二次性上皮機能亢進症と呼ばれます。

カメのMBDの症状

カメの甲羅は骨で構成されているので異常が発見されやすいです。成長不良、そして甲羅が軟らかくなったり、水ガメでは甲羅が扁平になり、いびつな形になります。

水ガメMBD

水ガメでは体の成長に甲羅の成長が伴わないため、頭や手足が甲羅内に入らない体形になります。

リクガメでは甲羅の縁が添ってきたり、扁平することが多いです。

ホシガメやヒョウモンガメではピラミッドのように山形に変形することがあります。

水ガメやリクガメ問わず、甲羅は指で押すと革靴のように柔らかくなります。

水ガメMBD

顎の骨も変形すると嘴が長くなり、不正咬合が見られます。

甲板や甲羅の変形により、外層の麟板が上手く脱皮できなくなり、甲羅の脱皮不全も起こります。手足の骨格の異常に伴い、歩行困難やうまく泳げなくなることがあります。

低カルシウム血症とは?

カルシウムはまた、筋肉の収縮などにも関与しますので、血液中のカルシウムレベルが低くなると(低カルシウム血症)、手足の筋肉のケイレン(振戦)や胃腸の動きの停滞(消化管うっ滞)も起こし、食欲と活動性の低下などが見られます。

予防は?

適切な餌と照明を管理することで十分に予防できます。またカメが病気でカルシウムを吸収できないような状態や腎不全などが起こることでMBDにもなり得ます。飼育管理と日頃の健康管理が重要になります。

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参考文献
■Highfield AC.Tortoise Trust Guide to Tortoises and Turtles.Carapace Press 1994
■Klaphake E.A fresh look at metabolic bone diseases in reptiles and amphibians.Vet Clin North Am Exot Anim Pract13(3).375-92.2010
■Scott PW.Nutritional Diseases in Reptile Medicine and Surgery. BVZS Proceedings 1996

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。