鳥の盲腸

鳥の腸

腸管は哺乳類と比べて発達しておらず、一般的に短いです。小腸には十二指腸と空回腸があり 、大腸へは肉眼的には移行部が不明で、細い管腔構造でつながっているだけです。組織的にも実際の大腸は特に短く、体重を軽く維持できる飛翔適応の結果と推測されています。なお、飛翔しない鳥類では、大腸が長く発達したり、盲腸を備えています。比較的短い腸管の代償として、消化能力は非常に高く、このために鳥類は摂餌回数が多いです〔佐子田ら 2015〕。膵臓は十二指腸係蹄に位置し、鳥類の膵臓は脂肪内に含まれた離散的な小葉構造をしています。

盲腸

鳥類では消化管に盲腸のある種と無い種があり、飛翔しない、あるいは植物を多く摂取するようなニワトリ、ウズラ、アヒルなどの鳥では発達し、微生物そうにより植物繊維が発酵・消化されます。オウムやインコなどは盲腸を欠き、またハチドリなどでは痕跡が残っている程度です〔黒田1962,McLelland 1989,佐子田ら 2015〕。一般的に盲腸は回腸の尾側に位置し、基本的には2つの袋で構成され、単純な盲端管をしています。鳥種によって組織学的な相異も確認され、小腸に類似した盲腸、粘液腺が豊富に発達した盲腸、多数のリンパ組織を伴った盲腸などが見られます〔Naik 1962〕。盲腸の基本的な機能は、繊維質の発酵、および水や窒素化合物の利用と吸収です〔McLelland 1989〕。盲腸の開口部では絨毛のかみ合う網目がフィルターとして機能し、大きな粒子を排除し、液体と微粒子のみを分離されて流入します〔Duke 1986〕。鶏では盲腸内に一時滞留した内容物が盲腸糞として1日数回排泄されることが有名で、外観状は軟便で臭気が強いため、異常と間違えやすいので注意して下さい〔安川ら 1964〕。また、鶏の盲腸基部には、リンパ球の集族巣が存在し、盲腸扁桃(Caecal tonsils)と呼ばれるリンパ組織があります〔Payne 1971〕。なお、ハト類は穀食性であるにも拘わらず、盲腸は極めて小さい、あるいは盲腸を欠く種類もいます〔Farner 1960〕。しかしながら、盲腸のリンパ組織がよく発達し、扁桃としての意義がニワトリよりも大きいと考えられています〔佐藤ら.1985〕。

参考文献
■Farner DS.Biology and Comparative Physiology of Birds Vol.I.Marshall J eds.Academic Press.New York and London:411-467.1960
■Mclelland J.Anatomy of the avian cecum.J Exp Zool Suppl3:2-19.1989
■Naik DR.A study of the intestinal caeca of some Indian birds. M.Sc. thesis,Banaras Hindu University.Varanasi.India.1962
■Duke GE.Alimentary canal: anatomy,regulation of feeding, and motility.P269-288 in Avian physiology.Sturkie PD ed.Springer-Verlag.New York.1986
■McLelland J.Anatomy of the avian cecum.J Exp Zool Suppl3:2-9.1989
■Payne LN.Physiology and Biochemistry of Domestic Fowls, Vol. II.BELL J,FREEMAN BM eds.Academic Press.New York and London: 985-1037.1971
■黒田長久.動物系統分類学10(上)脊椎動物(血)鳥類(内田亨監修).中山書店.東京.1962
■佐藤孝二,雨宮陽子,甲斐蔵.ハト(Columba livia var. domestica)盲腸の形態と成長に伴う発達.日本家禽学会誌22(6):289-296.1985
■佐子田嘉明,祐森誠司,石橋晃.飼鳥の栄養.ペット栄養学会誌18(1) :p29-39.2015
■安川正敏他.ニワトリの盲腸内消化に関する研究1.鹿児島大学農学部学術報告15.鹿児島大学農学部編:p67-73:1964

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。