【病気】ウサギの熱中症の解説と予防/お薦め保冷商品

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発生

ウサギは熱と日射に敏感で、熱中症に罹患しやすい動物です。野生のヨーロッパウサギは地下で多くの時間を過ごし、夜行性および薄明薄暮の生活スタイルからも高温の時間帯には活動しません。巣穴内の環境条件はかなり一定で、温度は15〜20°C、湿度は70〜90%の範囲と言われ、 季節的な天候の変化程度ならばウサギに影響を与えないようです〔Fayez et al.1994〕。 これは季節的変化に対する被毛密度の適応による部分もあります。冬は被毛が密に生えて毛皮が厚くなり、夏は薄くまばらになります。

原因

ウサギの熱中症は気温が突然変化したり、気温が28°Cより高い場合、例えば、暑い車での輸送中、日当たりの良い環境(日当たりの良い庭にケージに収納された状態で放置)、夏場の室温を下げ忘れた環境で発生します。 温度が39°Cを超えると、これらの冷却メカニズムはウサギでは対応できず、熱中症を起こします〔Hagen et al.1963〕。外気温に対する成体の熱ストレスは、高温、湿度、輻射熱、気流速度などのさまざまな要因の相互作用によって発生します。ウサギの正常な体温は38.5〜39.5℃で、個体差は0.5〜1.2℃になります。ウサギの最適環境温度は18〜25℃、湿度は50〜60%で、外気温が30℃を超えると熱ストレスが発生し、温度が35℃を超えるとウサギは体温を調節できず、熱中症の症状を引き起こします〔Nielsen et al.2020,Li CY et al.2016〕。基本的に暑さに弱く、寒さに強い動物です。ウサギの体温は人よりかなり高く、38~39℃と言われています。外気温が30.2℃以上になるとストレスを感じ〔Besch et al.1991〕、体温が40.5℃以上になると神経症状が起こり、熱中症になるという報告もあります〔Gentz et al.1997〕。

ウサギの体温調整

ウサギは放熱作用のある汗腺を持たず、毛皮も蜜であるため、熱中症に罹患しやすい動物です〔Marai et al.2007〕。しかし、代替的な高温に適応するためのいくつかの特徴を備えています〔Caputa et al.1976,Cheeke et al.1982,Fayez et al.1994,Johnson 1980,Shafie et al.1982〕。 副鼻腔には多数の動静脈吻合で満たされ、多数の小さな血管を介して体幹部からきた温かい血液が鼻腔内の空気で冷やされて脳に向かうことで,脳を急激な温度上昇から守るとともに冷却する機構範があります〔Bugge 1968,Godynicki 1975〕。このシステムは中型および大型ウサギの品種では効率的に機能しますが、小型種は短頭種も多いこともあり、効率的に機能しません。 また、呼吸数の増加により、水分蒸発や伝導による体熱放散を増大させ、体温の低下を図ります〔Jimoh et al.2016〕。しかし、犬のようなパンティングによって、口の中の水分を蒸発させて気化熱を作り、体内の熱を放出することはウサギでは見られません。代わりにウサギ特異的な大きな耳は体温を調節するのに役立ちます。 耳介の血管には血管拡張による放熱と動静脈吻合の対流で熱を逃がす構造をしており〔Morris et al.2005〕、耳介を伸ばして体から遠くに広げ、表面を周囲にさらします〔Nielsen et al.2020,Chiericato et al.1992〕。 外気温がウサギには暖かすぎるが、それでもウサギの体温(39.5°C)を下回ると、対流熱伝達による血液の冷却、放射線、蒸発が可能になり、耳を直立させ、ゆっくりと前後に動かします。脳の基部に位置する動脈の吻合系は、暖かい血液を含む内頸動脈と、上気道の粘膜組織を通過中に冷却された血液を排出する基底静脈洞との間の伝導によって熱の伝達を可能にします。 多くの肉食動物や反芻動物とは異なり、上顎動脈はウサギの血液の冷却に関与しません。

一部の種の野生のウサギは、より暑い地域や寒い地域で生存するためのさらなる適応があると言われています〔Stevenson 1986〕。 これは耳介の大きさが最も有力で、 涼しい地域や山岳地帯に住むウサギ(例:ユキウサギ、ホッキョクウサギ、カンジキウサギなど)は小さな耳ですが、一方、砂漠地帯に生息するウサギ(オグロジャックウサギ、アンテロープジャックウサギ、ケープノウサギなど)は耳が大きいです。つまり、中型および大方種の耳の大きさと形態は、その熱放散機能に対応しています。しかし、小型種や垂れ耳ウサギでは、耳を小さく、または下垂させて作成された品種であるため、その結果、耳での冷却機能は非効率的なため、これらのウサギは熱中症をを発症するリスクがあります。

症状

慢性的な軽度の症状では、体重減少、採食量低下ならびに水分摂取量の増加、また繁殖能力の低下が見られます。急激な体温上昇による症状では、最初は頻呼吸頻呼吸および頻脈が起こり、 漿液性の鼻分泌を伴います。

ウサギ

重篤になると、脳浮腫、頭蓋内圧亢進、血圧の低下、脳灌流圧の低下も起こり〔Shih et al.1984〕、意識が無くなります。

ウサギ

最後は血便や血尿が見られて、痙攣起こり死亡します。

治療

熱中症は医療上の緊急事態です。 影響を受けたウサギは、穏やかで涼しく風通しの良い部屋に置かれなければなりません。 ぬるま湯で耳の定期的な加湿は、周囲の環境が暖かいときに体温を調節するのに役立ちます。 タオル缶に包まれた氷水のボトルや湿ったタオルをウサギに置いて体温を下げます。 この場合、低体温につながる可能性があるため、体温が急速に低下しないようにする必要があります。病院では生理食塩水の静脈点滴が必要で、脳浮腫や頭蓋内圧亢進の対応としてグリセロールが投与されます〔Shih et al.1984〕。

予防

飼育温度を適切に管理することはもちろんです。夏はエアコンが理想です。日中は25~26℃位に設定して下さい。ウサギがいるケージは床の上なので、冷たい空気は下に移動しますので、私たち人が感じる温度よりもやや低くなります。エアコンの風はウサギに当たらないようにして下さい。風向きは上に行くように調整しましょう。夏はケージを直射日光が当たる所や閉めきった部屋に置くと、すぐに体温が高くなってしまいますので、部屋の中の温度を温度計で観察し、涼しい場所に置いてあげて下さい。エアコンは電気代金がかさむので、部屋の暖かい空気を送風機やサーキュレーターで流すことでも、温度は下がります。部屋の状況やウサギのケージの位置を考えて設置してみましょう。朝や夜は温度が下がる時は不要かもしれません。

ハムスタークーラー

ペット用の小型ファン

ウサギだけの留守番の時には、停電が起きてエアコンが止まった場合に備えて、保冷剤やその他の保冷アイテムも用意しておきましょう。簡易的に冷やすならば、保冷剤、冷却のための石、陶器、金属などの床石などがあります。

金属板タイプ

サンコー SANKO 涼感プレート M

アルミ製のボードで冷却と放熱効果の高いエアースルー構造です。汚れの付きにくいアルマイト加工で、すべり止めパッドも付いています。

金属タイプ

ハイペット ひや~っと気分L型固定式NEO 小動物用

固定式のL型でお腹だけでなく背中もひんやりです。ネジで固定するタイプなので、ウサギが投げ飛ばすようなイタズラもできません。

布製マットタイプ

ミニマルランド 接触冷感うさちゃんのひんやりマット

S
M

触った瞬間ひんやりクール。接触冷感生地を使用したうさぎ用マット。

ケージの中に保冷剤をケースに入れて置いてあげるだけでも温度は多少下がります。またゲージの上に凍らせたペットボトルを置くのも良いかもしれません。ペットボトルの水滴が垂れるので、タオルなどでくるむとよいです。

テラコッタの保冷剤

サンコー ひんやりテラコッタ

凍らせたペットボトルを中に入れてひんやり感を楽しむ、テラコッタ製のカバーです。

また、十分な飲料水を供給するとウサギの熱中症を緩和できることも示されています。冷たい飲水を与え、電解質飲料を使用することでも、熱中症を軽減できます〔Marai et al.2010〕。夏だけでも電解質飲料飲ませておくとよいかもしれません。

熱中症対策のペット向け電解質飲料

ハイペット アクアコール 10本

熱中症時の電解質

暑熱ストレスに反応して呼吸数が劇的に増加すると、過剰なCO2が排出され、ウサギに深刻な酸塩基平衡の乱れを引き起こします〔Staten1988〕。そのため、ウサギの餌や飲水に炭酸水素ナトリウム (NaHCO3)、塩化カリウム (KCl)、炭酸水素カリウム (KHCO3)、塩化アンモニウム (NH4Cl) を適切に添加する熱ストレス下にあるウサギの酸塩基平衡を回復する上で重要な役割を果たします。NaHCO3は一種の電解質添加剤および酸塩基調節剤で、粘液を溶解し、胃を活性化し、酸を抑制し、食欲を増進する機能を備えており〔Ansari et al.2017,Anoh et al.2022〕、これは血液や組織の主な緩衝物質として働いて呼吸器系アルカローシスを減らし、熱ストレスに抵抗する能力を改善します〔Anoh et al.2016〕。Zhouによると、飲料水に0.1〜0.2%のNaHCO3を追加するとストレスによる損失を減らすことができます〔Zhou 1994〕。KClは細胞内浸透圧と酸塩基平衡を維持します〔Zhu 2010〕。ウサギでは副腎皮質刺激ホルモンの分泌が増加し、それによって糸球体によるカリウムの排泄が促進され、血中カリウム濃度が低下します〔Besouw et al.2019,Palmer 2015〕。Henらの報告では、飲料水に0.3〜0.5%のKClを補給すると、熱ストレスが緩和され、カリウム損失が補充され、血中カリウム濃度が維持されることが示されています〔Hen et al.2004〕。 KHCO3は、血中カリウム濃度を維持し、熱ストレスによって引き起こされるHCO3濃度を緩和するために使用できます〔Anoh et al.2016〕。Songらは、KHCO3を食餌に2.5%を含めると、熱ストレスを受けたウサギの生産能力と血液生化学指標が改善されたことが観察されています〔Song et al.2006〕。NH4Clは、熱ストレスによって引き起こされる高い血液pH値を回復し、酸塩基バランスを調整してウサギの呼吸性アルカローシスを防ぐことも報告されています〔Li et al.2003,Zhou et al.2008〕。

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この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。