ウサギの皮膚糸状菌症〔Ver.3〕~人にもうつるので注意!

皮膚糸状菌症とは水虫のことね!

皮膚の角質や毛を侵すカビのことで、糸状に長い形をしているので糸状菌(しじょうきん)と言います。ウサギの皮膚糸状菌はいくつかの種類がおり、 Trichophyton spp.(T.mentagrophytes、M.gupseum)、Microsporum spp.(M.gupseumM.canis)等によります。ウサギでは主にT.mentagrophytesが最も多く検出されます〔Hillyer 1997〕。

糸状菌

糸状菌の病原性は弱いのですが、環境要因や栄養的要因、ストレスなどの免疫低下が発症要因となり〔Franklin et al. 1991〕、ウサギでは特に幼体に見られます。まだ年齢が若く皮膚の免疫が弱いのでしょう。

どんな症状なの?

皮膚病は見られずに不顕性のキャリアにもなりやすいです〔Vangeel et al. 2000〕。他の動物や人へもうつる人獣共通感染症であります。ウサギでは鼻周囲、耳介、手足の端や指などに皮膚病が見られます。

ウサギ真菌

初期は限局的な赤みや脱毛、フケが見られます。

ウサギ真菌

ウサギ真菌

患部にカサブタが作られて円形状に脱毛して、次々と広がる病変は人でも有名でリングワームとも呼ばれています。しかし、ウサギでは多くは見られません。

ウサギリングワーム

毛づくろいによって次第に病変が全身に広がります。一般的にはかゆみもありませんが、時にカビが毛穴に侵入し、皮膚の深い層にまで広がって、炎症を引き起こすことがあります

ウサギ真菌

検査は?

検査は毛やフケを顕微鏡で菌体を確認し、確定診断は真菌の培養検査を行います。

治療は水虫の薬なの?

人の水虫の薬も効果ありますが、ウサギは体に塗ると舐めてしまいます。治療は基本的に抗真菌剤の内服薬を投与します。カビは皮膚の角質と毛に感染しているので、患部の毛を刈った方が治りが早いです。ウサギのいるケージにもカビは残っているため、ケージなどの消毒も必要となります。

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ウサギのカビが人にもうつる

ウサギとの接触によって、人に皮膚糸状菌が感染するケースが多いです。屋内での飼育が増え、人と接触する機会が増加していることも一因でしょう。ウサギより感染したT. mentagrophytes var. mentagrophytes (有性世代:Arthroderma vanbreusegemii)による体部白癬、ケルスス禿瘡〔志水ら 1988・飯塚ら 1997〕などが報告されています。感染源であるウサギでは軽症あるいは無症状であるのに対し〔比留間ら 1987・長谷川 1997〕、人では激しい炎症が見られます。

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参考文献
■Franklin CL,Gibson SV,Caffrey CJ,Wagner JE,Steffen EK.Treatment of Trichophyton mentagrophytes infection in rabbits. Journal of the American Veterinary Association 198(9).1625-1630.1991
■Hillyer EV.Dermatologic disease.Rabbit.In Ferrets,Rabbits,and Rodents Clinical Medicine and Surgery. Hillyer EV, Quesenberry KE, eds. WB Saunders Company.Philadelphia.p212-219.1997
■Vangeel I,Pasmans F,Vanrobaeys M,De Herdt P,Haesebrouck F.Prevalence of dermatophytes in asymptomatic guinea pigs and rabbits. Veterinary Record 146. 440-441. 2000
■飯塚崇志,二宮淳也,浜口太造,長瀬真智子,滝内石夫.兎から感染したと思われるTrichophyton mentagrophytesによる白癬の2例.日本医真菌学会雑誌38. 247-252.1997
■長谷川篤彦.真菌症の問題点.LABIO 21(14).社団法人日本実験動物協会.p9-12.2003
■比留間政太郎,番場圭介,野口博光,大西善博,川田暁,石橋明.家畜飼育者にみられたTrichophyton rerrucosum感染症. 皮膚病診療 17. 739-742. 1995
■志水達也,比留間政太郎,久木田淳.虫刺様皮疹が全身に多発したMicrosporum canisによる体部白癬の家族内発生例.臨皮42.483-488.1988

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。