目の中の膿?~専門獣医師が解説するウサギの虹彩膿瘍

どんな病気?

虹彩、毛様体、脈絡膜から構成される眼球の中間層にある血管が豊富な部分がぶどう膜です。ぶどう膜炎に限った特異的な目の症状は少なく、全体的な目の異常として現れます。多くは全身の感染症や体の病気が原因で免疫が関与して発生します。ウサギではパスツレラ菌(Pasteurella multocida)の細菌とエンセファリトゾーン(微胞子虫:Encephalitozoon cuniculi)の寄生虫の感染でぶどう膜炎が起こることが有名です。特にエンセファリトゾーンによる感染が問題となり、虹彩の充血や血管の新生が見られる虹彩炎が起こり、次第に虹彩膿瘍が形成されます。その膿が目の中の膿として発見されます。

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症状は?

エンセファリトゾーンは目に見えないくらいの小さい寄生虫で、脳、腎臓、目の水晶体に寄生します。罹患したウサギの多くは無症状ですが、発症すると斜頸などの神経疾患、またはぶどう膜炎が起こることが知られています。ほとんどの目の症状は若いウサギで発生し〔Wolfer et al.1993〕。ぶどう膜炎の初期ではほどんど症状が見られず、虹彩膿瘍が大きくなっても末期まで無症状であることも多いです。

最初は・・・

最初は虹彩にわずかな白い点があるくらいで、血管も目立ちません。

ウサギ虹彩膿瘍

次第に・・・

膿瘍は明確になり、血管の増生もひどくなっていきます。

ウサギ虹彩膿瘍

最後は・・・

虹彩炎の癒着により白内障も併発し、虹彩膿瘍が大きくなると緑内障も起こります。

 

診断は?

エンセファリトゾーンの診断は血液検査での抗体測定で判断します。ぶどう膜炎の治療は抗炎症剤の点眼を行います。

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治療は?

抗炎症剤の点眼薬を投与しますが、2~3か月、いやそれ以上の長期で治療効果をみていきます。その間に白内障や緑内障になるウサギもいます。緑内障になり眼球拡張が進行した場合は眼球を外科的に摘出するか(眼球摘出手術)、義眼を挿入します(義眼挿入手術)。エンセファリトゾーンが検査で陽性であったウサギには、駆虫薬の内服投与を行います。下の写真は膿瘍は無くなりましたが、虹彩の変形と白内障は後遺症として残っています。

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参考文献

■Wolfer J,Grahn B,Wilcock B,Percy D.Phacoclastic uveitis in the rabbit.Prog Vet Comp Ophthalmol3.92-97.1993

この記事を書いた人

霍野 晋吉

霍野 晋吉

犬猫以外のペットドクター

1968年 茨城県生まれ、東京都在住、ふたご座、B型

犬猫以外のペットであるウサギやカメなどの専門獣医師。開業獣医師以外にも、獣医大学や動物看護士専門学校での非常勤講師、セミナーや講演、企業顧問、雑誌や書籍での執筆なども行っている。エキゾチックアニマルと呼ばれるペットの医学情報を発信し、これらの動物の福祉向上を願っている。

「ペットは犬や猫だけでなく、全ての動物がきちんとした診察を受けられるために、獣医学教育と動物病院の体制作りが必要である。人と動物が共生ができる幸せな社会を作りたい・・・」との信念で、日々奔走中。