呼吸器感染症は主に細菌感染によるもの多く、他にも腫瘍や誤嚥が原因になります。細菌はPasteurella multocida(パスツレラ感染症)〔Marlier et al.2000〕,Bordetella bronchiseptica(ボルデテラ感染症)〔Deeb et al.1990,Marlier et al.2000〕,Escherichia coli〔Marlier et al.2000〕,Pseudomonas aeruginosa〔Marlier et al.2000〕などが分離されます。ボルデテラの感染はパスツレラ感染症と併発することが多く、B.bronchisepticaは顕著な病状を示しませんが、パスツレラ菌の増殖や発病に大きく関与します〔Glavits et al.1990,Glorioso et al.1982,Corbeil et al.1983〕。マイコプラズマやクラミジアおよび粘液種ウイルス感染〔Marlier et al.2000〕などの報告もありますが、一般的ではありません。肺炎の非感染性原因は、換気の悪い環境やアンモニアがこもることで、肺炎を増悪させます。ウサギの尿のアンモニアは特に刺激性があり、換気の悪い場所では大きな問題になります。ウサギの原発性肺腫瘍は稀ですが、胸腺腫あるいはリンパ腫の可能性があります。より一般的なのは子宮腺癌や乳腺癌の肺転移がおこります。また、時に心不全での肺水腫が肺炎と同じく呼吸困難を起こします。老体のウサギでは心不全は珍しくないので、鑑別することは重要です。
気管支炎や肺炎では上部気道炎も併発し、鼻汁やくしゃみも起こることがありますので、スナッフルの症状も併発して見られることがあります。特に肺炎では、病気の初期兆候を示さず、明確な症状が示された場合は、すでにかなり進行していることも珍しくありません。肺炎が進行して、呼吸困難以外に、食欲不振、痩削や体重減少が見られて、初めて異常に気付くことも珍しくはありません。特に免疫力が低下した老体や他の疾患を患っていると、症状が重篤化し、呼吸困難が起こります。ウサギは胸腔が小さく、呼吸器系は犬や猫ほどの換気予備力がないため、肺炎が進行した呼吸困難が起こると、一気に一般状態が悪化します〔Johnson-Delaney et al.2011〕。酸素欠乏が起こることで、チアノーゼが起こり、皮膚や粘膜の蒼白も起こります。なお、ウサギの開口呼吸は特に予後不良の兆候で、死に近づいている可能性があります〔Harcourt-Brown 2002〕。
また、鼻汁が見られるウサギでは、その鼻汁からの微生物検査などで、原因菌を調べることができます。近年は遺伝子(PCR)検査で原因菌を検出することもできうようになりました。肺炎のウサギの血液検査では、炎症があっても異常が見られない場合があります。しかし、近年は炎症を示す血清アミロイドA蛋白(SAA:Serum amyloid A protein )の測定がウサギでも行われ、急性性期蛋白として指標になります。胸腺腫やリンパ腫、心不全の診断には超音波検査が必要になります。
■Corbeil et al.Immunity to pasteurellosis in compromised rabbits. American Journal of Veterinary Research 44.845-850.1983 ■Glavits et al.The pathology of experimental respiratory infection with Pasteurella multocida and Bordetella bronchiseptica in rabbits. Acta Vet Hung 38(3):211-215.1990 ■Glorioso et al.Adhesion of type A Pasteurella multocida to rabbit pharyngeal cells and its possible role in rabbit respiratory tract infections.Infect Immun35:1103-1109.1982 ■Harcourt-Brown F.Textbook of Rabbit Medicine.Reed Educational and Professional Publishing.Oxford.2002 ■Johnson-Delaney C, Orosz SE. Rabbit respiratory system: clinical anatomy, physiology and disease.Veterinary Clinics of North America:Exotic Animal Practice14:257–266.2011 ■Marlier D,Mainil J,Linde A,Vindevogel H.Infectious agents associated with rabbit pneumonia:isolation of amyxomatous myxoma virus strains.Vet J159(2):171-178.2000