ハムスターが下痢は自然に治ってしまう軽度なものから、数日で死に至る重度のものまであります。また一つの原因のこともあれば、複数の原因のこともありますので、素人での状況判断はとても難しいです。ハムスターは下痢で脱水を起こすと、急激に状態が悪化するため、できるだけ早く原因を調べて治療をするべきと言われています。そのことから、ハムスターの下痢を昔からWet tail(ウエットテイル)と呼ばれていますが、これは本来Lawsonia intracellularis(ローソニア・イントラセルラリス)によって引き起こされる増殖性回腸炎によって、尻や尾が水様便で濡れている様子を指していました。しかし、必ずしもL.intracellularisが原因とは限らず、他の細菌や寄生虫、またはエサやストレスなども関与しています〔Barron et al.2007,Motzel et al.1990〕。特にゴールデンハムスターに多発し、 離乳したばかりの幼若個体にウエットテイルは多いです。現在ウェットテイルは、原因は問わずハムスターの腸炎と、その結果として下痢に起因する非特異的な症状の総称として使われています。
水分の多い野菜の多給、澱粉や糖類、脂肪の多い餌などの栄養の不均衡、急な餌の変更などが下痢を起こします。特に葉野菜は90%以上が水分なため、結果的に水分の取り過ぎが原因となりますが、個体によっては下痢を起こさないこともあります。少し多く与えただけで下痢をする場合は、与える野菜を少量にするか、乾燥野菜などにしましょう。高脂肪の餌(おやつやヒマワリの種子)を主食としているハムスターでは、他の原因で下痢を起こした個体よりも、下痢での死亡率が高くなるとという報告もあります(致死率80%:対照群致死率11%)〔Blankenship-Paris et al.1991〕。餌の変更も徐々に行わないと、腸内細菌叢が崩れることで下痢をします。 その他、小屋に貯蔵した餌が腐敗して、それを食べるようなこともあるので、小屋の中に溜め込んだ餌は定期的に取り除くようにしましょう。
上述したL. intracellularis以外にも、Clostridium spp.〔Chang et al.1991〕,Salmonella spp.,Campylobacter jejuni〔Dillehay et al.1994〕,Escherichia coli〔Dillehay et al.1994,Frisk et al.1978,Frisk et al.1981〕,Helicobacter aurati〔Patterson et al.2000〕などが原因菌になります。
ローソニア感染症
Lawsonia intracellular(ローソニア・イントラセルラリス)よる感染症で、腸の粘膜上皮細胞が過形成が起こり、あたかも腫瘍のように腸粘膜が増殖し、腸腺腫症候群、腸腺腫症、増殖性腸炎、増殖性回腸炎、限局性回腸炎とも呼ばれています。回腸炎とも呼ばれるように、典型的な病変としては回腸末端部の粘膜肥厚が特徴ですが、実際は回腸末端部にとどまらず、小腸から大腸にかけて広範に認められます。肉眼的に病変が確認できなくても、ミクロの病変が蔓延していることがあります。本菌は多くの動物に感染し、ウマ、ヒツジ、ハムスター、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、フェレット、イヌ、ブルーフォックス、オジロジカ、ダチョウ、エミュー、アカゲザル、ニホンザルで報告されていますが〔Fiskett 2011,Friedman et al.2008〕、ブタ、ウマ、ヒツジ、シカ、キツネ、ハムスターなどが感受性が高いです。上述したようにハムスターで発生して、下痢を起こした場合はウエットテイルと呼ばれています。感染経路は糞便による水平感染が主ですが、野外からの感染経路として、ネズミ類の関与も考えられています〔Fiskett 2011,Friedman et al.2008〕。本菌の蔓延具合により病状の程度は様々です。腸上皮細胞の過形成が起こる程度だと栄養吸収が悪くなり、成長不良が生じる程度の比較的乏しい症状だけです。下痢も間欠性の軟便から血便まで様々です。L.intracellularは偏性細胞内寄生性であるため、人工培地では培養できません。触診で腹腔内の肥大した腸管を触知し、超音波検査で腸管肥厚像を確認することで発見されることもあります。確定診断はPCR検査がよいでしょう。
腸管が肥厚した超音波像
クロストリジウム・ディフィシル感染症
健常体の腸内に潜在しているClostridium difficile(クロストリジウム・ディフィシル)の異常増殖の結果で生じる大腸炎で、偽膜性大腸炎とも呼ばれています。軽度な下痢から時に致死的な大腸炎まで起こります。C.difficileは産生する毒素によって腹痛などの全身症状も起こり、死に至る場合もあります。なお、C.difficileは2016年にクロストリジウム属(Clostridium spp.)から、クロストリディオイデス属(Clostridioides spp.)に変更され、クロストリディオイデス・ディフィシル腸炎へと呼び変えることがあります(本稿では一般的なクロストリジウム・ディフィシル腸炎として解説します)〔米国感染症学会〕。C.difficileは土壌、干し草、砂などの自然環境やヒト、動物(ウシ、ウマ、イヌ、ネコなど)の腸管に生息しています。楕円の芽胞を形成してバチ状を呈し、酸、アルカリ、好気状態、高温、低栄養状態など過酷な環境でも安定しており、エタノール消毒でも芽胞は死滅しません。C.difficileの増殖は抗生物質の投与等で正常な腸内細菌叢が撹乱されて菌交代症が生ずるために発生すると考えられています〔Rifkin et al.1977,Douce et al.2010〕。通常のハムスターの腸内細菌叢はグラム陰性嫌気性菌が優勢ですが〔Hagan et al.1965, Onderdonk et al.1977〕、クリンダマイシンの投与ではグラム陰性嫌気性菌を減少させ〔Onderdonk et al.1977〕、クロストリジウム菌を増殖させるなど、一部の抗生物質はハムスターへの投与に注意しなければなりません〔Lusk et al.1978〕。クロストリジウム・ディフィシルの病原因子として特に重要なのが全身症状を引き起こす菌毒素で〔Aktories et al.2017,Gerding et al.2014〕、特にtoxin Aとtoxin Bの二つの外毒素がよく知られていますが、産製しない無毒株もあります〔神谷 2010〕。クロストリジウムの選択培地で培養検査を行って診断できますが、PCR検査が便利です。
ティザー病はClostridium piliforme (クロストリジウム・ピリフォルメ)に起因する感染症で、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミなどの実験動物に発生し、腸炎と肝炎を起こることで有名です。イヌ、ネコ、サル、ウマなどでの感染例も報告され、各動物種由来の C. piliforme 株が宿主特異的にあると考えられていますが、どの程度厳密かは明確にされていません 〔Franklin et al.1994〕。ティザー菌は細菌学的な分類が不明であったために、過去には Tyzzer’s organism と呼ばれて、その後 Bacillus piliformis と学名がつけられましたが、最終的にClostridium属に変更されています〔Duncan et al.1993〕。本菌は偏性細胞内寄生性で、芽胞と鞭毛を有し、人工培地には発育しないために培養が難しいとされています 〔Riley et al.1990 〕。本菌の栄養型は生体外ではきわめて不安定ですが、芽胞は抵抗性が強く、乾燥状態においても感染性は長期間維持されます。室温で放置された場合は芽胞が 1 年以上も感染力を保持したとの報告があります〔Tyzzer 1917,國田 2016〕。60℃で30分間の熱処理や70%エタノール消毒、4% クロルヘキシジン消毒に対しても芽胞は抵抗性があります〔國田 2016〕。芽胞の消毒には100℃以上の加熱やヨード系消毒薬(1%ヨードホール)、塩素系消毒薬(0.015%次亜塩素酸ナトリウム)等が有効です〔國田 2016〕。感染経路は環境中や感染動物の糞便中に存在する芽胞の経口感染です。ティザー菌の病原性は分離株や宿主動物の違いにより多様ですが、一般的には不顕性感染例が多く、健康体では感染後数週間で宿主体内から菌が排除されます。一方、免疫低下、離乳したての幼体ならびに老体、飼育環境等によるストレス下で飼育されたりしていると発症しやすくなります。症状は下痢を起こし、食欲低下や削痩が見られ、特にスナネズミとハムスターが感受性が高いです〔國田 2016〕。2011年の日本国内の実験動物施設の蔓延状況は、マウスで0%、ラットで0.97%と報告されています〔Hayashimoto et al.2013〕。ペットショップで販売されているマウスでは、日本国内では全調査個体が陰性であったのに対し、アメリカでは16.7%、ドイツでは10.7%が陽性でした〔Dammann et al.2011,Hayashimoto et al.2015,Roble et al.2012〕。ペットのハムスターの保有状況は明らかにはなっていませんが、日本でも実験動物のハムスターにおいて、過去に集団発生の報告がありますので〔曲渕ら1977〕、注意しなければなりません。確定診断はPCR検査を行います。
Campylobacter(カンピロバクター属)は一般的にに動物の腸管、生殖器、口腔などに常在し、十数菌種が知られていますが、C.jejuni,C.coliはヒトの食中毒の原因となります。菌体は桿状で、全体がねじれた螺旋状をしており、顕微鏡下ではS字状に観察されます。芽胞を形成せず、菌体の一端または両端に一本の極鞭毛を持ち、運動性があります。感染経路は菌の経口摂取、あるいは菌に汚染されたエサを口にすることによって感染します。ハムスターにおいてもC.jejuni の感染によって回腸および盲腸炎が起こり、腸炎が見られます〔Humphrey et al.1986〕。
病原性大腸菌症
ハムスターの下痢から病原性大腸菌が分離された報告が多数あります〔Dillehay et al.1994,Frisk et al.1978,Frisk et al.1981〕。しかし、離乳したてのハムスターで好発し、成体では無症状あるいは軽度です〔Frisk et al.1978〕。
ヘリコバクター感染症〔人獣共通感染症???〕
Helicobacter(ヘリコバクター)は、鳥類や様々な哺乳類動物の消化管および胆肝系組織から分離検出されるらせん状の細菌です。同属菌には宿主動物において常在細菌(あるいは日和見感染症菌)や病原性細菌と認識される他,ヒトからも検出され消化管や胆肝系疾患に関与する人獣共通感染症菌と認識される菌種も多く存在しています。ヒトに胃潰瘍を起こすピロリ菌(H.pylori)は有名ですが、他のヘリコバクターの菌種は病原性を含めてよく分かっていないです。マウスなどの実験動物では、 H.hepaticus とH.bilis が有名ですが〔Hayashimoto et al.2013,Pritchett-Corning et al.2009,〕、ハムスターでは胃に生息する常在細菌と考えられているH.auratiが知られ、胃炎を起こすと言われています。同属菌は宿主における主な生息部位の違いから大きく 2 つのタイプに分けられ、主に胃に生息するタイプ(H.pylori,H.aurati,H.baculiformis,H.bizzozeronii,H. felis,H.heilmannii,H.muridarum,H.mustelae,H.salomonis,H.suisなど)と腸に生息するタイプ(H.bilis,H.canis,H.canadensis,H.cinaedi,H.fennelliae,H.ganmani,H.hepaticus,H.macacae,H.mastomyrinus,H.pullorum,H.rodentium,H.typhlonius,H.trogontum)で、下部消化管あるいは肝臓や胆嚢から検出されるものがあります〔山中ら2015〕。ハムスターからもH.auratiの他に腸に生息するタイプのH.cinaedi の他複数の菌種が検出されていますが、これらの菌の病原性について情報は非常に少ないです〔山中ら2015〕。マウスやラットにおいても有名なH.hepaticu,H. bilis以外にも、H.ganmani〔Zhang et al.2005〕,H.rodentium 〔Myles et al.2004〕,H.typhlonius〔Fox et al.1999〕,H.mastomyrinus〔Shen et al.2008〕なども検出され、肝炎や腸炎を起こす報告があります。マウスやハムスターを含めペット動物との密接な接触による人への感染が懸念されています〔Flahou et al.2013,Hayashimoto et al.2015,Ménard et al.2014〕。
ハムスターから検出される蟯虫は、盲腸蟯虫と大腸蟯虫の2種類が知られています。蟯虫は一般的に病原性は低く、実験動物においてのマウスやラットでは、脾臓やリンパ節のリンパ球の増殖、腸管内の水と電解質の移動、非寄生虫性抗原刺激に対する液性免疫の変化、成長の研究への影響、行動の研究においての明らかな活動低下など、動物の免疫・生理・成長・行動などについての実験への影響が報告されています〔Pearson et al.1975,Wagner 1988,Lubcke et al.1992,巌城 1999〕。ペットでは、寄生しても症状は皆無と言ってもよいくらい発現しません。しかし、成長率や活動性へも影響を与える可能性もあるため、駆虫しておいた方が無難です。盲腸蟯虫と大腸蟯虫を鑑別する上での検査方法が異なり、それぞれのライフサイクルならびにプリパテントピリオドを考慮した駆虫をすることが重要になります。
盲腸蟯虫〔非病原性種〕
盲腸に寄生する蟯虫で、マウスはSyphacia obvelata(ネズミ盲腸蟯虫) 、ラットはS.muris(ラット盲腸蟯虫)が有名ですが、ハムスターではS.mesocriceti(ハムスター盲腸蟯虫)が知られています〔佐伯ら1982〕。ゴールデンハムスターからハムスター盲腸蟯虫以外に、S.stroma,S.peromysciの同時寄生の報告もあります〔Hasegawa et al.2008〕。昔の文献や書物ではS.obvelata (ネズミ盲腸蟯虫)がハムスターから検出された記録が多いですが〔Unay et al.1980〕、S.mesocriceti(ハムスター盲腸蟯虫)と形態が類似するため、正確な種の同定であったのか不明です。ハムスター盲腸蟯虫の成体はマウス盲腸蟯虫よりも、頸翼は著明ですが、虫卵の大きさや形状に大きな相違は見られず、虫卵だけでは両者を判断することは難しいです〔佐伯ら1982〕。
ネズミ膀胱毛細線虫(Trichosomoides crassicauda)は本来はラットの泌尿器に寄生する線虫ですが〔Flynn 1973a〕、ハムスターからも検出されています。体長約10mmの成体のメスは、動物の膀胱に寄生しており、膀胱内あるいは膀胱粘膜に埋まって生息しています〔Flynn 1973a,Antonakopoulos et al.1991,Cornish et al.1988〕。オスは解剖学的に退化しており、メスの生殖器内に共生的に暮らしています。メスの排泄された虫卵の経口摂取で感染しし、離乳前に母親から子に、同居動物の尿の口にして感染することで蔓延します。 虫卵は胃の中で孵化し、幼虫は粘膜壁を貫通し、腹腔または血流を通過して肺や他の組織に到達します。 ほとんどの幼虫は腎臓以外の組織にとどまり、出血や肉芽腫を引き起こす可能性があります。腎臓または膀胱に到達したものだけが生き残って成熟します。 ライフサイクルは8〜9週間であるため、ラットでは感染して8〜12週になるまで、虫卵は尿中に排泄されません。症状は明らかではなく、病原性は極めて低いでと言われています〔Flynn 1973a〕。通常、膀胱には平均3匹の成虫が存在し〔Barthold 1996a〕、軽度の尿路上皮過形成を引き起こします〔Zubaidy et al.1981,Antonakopoulos et al.1991〕。腎盂に寄生することもあるが、軽度の腎盂腎炎を起こすかもしれない。しかし、血尿を示すような症状は発現する可能性は低いです。
Giardia muris(ジアルジア・ムリス)は、ラット、マウス、ハムスターなどのげっ歯類に見られる鞭毛虫です〔Levine 1961〕。しかし、最近の研究では、G.muriは人によく寄生するG.duodenalis(ランブル鞭毛虫)の一種である可能性が示唆され〔Sharma et al.1988b〕、人獣共通感染症として注目されています。しかし、ランブル鞭毛虫は分離株によって宿主特異性があるようで、マウスやハムスターから分離されたG.murisはラットに接種しても感染を引き起こしません〔Kunstýr et al.1992〕。栄養体の大きさは7~13×5~10μm、丸みをおびた涙形をしており、4本の鞭毛を有し〔Levine 1961〕、横から見ると腹側に向かってわずかに湾曲しています 。皿が回転するような特徴的な動きをするのが特徴です。十二指腸に寄生し、腸上皮細胞の表面に付着している状態だけなので、多くの場合無症状あるいは成長不良などで経過しますが、他の疾患、あるいは幼体や老体など免疫低下の個体では、寄生により下痢が認められます。離乳期のマウスでは死亡率が高くなり、水様の液体とガスを含む拡張した小腸が見られた報告があります〔Boorman et al.1973,Csizaand Abelseth 1973,Roberts-Thomson et al.1976,Sebesteny 1969〕。老体のハムスターでは、慢性的な下痢と体重減少を示し、腸壁、特に盲腸が肥厚していました〔Barthold 1997〕。ライフサイクル上では栄養体とシストの状態があり、 糞便中のシストは少なくとも1年間感染性を維持します〔Craft 1982〕。
スピロノヌクレウス
Spironucleus muris(スピロノヌクレウス・ムリス)は、マウス、ラット、ハムスター、スナネズミなどのげっ歯類に見られる鞭毛虫です〔Gruber et al.1979〕。栄養体の大きさは7~9×2~3μmで、他の原虫に比べ小型で細長く、動きは早く直線的なのが特徴です。前部に6本、後部に2本の鞭毛を有しています。小腸上部に寄生しますが、多くの場合無症状で経過し、発病すると下痢が認めたられます〔Barthold 1997b〕。しかし、各宿主動物からの分離株によって感受性が異なり、クローン化されたネズミのラットとマウスの間での感染が試みられましたが、ラットからの分離株は、ハムスター、免疫担当マウス、または無胸腺ヌードマウスには感染せず、同様にラットはマウスまたはハムスターからの分離株によって感染をしませんでした〔Schagemann et al.1990〕。ライフサイクル上では栄養体とシストの状態があり、シストは4×7μmの大きさで、特徴的な縞模様があります〔Kunstyr 1977〕。シストは、乾燥(室温で14日間)、凍結(–20°Cで6ヵ月)、pH 2.2で1日間、または0.1%グルタルアルデヒドで1時間耐性があります〔Kunstyr et al.1978〕。
キロマスティックス〔非病原性種〕
Chilomastix bettencourti (キロマスティクス・ベテンコーチ)は、マウス、ラットおよびハムスターなどのげっ歯類に見られる鞭毛虫です。栄養体の大きさは13×8μmで、形態は細長く、4本の鞭毛を有しています〔Kathleen et al.2012〕。鞭毛と核が前端にあり、回転するような動きが特徴です。盲腸ならびに大腸に寄生し、ライフサイクル上では栄養体とシストの状態があり〔Kathleen et al.2012〕、シストの大きさは約15μm×7μmです。
トリコモナス〔非病原性種〕
Tritrichomonas muris(トリトリコモナス・ムリス)は、マウス、ラット、ハムスターおよびスナネズミなどのげっ歯類に見られる鞭毛虫です。栄養体は洋梨状、前部は丸く、後部は尖った形をし、大きさが16~26×10~14μmで、3本の前鞭毛と1本の後鞭毛を有しています〔Wagner 1987〕。波動膜を有するのが特徴的で、体を回転した動きで前進する動きが特徴です。大腸ならびに盲腸に寄生しますが、非病原種なので、感染を伴う肉眼的または病理的異常も見られません〔Hankenson et al.2007〕。新生子のハムスターは親から感染するといわれ、3日齢では感染していませんでしたが、7日目までに感染した報告があります〔Carl et al.1980〕。以前は、Trichomonas cricetusあるいはT.cricetiという名前で呼ばれていたハムスターから検出されたトリコモナスはT.muris(トリコモナス・ムリス)のことです〔Hankenson et al.2007〕。他にもトリコモナスとして、Trichomonas wenyoni(6-16 x 3-6 µm)、Tritrichomonas minuta(4-9 x 2-5 µm)、Tetratrichomonas microti、Pentatrichomonas hominis(8‐20×3‐14)が報告されていますが〔Hankenson et al.2007,Levine 1985〕、正確な種類は分かっていないようです。
T. murisはライフサイクル上で栄養体、偽シスト、シストの3つの形態を持っています〔Seliukaĭte 1977〕。偽シストの構造は、内部に運動性の低い鞭毛虫が含まれていますが、真のシスト壁を欠いているため、偽シストと呼ばれています。過酷な環境に応答して生存メカニズムとしてこの形に変化したすと考えられています〔Martin 2008〕。栄養体は二分裂によって無性生殖し、それらは偽シストを形成し、最終的には脱嚢して運動性のある栄養体になります。シストは存在しないという意見もあります〔Koyama et al.1987〕。伝番は糞口感染で、偽シストまたは栄養体です〔Wagner 1987〕。
オクトミタス〔非病原性種〕
Octomitus intestinalis(オクトミタス・インテスチナリス)は、マウス、ラットおよびハムスターなどのげっ歯類に見られる鞭毛虫です。栄養体は6~10×3~5μmの大きさで、トリコモナスより小さく、動きが早いのが特徴です。卵円形をしており、後端が尖り、左右対称で、6本の前鞭毛、2本の後鞭毛を有します。大腸に寄生します。分類的にジアルジアに近いとも言われています〔Keeling et al.2996〕。
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