チンチラの歯肉過形成

チンチラは、ペットとして人気のある小型哺乳類で、特にその柔らかな毛皮と愛らしい性格から、多くの家庭で飼われています。
しかし、チンチラは一生涯に渡り伸び続ける常生歯という歯を持っているため歯や口腔内の健康管理は非常に重要です。
特に歯肉過形成などの疾患は、食欲不振や口腔内の不快感を引き起こし、食欲不振につながることがあります。

症例概要

患者情報
  • 種別: チンチラ
  • 性別: 雄
  • 年齢: 4歳
  • 飼育環境: 1000×800cmほどの巣箱で室内飼い
  • フード: チンチラ用フード、チモシー、アルファルファ
症状
  • 食欲不振(食欲は依然として低下しており、柔らかいものしか食べられない状況でした)
  • 口をくちゃくちゃしている
  • 涎がでている
診断

詳しい診断のために麻酔下でCT撮影を行うことにしました。
今回の症例は、麻酔は吸入麻酔で導入と維持します。

CT撮影の結果です。

上顎の所見: 左歯根は軽度に伸長と、左右歯冠に軽度スパイク形成を認めます。
   

下顎の所見: :左臼歯の歯根は右側と比較して伸びており、歯根伸長や萌出異常の可能性を疑います。

治療

口腔内を観察後、歯の過長やスパイク形成に対して臼歯/切歯の切削処置を実施しました。
その後食欲の回復があるかどうか、経過をみます。

治療1ヶ月後

以前よりも食欲がでて口をくちゃくちゃする機会も減りました。
このまま一旦治療は終了とし、経過を観察していただきました。

半年後

また涎がでているとのことで再度来院されました。

原因を探る為に、まずは無麻酔下でX線検査を行いました。

上顎の臼歯に間隙が見られ、チンチラの口腔内に発生する良性の腫瘤(エプーリス)を疑いました。
エプーリスは、歯肉の過形成によって形成されることが多い腫瘤です。

治療

まずは現状を把握するために、CT撮影を行いました。

上顎切歯は短くなる傾向にありました。(特に上顎右側)。
ですが、反対に臼歯歯冠おいては全体的に上顎は過長しています。
またX線で見られた上顎の間隙は軟部組織であることから評価は難しいと判断しました。

下顎切歯は過長して認めました。臼歯歯冠おいて、下顎は短絡(左下顎で顕著)しており埋没している可能性がありました。

CT撮影後に引き続き全身麻酔下で過長している歯の研磨と上顎の歯肉切除を行いました。
また切除した上顎の歯肉は病理検査へ提出しました。

歯肉切除から2週間後

病理検査の結果は、歯肉の過形成の所見と一致し非腫瘍性のものでした。
手術から2週間が経ち、感染や再発も無く、食欲も元気も徐々に取り戻し、改善傾向にありました。
また、再発防止のために3ヶ月ごとのCT撮影を予定しており、その結果を基にさらなる治療方針を決定する予定です。
また、飼い主には食事の改善として柔らかいチモシーやラクトフェリンの継続を推奨しています。

まとめ

今後の計画として、定期的なフォローアップのCT検査を通じて、再発を早期に発見し、適切な対策を取ることが重要です。
本症例から、チンチラにおける口腔疾患の管理の重要性と、定期的な健康チェックの必要性を学びました。
引き続き、注意深い観察と適切な管理を行い、チンチラの健康維持に努めることが大切です。

この記事を書いた人

千葉どうぶつ総合病院

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