ウサギの橈尺骨骨折(その3 創外固定法の術後管理)

先回はウサギの創外固定法の詳細を載せました。

具体的には、ネザーランドドワーフのラテちゃん(雌 7か月齢)の橈尺骨骨折を創外固定法で整復したところまで写真と文章を載せました。

詳細はこちらをご確認下さい。

これまでの経緯をレントゲン写真で説明します。

骨折直後のラテちゃんの橈尺骨です。

創外固定法により整復した患部です。

骨折の治療は、骨折の状態に適した整復術式を選択し整復します。

手術が成功したからといって、それで骨折部が確実に癒合できるとは限りません。

患者が行動的であれば、骨折部の固定は場合によっては破たんすることもあります。

結果、骨癒合不全に至り再手術が必要となります。

ウサギの骨の特性は骨密度が低く、脆弱であるため骨折整復後は運動制限が重要なポイントです。

ラテちゃんの飼主様にはその点をご理解いただき、必要最低限の運動で安静を保たれました。

1~2週間ごとに来院して頂き、創外ピンが刺入している箇所の点検と洗浄消毒を丹念に継続させて頂きました。

その実際は以下の通りです。

まずはテープを外して患部を確認します。

創外ピンの周辺をしっかり洗浄消毒した後に、抗生剤の軟膏や皮膚潰瘍・褥瘡治療剤(イサロパン)を塗布します。

最後にスプリントで患肢を保護します。

創外ピンが障害物にあたって患部に振動が及ばないようにパテの周囲をしっかり脱脂綿とテープで巻きます。

このような患部のケアを定期的に行い、経過を観察して行きます。

この術後の管理がラテちゃん本人も、飼主様にもストレスを感じて長く辛い時期だったと思います。

ラテちゃんの場合は術後管理に2か月近くかかりました。

ラテちゃんの術後1か月のレントゲン写真です。

下写真の黄色丸の部分が骨折部位になります。

仮骨が良好に形成されているのが分かります。

術後2ヶ月のレントゲン像です。

骨折部位(写真黄色丸)の仮骨による癒合はほぼ完成の状態になってます。

刺入した創外ピンを骨皮質が取り巻くように仮骨を形成しています。

このステージになると創外ピンが緩み始めますので、早急にピンを抜去することとしました。

創外ピンを抜去する場合は、ギブスカッターを用いてパテをカットしてピンを抜去します。

ラテちゃんには全身麻酔で寝て頂き、パテにカットを入れます。

今回は、パテを切るため変速ディスク・グラインダーを使用しました。

高速で回転していますので取り扱いに注意しながら、パテをカットします。

グラインダーが創外ピンに干渉したりしたら、骨に亀裂が入ることもあり得ますので、ある意味手術時よりも緊張します。

このような形でパテに切り込みを入れます。

あとはニッパーで創外ピンをカットします。

下写真は創外ピンごとパテを外したところです。

創外ピンを抜去しています。

ピン抜去後のレントゲン写真です。

骨折部の骨癒合は良好です。

再度、患部を消毒した後、スプリントで固定します。

ピン抜去直後は、ピンの穴が4つ開いていますので患部保護のためにスプリント固定は必要です。

この2週間後のラテちゃんです。

皮膚もほぼ綺麗になりました。

スプリントも患部のテーピングによる保護も必要ありません。

その1か月後のラテちゃんです。

患部の被毛もしっかり生えて、患肢もまったく健常時同様に機能出来ています。

ラテちゃんはまだ7か月齢という若さでしたので、骨癒合までの時間は短く済んでいると思われます。

どちらかというとウサギの場合は、高齢になってから骨密度低下に伴って骨折するケースが多いように思います。

そうなると完治までには、最低数か月は必要になります。

犬の骨折も大変ですが、ウサギの骨折はさらに苦労します。

くれぐれも骨折にはご注意ください。

ラテちゃん、飼主様お疲れ様でした!

この記事を書いた人

伊藤 嘉浩

伊藤 嘉浩

“小さくてもひとつのいのち”をスローガンに命あるもの全ての治療に全力を注いでいきたいと考えています。

動物医療は我々、獣医師と飼い主様、動物の3者が協調しあうことでよい治療結果が生み出せると考えます。

治療に先立ち徹底したインフォームド・コンセントを心がけております。