ウサギの脊椎損傷

ウサギの脊椎損傷は、犬猫同様に後躯不全麻痺に始まり、排尿排便障害を呈します。

損傷の程度によっては呼吸不全を起こしたり、疼痛のストレスで突然死に至る場合もあります。

脊椎骨折や脱臼があれば、脊柱の外科的固定が必要となりますが、脊椎骨の脆弱さにより手技的に困難をきわめます。

飼い主様の介護が必要であり、予後不良となることが多いです。

今回ご紹介させて頂きますのは、ネザーランド・ドワーフのロビー君(2か月齢、雄、体重450g)です。

1.5mほどの高さから落下してしまい、後肢が立てないとのことで来院されました。

後肢は痛覚浅部・深部ともになく、前肢で匍匐(ほふく)前進をしてます。

下痢便を不随意に流しており、排尿はしていません。

触診では、後肢の骨折、脱臼はないようですが、脊椎損傷の疑いが強いです。

患部を拡大します。

黄色丸の脊椎骨が若干ずれています。

落下の時の衝撃が脊椎骨に達し、瞬間的な脊椎骨の変位や脊髄神経の過剰な伸展があって、後躯麻痺に至ったと思われます。

後躯麻痺の場合、陰部が排便排尿で汚れますので微温湯で清潔に洗浄する必要があります。

姿勢も褥瘡を防ぐために、低反発の床材マットを敷いたりする必要もあります。

自発的に食餌が取れなければ、強制給餌をします。

飼い主様にこのような介護の負担も生じます。

栄養状態を維持できれば、後躯麻痺でも長期生存は可能です。

ロビー君はまだ2か月齢という若さでの後躯麻痺です。

不慮の事故ということで、飼主様のご心配も察します。

現在は内科的にステロイドの投薬と腸蠕動促進薬を投薬して経過観察です。

ロビー君、立てるように頑張っていきましょう!

スタッフ共々応援していきたいと思います。

この記事を書いた人

伊藤 嘉浩

伊藤 嘉浩

“小さくてもひとつのいのち”をスローガンに命あるもの全ての治療に全力を注いでいきたいと考えています。

動物医療は我々、獣医師と飼い主様、動物の3者が協調しあうことでよい治療結果が生み出せると考えます。

治療に先立ち徹底したインフォームド・コンセントを心がけております。