ウサギの乳腺腫瘍・ハエウジ症

ウサギの乳腺疾患は子宮疾患と比較して、決して多いとはいえませんが乳腺にできる腫瘍は乳腺癌である確率が高く、また転移も早く摘出後の再発も多いとされる、やっかいな疾患です。

ウサギも犬猫同様、若いうちに避妊手術を受けた個体は乳腺腫瘍の発症率は極めて低いとされています。
国内で有名なウサギの専門病院の院長いわく、3歳未満で避妊手術をうけれた個体で乳腺腫瘍になったウサギはないそうです。

ウサギの乳腺腫瘍は良性・悪性に限らず、疼痛を伴うことは少なく、むしろ患部が自壊して気にして舐めることで細菌感染を併発し悪化していきます。

下の写真は乳腺腫瘍になった4歳のウサギです。加えてハエウジ症(後で説明します。)にもなっています。

左側胸部乳腺・腹部乳腺・鼠径部乳腺に乳腺腫瘍ができています。
特に腹部乳腺腫瘍は自壊して皮膚が裂けた状態になっています(下写真参照)。
この場合は患部に熱感を伴っており著しい浮腫も出ています。
肺に腫瘍が転移している可能性もあります(まだ未確認)。
外科的に乳腺腫瘍および子宮卵巣を摘出するのがベストですが、全身状態が衰弱している個体ではリスクが高くケースバイケースです。

次にハエウジ症ですが、ウサギは基本的に自身の外陰部は舐めていつもきれいにしますが、諸般の事情で舐められない環境に置かれますと、肛門から外陰部にかけて糞便尿で汚染されます。
ハエが汚染された箇所に卵を産みつけウジが湧くと患部をかじり、場合によっては筋肉層にまで進出します。
ハエウジ症になりますと予後不良の傾向が強いと思います。
一匹ずつウジをつまみだし、患部を洗浄・治療します。
下写真はハエウジ症の患部です。
あまり気色のいいものではないと思いますが、ハエウジ症になるとどんなに悲惨かご理解いただく意味を込めて載せます。
悪しからず。

次に胸部乳腺腫の外科手術例を載せます。
このウサギも4歳です。
未避妊ウサギです。
ウサギは基本的に抱かれるのを嫌いますので、乳腺腫瘍を見逃すことが多いです。
できれば、日常的に触ってしこりがないか確認すると良いでしょう。

この記事を書いた人

伊藤 嘉浩

伊藤 嘉浩

“小さくてもひとつのいのち”をスローガンに命あるもの全ての治療に全力を注いでいきたいと考えています。

動物医療は我々、獣医師と飼い主様、動物の3者が協調しあうことでよい治療結果が生み出せると考えます。

治療に先立ち徹底したインフォームド・コンセントを心がけております。