ウサギの代謝性骨疾患(食餌にはくれぐれもご注意を!)

食餌から摂取する栄養分で体は作られています。

バランスの崩れた食餌をペットに与えることは、結果として大切なペットを病気にしてしまう事です。

以前から、食餌に含まれるカルシウムが欠乏することで起こる代謝性骨疾患についてはコメントしてきました。

この代謝性骨疾患は、犬猫では比較的少ない疾患だと思います。

それは、ドッグフードやキャットフードが完全食でそれだけ食べていれば、栄養学的に問題ないからです。

その一方で、いかにエキゾチックアニマルでは多いことか!

当院HPのサイト内検索で代謝性骨疾患を入力してみて下さい。

結局、エキゾチックアニマルには完全食なるフードが存在しないため、何種類かの食材を組み合わせる必要があり、飼主様がそれを十分認知していないがために、栄養不良による疾患が引き起こされます。

さて今回、ご紹介しますのはこの代謝性骨疾患が原因で骨折に至ったウサギの話です。

ライオンラビットのミミちゃん(8歳、雌)は前肢に力が入らないとのことで来院されました。

レントゲン撮影を実施しました。

下写真の黄色丸の箇所をご覧ください。

両側上腕骨の中央部が斜骨折しています。

ミミちゃんは特に高い場所から飛び降りたりしていないとのことです。

レントゲン写真から骨密度が非常に低く、骨の向こう側が透けて見えるような感じです。

年齢から考慮して、代謝性骨疾患の可能性が高いと考えられました。

過去の経験から、このような骨密度の低い骨を骨髄ピンや創外固定を実施しても骨癒合を期待することは厳しいと判断しました。

ひとまず、ギブスで外固定して栄養状態を改善させてから、次の手を考えることとしました。

ガス麻酔を行う中でレナサームという熱可塑性キャスト剤でギブスを作ります。

前肢が不自由になりますが、飼主様にも頑張って頂いて介護の必要性をお伝えしました。

問題はミミちゃんが退院された8日後です。

今度は後肢が折れてしまったとのこと。

下がそのレントゲン像です。

特に右の脛骨遠位端が斜骨折で骨折端が皮膚を突き破り、解放骨折の状態です(下写真黄色丸)。

解放骨折をしてから患部は糞便などで汚染されています。

むしろこの個所については、残念ながら感染症を考えて断脚することを提案させて頂きました。

飼い主様によっては、このような場合は安楽死を希望される方もみえます。

ミミちゃんの飼主様は、このような状態でも是非、頑張って乗り越えてほしいという意見でした。

断脚手術をすることとなりました。

出血が予想される血管を縫合糸で結紮していきます。

非常に痛々しくみえるミミちゃんですが、術後の経過は良好です。

流動食を口へと注射器を用いて飲ませます。

大変、気に入ってるようで流動食をたくさん飲んでくれます。

今回の代謝性骨疾患になった理由は、まだ小さい頃からミミちゃんは食餌の好き嫌いが激しかったそうです。

チモシーやペレットは拒否し、えん麦(エンバク)から成る嗜好品(おやつ)は喜んで食べるので、食べてくれるのならと飼主様もえん麦をずっと給餌していたそうです。

この点が代謝性骨疾患を引き起こした原因のようです。

ミミちゃんは無事退院されたのち、流動食を給餌する時に誤嚥され、それがもとで呼吸不全に陥り、逝去されました。

非常に残念な結果でしたが、小さい頃からの食生活が大人になった体を作っていることを忘れないでください。

生命を維持するために必要な栄養は必ず与える努力を忘れないでください。

取り敢えず、食べるからといって嗜好品に走ると栄養不良性疾患に至ります。

この記事を書いた人

伊藤 嘉浩

伊藤 嘉浩

“小さくてもひとつのいのち”をスローガンに命あるもの全ての治療に全力を注いでいきたいと考えています。

動物医療は我々、獣医師と飼い主様、動物の3者が協調しあうことでよい治療結果が生み出せると考えます。

治療に先立ち徹底したインフォームド・コンセントを心がけております。