ウサギの肘頭骨折

ウサギは骨が脆く、その一方で筋力が強い。

非常に憶病な性格のため、ちょっとした物音にも驚いて暴れることがあります。

その結果、思いもよらない骨折に遭遇することがあります。

今回ご紹介するのは、ホーランドロップのラッフル君です。

激しいジャンプをした後、左前肢がぶらぶらしていることに飼主様が気づかれ、来院となりました。

レントゲン撮影をしました。

黄色丸で示した肘頭の部分が骨折しています。

この肘頭の骨折は上腕三頭筋の強力な牽引力で骨片が離断するため、犬ではテンションバンドワイヤーを使用して内固定を実施することが多いです。

しかしながら、ウサギとなると骨密度の薄さからワイヤーで固定しても結局、肘頭部に亀裂が生じて、失敗に終わる経験が過去にあります。

確実な肘の曲げ伸ばしが復元されるかは難しい所ですが、ギブスによる外固定で時間をかけ治療をしていく方針を決めました。

全身麻酔をかけ、レナサームという熱湯で変形・加工できる熱可塑性キャスト剤を使用します。

骨折している肘頭部を囲い込むようにしてレナサームを何枚も組み合わせて患部に巻き付けます。

巻きつけて5分もするとレナサームは硬化し始めます。

確実に硬化したのを確認して、外固定を終了します。

麻酔から覚醒して、ラッフル君は処置前には拳上していた前肢をある程度、着くことが出来るようになりました。

ギプス固定は固めた後に微調整が必要となります。

血行を阻害していないか、関節部に圧迫を加えていないか等など、翌日チェックします。

ラッフル君は1か月以上この厄介なギプスを前肢に巻いて暮らすこととなります。

早く、骨折部に仮骨が形成され、肘の動きが円滑にできるのを期待します。

この記事を書いた人

伊藤 嘉浩

伊藤 嘉浩

“小さくてもひとつのいのち”をスローガンに命あるもの全ての治療に全力を注いでいきたいと考えています。

動物医療は我々、獣医師と飼い主様、動物の3者が協調しあうことでよい治療結果が生み出せると考えます。

治療に先立ち徹底したインフォームド・コンセントを心がけております。