グリーンイグアナの口のしこり

グリーンイグアナは口腔内の問題が多いことが知られています。その病態は口内炎から腫瘍まで様々とされています。
本症例紹介では、グリーンイグアナにおける口腔内腫瘍の症例を紹介し、詳しく説明します。

症例概要

患者情報
  • 種別: グリーンイグアナ
  • 性別: 雄
  • 年齢: 2歳
  • フード: 小松菜メイン、イグアナフード少々
背景

今回の症例は二ヶ月前から口腔内にあったしこりがだんだんと大きくなってきたことを主訴に来院したグリーンイグアナ。
口から出血を伴っている日もあるという。
本人の食欲や元気はあるものの、このような大きなしこりを放っておくわけにはいきません。
全身麻酔下でのCT撮影およびしこりの摘出手術を実施することとなりました。

口腔内のしこり
麻酔

 手術をするにあたって、鎮静と痛みの管理を目的に複数種類の麻酔を注射しました。
 その後気管チューブにて気管挿管を行い、吸入麻酔で麻酔を維持しました。

CT撮影

 麻酔が安定したところでCT撮影を行いました。

CT画像所見上は全身への転移を疑う所見や骨融解を示す所見はありません。
手術手順
  • 腫瘍の評価: 左下顎中央部に2.5cm径の腫瘤が形成されていました。
             腫瘤は不整で、表層は黄白色の石灰化が進み、脆弱で容易に引き千切れる状態でした。
             表層は石灰化した黄白色の壊死様組織で覆われ、内部は脆弱な肉様組織が見られました。
  • 歯肉の評価: 左下顎の歯肉全体が発赤・腫脹しており、口腔粘膜および歯肉の炎症が口角部に至るまで広がっていました。
  • 腫瘍の切除: 腫瘍を基部から剥離し、腫瘍が付着している歯肉も含めて切除しました。
             骨が露出するまで歯肉を切除し、レーザーを用いて止血を行いました。
しこり切除後の口腔内です。しこりは完全に除去され、組織的に清浄化されました。
結論

 取り除いたしこりについては病理検査を実施し、その結果、慢性的な歯肉炎に起因する肉芽であることが明らかとなりました。
 これに基づき、歯肉炎の治療を継続するために抗生剤の投与を行う方針としました。

治療経過

 治療開始から2週間後の経過観察では、腫瘍のサイズは縮小し、口腔内の炎症も軽減されました。
 引き続き、抗生剤の投与を継続し、慢性的な炎症の再発を防ぐための対策を講じています。

まとめ

 今回の症例において確認されたしこりは、歯肉炎に伴う肉芽の形成によるものでしたが、グリーンイグアナの口腔内におけるしこりには、
 他の病態が隠れている可能性も考えられるため、慎重な観察と診断が必要です。

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千葉どうぶつ総合病院

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