ウサギの精巣腫瘍

ウサギの精巣腫瘍は比較的高齢 (5歳以降) に発症するようです。
片側もしくは両側の精巣が腫れて気づいて来院されるケースが多いです。
日を追うごとに精巣が大きくなり、後ろ足で精巣を踏みつけたり、排便が上手に出来なくてお尻周りが汚れて悩まれている飼い主様が多いのも特徴です。
摘出した精巣を病理検査に出す機会は飼い主様の意向に合わせていますので、犬に比べて比較的少ないです。

今回はそんなウサギの精巣腫瘍2例をご紹介します。
左側精巣が腫大し、生活の質 (Quality of life) が落ちてきたため手術を希望されました。
摘出した精巣はライディッヒ間質細胞腫でした。
犬では潜在精巣との関連が強いとされていますが、良性の腫瘍です。

次のウサギは両側の精巣腫瘍です。
先のウサギ同様、お尻周りの汚れが目立ちます。
腫瘍の病理検査はセミノーマで転移 (リンパ節・肺・腹腔臓器) は犬では5%以下とされていますが、ウサギでは不明です。
今回の2例ともに術後の経過は良好です。

上記のような精巣腫瘍もありますが、外見からみて精巣腫瘍と見間違えるものに精巣炎・精巣上体炎が挙げられます。
これらはPasteurella mulutocida 等の細菌が原因で起こる感染症です。
精巣や精巣上体が腫脹して陰のうが大きくなります。
この場合は、抗生剤の投薬で鎮静しますが、重症例では去勢手術を実施します。

この記事を書いた人

伊藤 嘉浩

伊藤 嘉浩

“小さくてもひとつのいのち”をスローガンに命あるもの全ての治療に全力を注いでいきたいと考えています。

動物医療は我々、獣医師と飼い主様、動物の3者が協調しあうことでよい治療結果が生み出せると考えます。

治療に先立ち徹底したインフォームド・コンセントを心がけております。