可愛い相棒にしてあげて!
リスザルとはリスザル属に属するサルの総称で、コモンリスザル、ボリビアリスザル、セアカリスザルなどが知られています。大きさがリスのように小さく、体の色も似ているために、リスザルと呼ばれています。しかし、ペットとして広く知られているのは主にコモンリスザルで、通称はリスザルと呼ばれています (本章ではコモンリスザルをリスザルと略します)。
リスザルは人医における様々な研究に使われている実験動物として活躍しています。げっ歯類やウサギなどの実験動物種よりも系統発生的に人と密接に関連しているため、潜在的に重要な実験動物として認識されています。なお、リスザルは世界で初めて宇宙旅行をしたサルです。1958年にGordoと名付けられたリスザルが、アメリカからロケットに載せられて打ち上げられました。最も飼いやすいサルと言われていますが、それはサルの中での話で、ペットとしてはかなり飼育が難しいです。
分類・生態
分類
霊長目 (真猿類) オマキザル科リスザル属コモンリスザル
学名 | Saimiri sciurea |
英名 | Common squirrel monkey |
リスザルは以下の表のように5種類がおり、亜種分類もされています。これらの種類は分類学的にコモンリズザルグループとボリビアリスザルグループに分けられています。この2つのグループは、目の上の白色の毛色の縁で鑑別できます。コモンリズザルグループは尖ったアーチとして形作られ、ボリビアリスザルグループでは丸みを帯びたアーチになっています 〔Rowe, 1996〕。
グループ | 種類 | 亜種 |
コモンリスザルグループ | セアカリスザル Central American squirrel monkey (Saimiri oerstedii) | Black-crowned Central American squirrel monkey (Saimiri oerstedii oerstedii) |
Grey-crowned Central American squirrel monkey (Saimiri oerstedii citrinellus) | ||
コモンリスザル Common squirrel monkey (Saimiri sciureus) | (Saimiri sciureus sciureus) | |
(Saimiri sciureus albigena) | ||
Humboldt’s squirrel monkey (Saimiri sciureus cassiquiarensis) | ||
Ecuadorian squirrel monkey (Saimiri sciureus macrodon) | ||
キンゴシリスザル Bare-eared squirrel monkey (Saimiri ustus) | ||
ボリビアリスザルグループ | ボリビアリスザル Black-capped squirrel monkey (Saimiri boliviensis) | Bolivian squirrel monkey (Saimiri boliviensis boliviensis) |
Peruvian squirrel monkey (Saimiri boliviensis peruviensis) | ||
クロアタマリスザル Black squirrel monkey (Saimiri vanzolinii) |
分布
アマゾン河流域からベネズエラ、コロンビアにかけての広大な地域で、新世界ザルの中で最大の分布域を持っています。
身体
頭胴長 | オス: 31.8 (27.5-37.0) cm メス: 31.2 (27.5-37.0) cm |
尾長 | オス: 40.9 (36.0-45.2) cm メス: 40.5 (38.0-45.0) cm |
体重 | オス: 554-1150 g メス: 651-1250 g |
毛色: 毛は黄色や黒色の混じった緑色で、胸腹部の被毛は白色です。口の周りは黒色で、尾の遠位の1/3も黒色です。
生態
環境
熱帯雨林や川辺林 (マングローブの生える湿地帯や川沿いの森林)、人間の居住地のすぐ近くの森林、海面から2,000メートルまでの標高高い森林など幅広いです。これは霊長類の中で順応性が高いことを示しています。
行動
- 数十~数百頭におよぶ群れで生活をし、社会性があり高い知能を持っています 〔Mitchell, 1994〕。
- 昼行性のサルで、朝夕の涼しい時間帯には特に活発に動きまわりますが、夜は木の上で休んでいます。
- 群れは広い行動範囲をもち、その中を移動しながら餌を探して行動しています。群れ同士は互いを避ける傾向にあって、群れ同士の縄張り争いは起こりません。
- 声は小鳥のような高音で「キーキー」と鳴きます。
食性 | 雑食性で、主な餌は昆虫 (蝶や蛾など)、軟体動物(カエルやカタツムリ)、木の実、植物の芽や葉、果実などを食べています。 |
寿命 | 約21年 〔Rowe, 1996〕 |
習性
コミカル
性格は温和で、大人しく人懐っこいです。好奇心旺盛で、コミカルな動きで飼い主を楽しませてくれます。
ギャーギャー
急に大きな物音を立てたり、荒々しい振る舞いをすると、「ギャーギャー」と声をあげながら驚いて、半狂乱になることがあります。
さみしがり
群れで生活しているので、寂しがり屋の面もあります。
特徴
華奢
体は細長く華奢で、手足と尾が長いです。
大きな頭
体に比べて頭は大きく、後頭部が後方へ膨らんでいます。
並んだ目
目は平たい顔に前方に向いて並んでいます。完全な両眼視 (立体視) が可能で、正確な距離を判断することができます。
表情
真猿類の特徴の1つは豊かな表情をもつことで、行動や鳴き声とともに人が理解できるような喜怒哀楽を示します。顔の筋肉には口輪筋を中心とした細かな筋肉が備わっており、表情により瞬時にコミュニケーションがとれることは、集団生活をするうえでの意思表示となっています。
長い尾
長い尾は背中や首にまわして、体に巻きつけていることが多いです。尾は木や枝に巻きつける能力も備え、移動する上でのバランスをとるのに役立っています。
指
指の数は四肢全てに5本で、爪は人に似た平爪をしています。第1指が他の四指と離れて内側を向きいて対向指を呈し、このために器用に細かい物をつかむことができます。
指の掌紋が発達し、物をつかんでもすべらないようなつくりになっています。
歯
歯の数は36本あります 〔Johnson-Delaney, 2004〕。
乳首
乳頭は1対 (2個) あります 〔Ialeggio, 1989〕。
雌雄鑑別
雌雄鑑別は成熟していないと難しく、オスは生殖孔からペニスが出ていることが多く、その下に精巣が収納されている陰嚢が見られます。
メスの陰核は著しく発達しており、オスのペニスと似ているため間違えやすいです。
オスのリスザルは、季節的なファッティング (Fatting) と呼ばれる体の変化が起こります。繁殖期が近づくと、オスは体重が20〜30%増加し、肩と胴体上部が脂肪沈着により著しく大きくなることがあります。すべてのオスがこの変化を示すわけではなく、繁殖期の後半に徐々に体重が減ります〔Dumond, 1968; Dumond, et al., 1967〕。
繁殖
野生のリスザルの繁殖期は夏で、南半球である現地で乾季を迎える8~10月に発情して交配をし 〔Boinski, 1987a〕、出産は餌が豊富な雨季である2~4月に行われます 〔Boinski, 1987b〕。 性周期は約18日で 〔Rowe, 1996〕、妊娠期間は145 〔Boinski, 1987b〕~170日 〔Rowe, 1996〕 です。メスは年に1回の出産で、基本的に1頭 (稀に双子) を産みます 〔Rowe, 1996〕。育子全般はメスは行います。 この産まれたばかりの赤ん坊でも、生後間もなく母親の背中に乗るようになり、母親は赤ん坊をおんぶしたまま木々の間を移動する姿が観察されます。約1年で子は親離れして独立し、 性成熟はオスは3~5年、メスは2~4年を要します 〔Boinski, 1987a〕。
表:繁殖知識
性成熟 | オス: 3.5歳齢 〔Rowe, 1996〕; 5歳 〔Williams, et al., 2010〕 メス: 2.4歳齢 〔Rowe, 1996〕; 2.5-3歳 〔Williams, et al., 2010〕 |
繁殖形式 | 季節繁殖 発情期: 8-10月の乾季 〔Boinski, 1987a〕 出産: 2-4月の雨季 〔Boinski, 1987b〕 性周期: 約18日 (飼育下8-10日) 〔Rowe, 1996〕; 8-12歳 〔Williams, et al., 2010〕 |
妊娠期間 | 145 〔Boinski, 1987b〕-170日 〔Rowe, 1996〕 |
産子数 | 1頭 〔Rowe, 1996〕 |
離乳 | 4-6ヵ月齢 |
これがポイント!
- リスザルは宇宙飛行をしたサル
- 真猿類の広猿亜目 (新世界サル)
- 南米に分布し、樹上で群れで暮らす
- 昼行性
- 雑食性で昆虫や軟体動物、木の実、植物や果実などを食べる
- 人懐っこくて寂しがり屋
- 甲高い声で鳴く
- 表情が豊か
- オスとメスの陰部が似ている
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参考文献
- Boinski S. Mating patterns in squirrel monkeys (Saimiri oerstedi): implications for seasonal sexual dimorphism. Behav Ecol Sociobiol. 1987a; 21 (1): 13-21.
- Boinski S. Birth synchrony in squirrel monkeys (Saimiri oerstedi): a strategy to reduce neonatal predation. Behav Ecol Sociobiol. 1987b; 21 (6): 393-400.
- Dumond FV. The squirrel monkey in a seminatural environment. In Rosenblum LA & Cooper RW. eds. The Squirrel Monkey. Academic Press. New York. 1968: 88-145.
- DuMond FV & Hutchinson TC. Squirrel monkey reproduction: the “fatted” male phenomenon and seasonal spermatogenesis. Science. 1967; 158 (3804): 1067-1070.
- Holmes DD. Clinical Laboratory Animal Medicine: An Introduction. Iowa State University Press. Iowa. 1984.
- Ialeggio DM. Practical medicine of primate pets. Compend Contin Educ Pract Vet. 1989; 11 (10): 1252-1259.
- Johnson-Delaney CA. Primates. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 1994; 24 (1): 121-156
- Johnson DK, Russell RJ, & Stunkard JA. A Guide to Diagnosis Treatment and Husbandry of Nonhuman Primates. Veterinary Medicine Publishing. Kansus. 1981.
- Williams LE, Brady AG, Abee CR. Squirrel Monkeys. In Hubrecht R & Kirkwood J. eds. The UFAW Handbook on the Care and Management of Laboratory Animals 8th ed. Blackwell. Ames. 2010: 564-578.
- Mitchell CL. Migration alliances and coalitions among adult male South American squirrel monkeys (Saimiri Sciureus). Behaviour. 1994; 130 (3-4): 169-190.
- National Research Council (US) Committee on Well-Being of Nonhuman Primates. New world monkeys: cebids. In National Research Council (US) Committee on Well-Being of Nonhuman Primates. The Psychological Well-Being of Nonhuman Primates. National Academies Press. Washington D.C. 1998: 80-89.
- Rowe N. The Pictorial Guide to the Living Primates 1st ed. Pogonias Press. New York. 1996.