何が主食?
セキセイインコ、オカメインコ、コザクラ インコ、ボタンインコ、カナリアは種子を主食とする穀食 性、ブンチョウとジュウシマツは種子が主食で、時に昆虫などを食べる雑食性です。
種子 (シード) を主食とする方法と完全栄養食であるペレットを与える方法があります。鳥の種類、季節的要因、繁殖期、換羽期、成長段階などによって、種子の種類や比率が異なり、ペレットの種類を変えることが必要になります。鳥の栄養素の推奨値についての報告は以下のような報告があります〔農業・食品産業技術総合研究機構 編, 2009〕。
種類 | 粗タンパク | 粗脂肪 | エネルギー |
オウム目 (インコ・オウム) | 12% | 4% | 320 kcal/餌100 g |
スズメ目 (ブンチョウ・ジュウシマツ) | 12% | 4% | 350 kcal/餌100 g |
ヒナや幼若鳥、換羽期などでは、粗タンパクは約20%が必要とされています 〔Roudybush et al. 1986〕。タンパク質は成長に不可欠な栄養素で、必須アミノ酸のバランスも優れています。成期のヒナや幼若鳥では、成鳥や老鳥と比較して 高タンパク質の餌が必要で、繁殖期や換羽期の成鳥もタンパク質を多く必要とします。脂肪はエネルギー源となり、嗜好性も高いのですが、過剰に摂ると肥満や脂肪肝などの問題を起こします。肥満になると重たくなって飛ばなくなったり、羽が抜けたりもします。
鳥にどれだけの餌を与えるか?鳥の栄養状態と体重を測定して加減をします。
シード
フィンチ用として一般的に販売されている種子の餌は、色々な種子が配合された混合餌 (ミックスシード) です。その種子の配合は、鳥の種類、季節的要因、繁殖期、換羽期、成長段階などによって内容が異なります。
シードは炭水化物が多い種子と脂肪が多い種子の2種類があります。これらの種子は個別でも購入できますが、ミックスシードとして混ざった状態で売られていますので、味のバリエーションもあり、鳥は喜んで食べてくれます。ミックスシードを主食にした場合は、全ての種子をまんべんなく食べることが理想です。2~3日くらいの餌を浅い餌容器に入れて、80%くらいを食べてから追加の餌を足すようにして下さい。
炭水化物が多い種子
炭水化物が多い種子は、アワ、ヒエ、キビ、カナリーシードなどの穀類の種子で、ミックスシードの大半の配合を占めています。炭水化物(澱粉)が80~90%を占めるので〔須藤 1981〕、嗜好性は良いのですが、栄養のバランスが悪く、粗タンパクは約 10%、粗脂肪は2~5%で、鳥にとってはタンパクが低いです。
炭水化物が多いと食べすぎてカロリー過剰になり、肥満の原因になります。理由は不明ですが、特にジュウシマツはカナリアシードは好んで過食する傾向にあります。種子はビタミンやミネラルも少ないので、脚弱やくる病などの栄養性の病気の原因になります。
脂肪が多い種子
ナタネ、エゴマ、麻の実、ヒマワリなどは脂肪が多い種子で、通常のミックスシードでも少量配合されています。脂肪が多いと、さらに嗜好性が良くなり、好んで食べてくれます。粗タンパクは20~30%で 〔須藤, 1981〕、 必須アミノ酸もバランスよく含まれ、成長期のヒナや幼若鳥、繁殖期や換羽期には優れた餌なので、配合する量を増やします。
脂肪が多いのが欠点で、過食すると肥満ならびに脂肪腫や脂肪肝になります。
鳥の基礎代謝率は哺乳類よりも高く、小型の鳥ほど高くなります。特にフィンチ (ブンチョウやジュウシマツなど) の基礎代謝率は高く、他の鳥と比較すると50~60%ほど高いです 〔Walsberg, 1983〕。したがって、フィンチ用のミックスシードはナタネやエゴマなどの種子 (黒色に見える種子) が多く配合されており、オウム・インコ用のミックスシードと比べてカロリーが高くなっています。
ミックスシードの欠点と病気
日本での多くのジュウシマツの飼い主は、シードを主食にしているため、結果的に栄養の偏りがある餌なので、野菜やボレー粉、カトルボーンなどの補助飼料を与えたり、サプリメントを餌や水に混ぜて投与することが定番になっています。ミックスシードは、鳥が好きな種子から食べ始め、つぎ足される種子を鳥が待っているという悪循環になります。必然的に栄養の偏りが起こります。
これがポイント!
- 野生のジュウシマツは雑食である
- シードは炭水化物が多い種子と脂肪が多い種子の2種類がある
- 炭水化物が多いシードはタンパク質が少なく、アミノ酸のバランスも悪い
- 脂肪が多いシードは肥満と脂肪肝になるのが怖い
- シードだけを主食にすると、様々な栄養性の病気の原因になる
- シードを主食にする場合は、野菜やボレー粉などの補助飼料を与えたり、サプリメントを餌や水に混ぜて投与する
皮つき?むき餌?
種子は皮つき (殻つき: からつき) と皮なしの剥いたもの (むき餌: むきえ) があります。普段は皮や殻つきを与えて下さい。胚芽の栄養もあり、そして種子をむく行動を促進するなどの効果がります。粟穂 (あわほ) と呼ばれる穂軸についたアワの実などは鳥がついばむ行動を施し、鳥のストレス対策にもなります。
むき餌は食べやいのが特徴で、胃腸の弱い鳥や老鳥に向いています。しかし、夏の湿気で腐敗しやすいのが欠点です。
野生でもシード食べてるのに何故悪いの?
野生で食べているのは新芽や発芽前の種子で、芽を出して花を咲かせたり実をつけるために栄養があり、バランスもとれた状態のものです。しかし、餌の種子は花や実をつけた後のもので、栄養が全く異なります。野生下では種子以外にも、様々な食物を摂取し、上手くバランスをとっています。
シードの与える量
まずは餌容器にミックスシードを入れて1日で食べる量を測り、鳥の体重も同時に測定して下さい。標準体重範囲であれば今の食べている量で問題ありません。他に野菜やボレー粉、カトルボーンなども食べていますが、カロリーの大半はシードになります。
鳥の栄養状態は標準体重と筋肉の付き方で判断します (キールスコア)。体重が重たくても筋肉質である鳥もいます。肥満と判断した場合は、シードの量を減らす必要があります。反対に痩せている場合はシードの量を増やしたり、脂肪の多いシードを多く与えてください。それでも体重が増えない場合は病気の可能性がありますので、動物病院で診察を受けて下さい。
これがポイント!
- 基本は皮や殻がついているシードを与え、消化の悪い鳥には皮や殻なしにする
- シードを与える量と鳥の体重を測って、餌の量を調整する
- 栄養状態はキールスコアで判断し、体重測定とともにシードの給餌量を加減する
野菜
ビタミン・ミネラルが豊富でバランスがとれたコマツナ、チンゲンサイ、ニンジン、ダイコンの葉などの緑黄色野菜を菜挿しに入れて与えてください。茹でたカボチャやニンジンなども甘味があるので好んで食べてくれます。レタスやハクサイなどの淡色野菜は相対的にビタミン・ミネラルの含有は低いですが、水分の補給になります。
ホウレンソウに含まれるシュウ酸はカルシウムと結合し、カルシウムの吸収を阻止することから避けたほうがよいです。アブラナ科のキャベツなどの野菜は甲状腺腫 (甲状腺機能低下症) の原因となるゴイドロゲンという物質が含まれているため、あまり多くは与えないで下さい。
ジュウシマツに果物などの甘味が強いものを大量に食べると、消化管が果糖 (果物の糖分) に対応できないため、腸内細菌が崩れて軟便になったり、肥満や糖尿病の原因にもなりますので、可能な限り控えましょう。
カルシウム
カルシウムは鳥の餌の中で最も重要なミネラルであり、骨形成だけでなく卵殻の生成にもカルシウムを必要とします。鳥の食餌の理想的なカルシウム含有は1% 〔Scott, 1996〕、他の報告においても、オウム目は0.3%、スズメ目は0.5%といわれています 〔農業・食品産業技術合研究機構 編, 2007〕。成長期の雛や産卵期の雌ではカルシウムが豊富な餌を与える必要があり、鳥の生涯において必要とするカルシウムは変化し、特に産卵中は最大20倍に増加します 〔Klasing, 1998〕。適切なカルシウムとリンの比率は1.5:1〜2:1になります。しかしながら、種子類の多くはカルシウムが少なく、リンの比率が逆転しているため、鉱物飼料やカルシウムのサプリメントを与えることが常法となっています。鉱物飼料として、ボレー粉 (牡蠣粉) が使われています。ボレー粉はカルシウムの補給以外にも、グリットとして筋胃内で食べた餌を細かくすり潰す働きをします。そして、鳥はカルシウムを多く含む餌を非常に好むことが示されていますが 〔Reynolds, et al., 2010〕、カルシウムの味覚の嗜好性はあるものの、詳細は分かっていません。なお、グリットが多すぎてグリットインパクションになることがあります。サプリメントとしてカルシウム剤を餌や水に添加する方法もああります。
ボレー粉
ボレー粉はカルシウムの補給以外にも、グリットと呼ばれる胃の中の砂粒になり、餌を細かくすり潰す働きをします。ボレー粉は色がついているものもありますが、その色素には信頼性がないので、無色のものを使って下さい。
甲状腺腫 (甲状腺機能低下症) の疑いの時にはカトルボーンよりもヨウ素が多く入っているボレー粉を食べさせて下さい。
お薦めボレー粉はコレ!
塩土
塩土は赤土に砂、ボレー粉や塩分を若干加えて乾燥させたもので、ミネラルの補給として与えます。オウム・インコでは嘴の伸びすぎの予防にも役立ち、ジュウシマツに与える場合は砕く必要があります。ただし、塩土は塩分が多いため多飲多尿になる傾向があり、積極的にはお勧めしません。
これがポイント!
- 緑黄野菜を中心に与える
- ボレー粉は白い自然色のものを与える
- 塩土はしょっぱ過ぎる
サプリメント
ミックスシードをバランスよく食べなかったり、ボレー粉やカトルボーンも十分に食べてくれない時は、種子や飲水にビタミン・ミネラルの粉や液体を添加します。総合ビタミン・ミネラル剤が主体ですが、脚弱にはビタミンBが強化された商品、換羽期にはアミノ酸が強化された商品、甲状腺腫 (甲状腺機能低下症) にはヨウ素が強化された商品を与えて下さい。色々なサプリメントが販売されています。サプリメントの味により、嗜好性が変わるので、餌をあまり食べなくなったり、水を飲まなくなることもあります。様子をみながら与えましょう。
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これがポイント!
- サプリメントは目的を考えて選ぶ
- 内容はビタミン・ミネラル?カルシウム?
- 乳酸菌などの薬効を期待するもの?
- 最終的には鳥がまずいと思ったら口にしない
ペレット
ペレットとは人工飼料のことで、必要な栄養素を粒状に固めたものです。ペレットだけで必要な栄養が補えるように作られているので、補助飼料やサプリメントを与えると過剰摂取になりやすいので注意して下さい。
良い点は?
ペレットはシード (種子) では不足しがちな栄養素も補うことができ、栄養のバランスがとれています。シードよりも消化が良く、栄養が十分にとれているので、野菜や補助飼料などの副食は食事メニューのバリエーションをつけるために少し加える程度でよいとされ、全体の10%位を目安にして下さい。ペレットには、着色料や糖類が添加されていないものが理想で、もし着色料が使われているならば天然由来のものを使用しているものを選びましょう。
ペレットの大きさや形状が異なる商品が沢山ありますので、ジュウシマツは小粒のフィンチ用ペレットが適しています。また、幼若鳥用、繁殖期や換羽期用のペレットもあります
悪い点は?
ペレットは色や形が単調なものが多く、あまり美味しくないのか、なかなか食べてくれないのが欠点です。着色料や果物などの甘い成分が添加されていない商品が理想ですが、さらに嗜好性が落ちるので食べてくれなくなります。着色されたペレットを食べている鳥では、糞に色が付くので、病気の早期発見が遅れる可能性があります。果物の成分が添加されたペレットは嗜好性が高くなりますが、着色もされ、匂いもつきますが、肥満や糖尿病の原因になります。ペレットはシードよりも日持ちがしないので、保管に関しても、しっかりと対応するべきです。
シードからペレットへの切り替え
シードを主食としてきた鳥はペレットに切り替えてもなかなか食べてくれないことが多いです。種子を主食とする鳥では、ヒナや幼若鳥の時からペレットを給餌しないと、切り替えは難しいと思って下さい。ペレットは種子よりもおいしくないので、成鳥でいきなり切り替えてもなかなか食べてくれません。急にではなく、少しずつならしていく覚悟でいて下さい。
これがポイント!
- 可能であれば栄養のバランスのとれたペレットに切り替えるべき
- ペレットはシードよりもおいしくないので食べてくれない
- ペレットへの切り替えは時間をかけてゆっくりと行う
水
毎日新鮮な水を与えて下さい。水入れの中の水は、ホコリや餌の殻、排泄物、羽などが入り、すぐに汚れてしまいます。また、ジュウシマツが水入れに入って水浴びをすることもあります。最低でも1日1回は水の交換をしましょう。
フォージング
フォージング (Foraging) とは採餌行動のことで、野鳥では1日のうち多くの時間をこのフォージングに費やしており、餌を探し出し、ついばんだりして食べます。飼育されている鳥でもフォージングしなくても餌がもらえるため、刺激が不足してストレスになります。そこで飼育している鳥にも頭を使って餌を探して食べてもらおうというのがフォージングをするという考えになっています。
これがポイント!
- ジュウシマツは水入れで水浴びをしてしまう
- 綺麗な水を毎日交換はしておくべき
- フォージングをする
ジュウシマツのことをもっと知りたい方はこの本を読んで!
生態から特徴、飼育のことが網羅されています!
参考文献
- 農業・食品産業技術合研究機構 編. 日本標準飼料成分表. 2009.
- Scott PW. Nutrition. In Manual of psittacine birds. Beynon PH, Forbes NA, & Lawton MP. eds. British Small Animal Veterinary Association. England. 1996.
- Klasing KC. Nutrition and Metabolism of Vitamins. In Comparative Avian Nutrition. University Press, Cambridge. UK. 1998: 277–232.
- Reynolds SJ, & Perrins CM. Dietary Calcium Availability and Reproduction in Birds. Current Ornithology Volume 17. 2010: 31-74.